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22 ゴブリン狩り1

 翌日はいつも通り朝早く出発してラウラの森の奥にある湖方面に向かって歩いている。しかしながら、その後ろからは数組の冒険者パーティが相変わらずついて来ている。


「はあー」


 ルイーズの深いため息が嘆かわしさを語っている。


「このままだと、昨日と同じ感じになっちゃうね」


「冒険者ギルドにそこまで期待はしてなかったけど、これじゃあしばらくはお手上げね」


「じゃあ」


「ゴブリン狩りに切り替えましょう」


 陣地を確保して狩りをするジャイアントトード狩りは見張られやすい。


 しかしながら、ゴブリンを狩る場合は歩き回ることになるし撒きやすくなる。


 ということで、作戦開始だ。


 ルイーズと僕でジャイアントトードを誘導すると見せかけてそのまま湖付近に待機する。


「じゃあ、そろそろ荷車はインベントリに入れちゃうよ」


 ルイーズは周りを見渡し、気配を確認すると頷いて大丈夫だと言ってくれる。


「うん、オッケーだよ」


 僕たちが追跡しやすい理由の一つがこの荷車だ。森の中に小さな道はあるものの、荷車を引いての移動はどうしても遅くなる。荷物を運べて便利なのだけど、それが弱点にもなってしまっている。


 追ってくる他のパーティは僕たちの移動スピードが遅いから楽についてきてしまうのだ。


 もう少ししたら、木に登ったと見せかけたアルベロが隠れながらこちらにやって来る。


 僕たちがジャイアントトードを誘導すると思って待機しているパーティをここで一気に撒いてしまう作戦なのだ。


「アルベロが来たよ」


「えっ、もう来たの」


 ルイーズが指さした場所は木の上で、太い枝の上に乗っているアルベロが手を振っていた。やはりエルフというのは身軽で動きもすばやい種族なのだろうか。


 ここからは湖から離れるように西に向かっていく。追いかけてきたパーティも荷車の車輪がこの場所で消えているのを見て頭を悩ませるだろう。


「行くよ、ニール」


「うん、頑張ってついて行くね」


 動きがすばやいのはルイーズもだ。森の歩き方に慣れているし、今も僕に合わせてスピードを落としてくれている。


 僕はルイーズの踏んだ場所を追い掛けるようにして歩き方を覚えていく。とはいっても、僕の足音が大きいせいでジャイアントトードが振り向いては追いかけてこようとする。


 ジャイアントトードの足が速かったら毎回戦闘になってしまうところだ。


「もう少しステータスが上がったら大丈夫になるはずだよ」


 息を切らすこともなく、僕の考えを見抜いたかのようなその発言には恐れ入る。僕は喋る余裕すらないので頷くだけで精一杯。


 ステータスは鍛錬すれば上がるのはもちろん、魔物を倒すことでも魔素の吸収でアップすると聞いている。すぐにアップする訳ではないのだろうけど、二人のおかげで討伐の恩恵を受けているのでそこは期待したい。


 とりあえずの目標は今のルイーズと同じDランク。


 受付のカルデローネさんによると、もうそろそろEランクの許可がおりるとのことなので、さらに上のDランクになれるよう、もう少し体も鍛えなきゃと思っている。


 アルベロのランクCはちょっと別格というか、今の僕には目標にするのもおこがましい。今も木から木に飛び移りながら先を行く無駄のない動きにはただただ感心してしまう。


 僕もいつかあんな風になれるのだろうか。


「あっ、ニール、ストップだって」


 戦闘を進むアルベロがハンドサインで指示を送ってくる。おそらくこの先に魔物がいるということだろう。


 右に回り込むようにという指示が出たので、ルイーズから少し離れるようにしてついて行く。僕が一緒に動くと音で見つかってしまうからね。


「いたよ。ゴブリンが三体だね。周りに他の魔物はいなそう」


 草の繁みから覗くようにして見ると、小さくて緑色をした二足歩行の魔物、ゴブリンが休憩をしていた。


 一体は大の字になって寝ていて、残りの二体は地べたに座って休んでいる。


「アルベロが攻撃したら突っ込むよ。ニールは例のやつでぶっ飛ばしちゃって」


「りょ、了解」


 間もなくして、木の上からアルベロが座っているゴブリンの胸を見事に射抜いてみせた。


 そのタイミングに合わせて、ルイーズと僕が突入すると、慌てて起き上がったゴブリン二体はギーギーと騒ぎ立てながらもこちらに向かってくる。


 ゴブリン二体とも手に持っているのはこん棒だ。


 ルイーズは僕よりも早いスピードで駆け抜けていくと、ショートソードで一突きしてあっさりと倒してしまう。


 僕はというと、インベントリから取り出した『ダルトのスクロール』を開いて魔法を撃ち出す。


 聞いていた通り、スクロールから魔力が僕の体に入ってくるのを感じると、狙いを定めて一気に撃ち出す。


「ダルト!」


 魔法は僕の手から撃ち出されると、凍てつく冷気となってゴブリンを襲う。そのまま倒せたらかっこいいのだけど、残念ながら『ダルト』も初級魔法。ゴブリンの動きを軽く止める程度に凍らせるのが限度のようだ。


 しかしながら、その隙があれば討伐はあっさり終わってしまう。


「ありがとう、ニール」


 その言葉とともに、ルイーズが回転しながらショートソードで一閃。ゴブリンの頭はきれいに飛んでいった。


「スクロールの使い方も大丈夫そうね」


「そうだね。魔力イメージも必要ないし、入ってきた魔力をただ撃ち出すだけだから簡単かも」


 初心者の魔法の練習にはうってつけと思われる。それなりに高価なものだからそんな練習方法は確立されていないけどね。


 魔法のスクロールは珍しいものの、この世界でも販売されているそうだ。街で販売されているのは『ハリト』、『ダルト』、それから回復魔法の『ディオス』の三種類だけ。


 魔道具として販売されてはいるものの、スクロール一つあたり銀貨一枚もするらしく、あまり買われていないらしい。魔物の弱点になるクエストを受注した際に補助として買われていく程度とか。


 不人気の影響もあり、買い取り金額となるともっと価値は下がるし、そもそも買い取りをしていない可能性が高いとのこと。


 ということで、スクロールはどんどん使っちゃおうということになったのだ。


 つまり、僕の副収入の夢は脆くも崩れ去ったのだった。

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