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113 マジカルソード

 カプセルを開けると、頭の中に飛び込んできた言葉はマジカルソード。まぎれもない僕専用の武器だ。


 マジカルソード、魔力をこめた分だけ斬れ味が増し、サイズアップも可能。


 後衛としての動きを勉強してきた僕にとっては少し意外な武器だった。


 見た目には少し短めの片手剣といったところ。これなら大盾を持ちながらでも短槍の代わりに扱えそうではある。


「これはマジカルソード。魔力をこめると斬れ味が増し、剣のサイズも大きくできるみたい」


「おめでとー。よかったね、ニール」


「ようやく専用の武器が出たのね」


「うん。ありがとう」


 確かに、ここで僕の武器が出なかったらまた一人仲間はずれになるところだった。


それにしても、今回のガチャはマジカルシリーズだったのだろうか。マジカルメイスにマジカルソード。


 特に僕のアイテムはマジックリングにマジカルソードと魔力に関連するものが多い。これは僕の成長方向がそっち方面になるからだろうか。


 そういえば、魔力D→C、知能Bと僕のステータスの中ではわりかし伸びも高い。とりあえずは、魔力アイテムとインベントリによる立ち回りで後衛としての役割を果たしていこうじゃないか。


「あれっ、マジカルソードに付与するなら何の属性がいいのかな?」


「見た感じだと、そんなに重そうでもないわよね」


「そうだね」


 重い武器なら風属性で軽くする可能性もあったのかな。これから風の谷の集落に向かうだけに風属性付与は頭をよぎる。


「まだ何とも言えにゃいけど、魔力の消費を抑えるような付与がいいと思うにゃ。それはアドリーシャのマジカルメイスも同じにゃ」


「そうだね。どちらもマジカルと冠のつくシリーズだし、魔力の消費を抑えられる付与が望ましいのかな。それで、そういう付与はあるの?」


「聞いたことがないにゃ」


 自分から言っておいて、それはないんじゃないだろうか。そういう適当なところが猫さんの悪いところだ。


 しかしながら、ここで何かを思い浮かんだのがアドリーシャだった。


「確か、聖女になると聖属性を引き継ぐそうで、魔力に対しての属性付与が可能だと聞いたことがございます」


「そ、それは本当!」


「は、はい。マリアンヌ様に聞いたことがございます」


 聖女になる時にイルミナ教からスキルを付与されるらしい。スキルって付与される場合もあるのか。


「じゃあ、ニールとアドリーシャは聖都に着いたらお願いしてみたら」


「それがよさそうだね」


 気持ち的にはせっかく専用の武器を手に入れたのですぐにでも属性付与をしてもらいたいところだけど、意味のない付与では武器にも申し訳ない。


 しっかり武器とも向き合った上で本当にその属性でよいのか判断した方がいいだろう。


 まだマジカルソードで戦ったことさえないのだからね。


「それじゃあ、風の谷へ向かおうか」


「そうね。属性付与が楽しみだわ」


 いち早く属性付与される三人がうらやましくもあるけど、ようやく僕にも専用の武器が手に入ったことで、心がどこか穏やかになった。


 この武器は大切に使おうと思う。インベントリでメンテナンスもできるしね。



 それから十日ほど馬車旅をして、僕たちは風の谷の集落へとやってきた。


「ここで合ってるのよね?」


アルベロがそう言うのには理由があって、何というか、人の気配がないのだ。


 集落はあって、つい最近まで生活をしていたような形跡はあるのに、そこに住んでいるはずの人がまったく見当たらなない。


「誰かー、いませんかー」


 ルイーズが大きな声で呼びかけるも、何の反応もない。


 どうしたものか。ここまで結構な長い距離を旅してきているので、ここで食料を調達しないと厳しくなる。


 まあ、最悪の時は狩りをして野草を採取すれば何とかなる気がしないでもないけど、やはり新鮮な野菜は欲しい。


 この場所で風属性付与を楽しみにしていた三人はどこか渋い表情をしている。


 確かにそう簡単に来れる場所でもないし、ここで付与できなかったら、次はいつ来れるかもわからない。


 ここ以外の場所で風属性付与が出来る場所は僕も知らないし、三人の焦った顔を見ていると近くにはないのだと思う。


「ねぇ、あそこに男の子がいるよー!」


ルイーズが見つけたのは小さな男の子。膝を抱えてさみしそうに地面に座っている。


 そこそこの広さがある集落で一人ぽつんとたたずむ少年。何かあったとしか思えない。


 しかしながら、そんなことを気にするようなルイーズではない。ようやく見つけた人を逃すまいと一人走っていった。いや、何故かルリカラまでも飛んでいった。


「な、なんだよ、お前、こっちくんなよ。今は……それどころじゃないだよ」


 ルリカラが戯れるように少年の頭に乗っかっている。こんな行動はちょっと珍しい。


「お父さんは? お母さんはどこに行ったの?」


「いないよ」


「いないって、どこか出かけてるの?」


「違うよ。俺に親は……いない。いや、いるけど違くて」


「ご、こめん。変なこと聞いちゃったね。君の他に、この集落には誰かいないの?」


「他の人たちは教会に集まってるよ。あっちの一番奥にある聖域だよ」


 聖域というのは、確か風の谷の民が守っているという神聖な場所。そこに集落のほとんど全員が集まっている状況というのは何かあったとしか思えない。


「ありがとうねー」


 さて、教会に人が集まっているのは何があったからなのか。面倒事でないことを祈りたい。

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