1.(1)なにかおかしい
俺の世界はモノクロで、輝きなんてものは存在しなかった。
あの日までは…。
「零、今度のサイン会どうだった…?」
「…」
頼む…聞かないでくれ。
「おい、聞いてんのか?」
「外れた…」
「まじか…!?今までなんとしてでも当ててたお前が?」
「……古川は?」
「ふんっ、当たった☆」
古川は、鼻をならし自慢げにこたえた。
別に鼻ならす必要ないと思うんだけど…。それより、言い方がウザすぎる。
「あっそ、まぁ俺にはどうでも良いことだし」
「おいおい、それはないだろ」
ちなみに、サイン会というのは我が推し、天使のむんにちゃちゃんの1周年記念のイベント。
俺は、初ライブのときからむんにちゃちゃんのライブに行っていた。初ライブは、今回のサイン会に当たったとかいう俺の同志の古川優木に誘われて行った。それで、惹かれたわけだけど…。
今回のサイン会、絶対行きたかったのに…!!
「あ、今日、むんにちゃんからのお知らせ生放送があるって」
「まじか!?」
「…元気出んの早…」
「なんか言ったか?」
ちょっと、(本当はちょっとではないが)ウザかった古川を黙らせ、俺は教室を出た。
はぁ…今日は早く帰ろ。
と、思ってたのに…。なんで変なタイミングで現れるんだよ、ストーカー先生。
「さ、さよならぁ…」
「うん、おはよう。青下くん」
「…俺、今日用事あって」
「え?何?聞こえないなぁ?」
捕まった…。家に帰りたかったのに…。
「ま、今日はいいや。職員会議もあるしね」
「え…」
ストーカー先生から逃れる日がくるなんて…俺、死ぬのか?
「ほら、帰った、帰った」
「は、はい…」
やばい、調子狂う…。おかしいだろ。いつもなら、職員会議があるから待ってろとか言うのに…ありえないんですけどぉ!?
ま、早く帰りたかったし、いっか。
そうして一段落し、俺は歩きだした。
交差点で、信号を待っていると横からとある少女が現れた。
「零ちゃん」
「はぁー、急に現れるのやめてくれないか?いつも言ってるだろ」
「昔からの仲でしょ」
「だからなぁ…。そもそも、ちゃん付けも嫌なんだ!」
「零ちゃんは、零ちゃんだよ?」
「当たり前のように言うな」
荒野豪千みすず《こうやこうちみすず》、俺の幼馴染みであり、唯一の女の友達。
別に女と仲悪いわけではないけど、仲が良いと言うほどじゃない。なんか、さけられたりはするけど…。
それは別として、まためんどくさいやつに絡まれた…。しかも、なにが「零ちゃんは、零ちゃんだよ?」だよ。意味わかんないんですけど!?
早く、みすずから離れないと。むんにちゃんの生放送に間に合わない…!
「じゃあな、みすず」
「えっ…?一緒に帰ろうよ。家隣でしょ?帰り道一緒でしょ?」
正論すぎてやばい。ま、そんなこと終われても走って一人で帰るだけなんだけどな。
「また、明日な」
「え、待ってよ!零ちゃん」
俺はみすずを無視し走り出した。
「…零ちゃーん、待ってぇ~ー」
…思わず振り返るとそこにはみすずがいた。忘れてた…こいつ、陸上部なんだった…。
「一緒に帰ろ?」
「…わかったよ…!」
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次回投稿は不定期です。すみません。