叔母
この作品で初めての戦闘シーンです。
「おっと……いきなり何するのよ?」
「いきなりはそっちでしょうが!?」
とりあえず、俺とヘラ姉さんが同時に攻撃したが……
「おお、良い攻撃ね。つい、切っちゃったじゃない。」
一瞬にして俺とヘラ姉さんの腕は肩から下が切られていた。
「チッ、油断した。まさかこんなに強いなんて。」
ヘラ姉さんはイラついていたが、どこか嬉しそうでもあった。
「まぁ、正当防衛という事で切った事許してくれる。此処によったのはついでで、私、サイアンに用事があるのよ。」
「?お父様に?」
ミルがそこに疑問に思ったらしいが、そんな事今の俺達にはこの侵入者の都合なんて関係ない。
「悪いけど、貴方みたいな危険そうな人をお父様に合わせるわけにいかないのよ!」
ヘラ姉さんはもう一つの腕で剣を持ち攻撃を再開した。
「全く、これだからカロリール家の血は面倒ね。」
侵入者はヘラ姉さんの剣を剣で簡単に受け止めた。
「うそ!」
ダンデラはヘラ姉さんの力を知っているから。侵入者が受け止めた事に驚いていた。
「ふーん、貴方……異能力者?」
「そうよ!貴方なんで受け止める訳、その剣にも貴方にもそんな力ないでしょが!」
侵入者にも、その剣にも、ヘラ姉さんの力を消すような力は見えない。
だから、俺もヘラ姉さんも侵入者は躱すと思っていた。
侵入者が剣で受け止めた時は俺も内心驚いた。
「あら?そんな事も知らないの?……知りたい?」
「いいわよ!貴方の死体から調べるから!」
「あはは、無理無理、貴方のような子供に負ける程弱くないわよ。」
「そう。ではこんなのはどう?」
ヘラ姉さんはそう言うと構えを変えた。
「あら?まだ何かするの。」
「えぇ、悪いけど私達の実験体になってもらうわよ。」
「私達?………!?」
チッ……気づかれた。
侵入者の注意がヘラ姉さんに向いている間に気配を溶かした俺は、侵入者の死角に入り攻撃したのだが、避けられた。
「やっと。その涼しい顔を曇らせたわね。」
「まさか私の死角から攻撃してくるなんて、貴方の弟、その図体からは考えられないくらい隠れるの美味いのね。全然分からなかったわ。今も、集中しないと消えそうなほどよ。」
「ピック君、いつも間にあんな所にいたの?ミルちゃん分かった?」
「いえ……全然分かりませんでした…」
俺が見えなかった事が悔しかったのか?すごい悔しそうにしている。
まぁ、侵入者からは死角でも他の人から視覚内だったからな。
でも、見えなくても仕方ない。この技は俺が鏡を見ながら編み出した気配消化技だからな。まだ未完成でも、格上に効く。
「ホント、カロリール家の者は子供でもビックリ人間ね。お姉さん疲れちゃうよ……」
「全然そうは見えないけど、次はこれで驚きなさい!」
ヘラ姉さんはそう言うと侵入者に向かって一直線に向かっていた。
「また?その力?残念だけど私に貴方の異能力は効かな……!!」
やっぱり、侵入者の危機察知は優秀だな。ヘラ姉さんの攻撃の違いに受け止める直前に気づいた。
「まさか私が切られるなんてね。」
「私もこれを使っておいて服しか切れないとは思わなかったわ。」
侵入者は紙一重で躱したが、この技が未完成のおかげ服は切れていた。
「自分の異能力を技で再現する人が子供でいるなんてね。もっと力に頼りなさいよ。」
「そんな事する訳ないでしょ。私達は絶対的強者じゃないといけないのよ。そんな事は弱者がやる事よ。」
この世界の異能力にはたとえ無敵な力でも絶対弱点や攻略法はあるようになっている。
その為、強い異能力を持った者程の死因や敗因は過信した自分の異能力が破られる事による物だ。
だから、強い異能力者は自分の異能力を理解して対策をしている。
ヘラ姉さんも技術による再現は対策としてポピュラーであるが、難易度としては高い。少なくても、9歳の子供が出来る事でもないし、そもそもしようともしない。
ヘラ姉さんのように強力な異能力を持った子供ほど対策を考えない。
まぁ、そんな愚かな事を俺達がする訳ないけどね。
「これは私もそろそろ本気を出してきても良いかもね。」
「「「「!!!!!!」」」」
戦闘に参加してないダンデラやミル達も感じる程侵入者の迫力が変わった。
けど、これで終わりかな。
本気出しすぎだよ。叔母さん。
「そこまでだ!お前たち、構えをとけ。」
ほら、お父さんにバレた。
「ミラード姉さん……何してるんですか?」
「「え?」」
やっぱり、身内だったか……
ダンデラはともかく、ミルは気付こうな。
初見でヘラ姉さんの異能を看破出来るなんて、身内にしか無理でしょう。
まぁ、俺とヘラ姉さんは最初から洞察力で分かっていたけどね。
「あっ、我が弟よ。出迎えご苦労。」
「ご苦労じゃないよ。そもそもなんで、門から最も遠い庭園にいるのさ……全然来ないと思ったら私の子供達と遊んでいるし……」
「いや〜サイアンの子供達が気になってたから。ちょっと遊んでみたら、思ったより強くてお姉ちゃん本気で遊んでしまうところだったよ。」
「はぁ……姉さんが本気で遊んだら姉さんはともかくこの子達が庭園を壊してしまうよ。」
「「え?!」」
「ダンデラとミル…私の友達と妹なんだから。この程度で驚きすぎよ。」
そもそも、俺はともかく、ヘラ姉さんは攻撃魔術が得意なのに使っていない事に疑問持ったら気づきそうなものだけど。
「それにしても貴方の子供は優秀ね。長男はまだ見てないけど妹や弟が優秀で、次期当主なんだから優秀なんでしょう。」
「今日はその事で呼んだじゃないんだよ。」
「分かっているわ。開拓の話でしょ………あれ?もしかして言ったらいけなかった?」
お父さんが苦い顔している。
それはさておきそんな話聞いてない。