姉友
「美味しいわね。」
「でしょ〜カロリール領の果樹園で取れたアップルで使ったアップルパイは最高なんだから。甘いものが苦手なピックも好きなのよねっ!ピック!」
「ピックお兄ちゃん、美味しい?」
「美味い。」
俺は今、姉のヘラと妹ミルと姉の友達であるカマンベール伯爵家の娘のダンデラ・カマンベールと一緒にカロリール家の庭園で茶会をしている。
「サラお兄ちゃんも参加できたら良かったのに…」
ミルがサラ兄さんの不参加を残念がっていた。
「仕方ないさ。兄さんは次期当主としての勉強で忙しいんだ。」
「私のサラベール様と会えなくて残念です。」
「残念……」
兄さんがいないのは残念だけど、まぁどうしようもないからいいけど。
サラ兄さんが次期当主として頑張ってくれているお陰でこうやって楽出来ている訳だしね。
「あれ?ピック君、アップルパイ一切れだけでいいの?」
一切れでご馳走様している俺にダンデラさんは疑問を持ったようだ。
「あぁ、いいんだ。ピックは見た目の割に少食なんだ。それに味覚が飽きやすいのか?あまり同じやつを食べない。」
「あら?そうなの?意外……」
ダンデラさんは珍しい生物を見るような目で俺を見ている。もっと詳しく言えば俺のこの育ちまくった腹を見ていた。
よく言われる事だが、この体になってから。全然食べれない上に好物でもそんなに食えない。
「ピックお兄ちゃんはもっと食べた方が良いと思います。」
「そんなに食べないの?」
「うーん……私達の十分の一くらい?今日は美味しいアップルパイだったから、沢山食べた方だね。」
「え!」
まぁ、うちは大食漢が多いが、それでも俺が食べる量は少ない。
サラ姉さんの発言にダンデラさんは俺の腹の方を見ながら驚いている。
「あまり人の弟の腹をジロジロと見るなよ。失礼だぞ。」
「ごめんなさい。あまりにも不思議になんだったから……」
あまりにもじろじろ俺の腹を見るダンデラさんにサラ姉さんが叱った。
俺は一切気にしていないから。別に謝る必要はないんだけどね。
「不思議ですよね?ピックお兄ちゃんはなんでこんなにぷにぷになんでしょう。」
そんなことを言いながら俺の腹をプニプニとつついている。
「ピックの身体は特別せいだからな。それにこの腹は寝心地が最高なんだ。」
「あら?そんなに気持ちいいの?」
今度は興味深そうに俺の腹を見つめている。
確かにヘラ姉さんはよく俺の腹を枕代わりに昼寝をしている。
側から見たらペットと一緒に寝ているお嬢様である。
「あぁ、まるで堕落の道へ誘う魔具のようで、一瞬で夢の中だ。」
「へぇー……」
「嫌ですよ。」
期待の目を俺に向けてくるので、先に断っておく。
「振られたな。」
「そんな!」
ガガガーンと効果音が付きそうな顔で驚いている。
「そんな驚かなくてもいいんでは無いんでしょうか?」
「ダンデラは美少女で見た目通りのお嬢様だからな。頼み事で断られた事がないんだ。」
「まさか、私の頼みを断る人がいるなんて。」
いや、いるだろう、此処に。
それにしてもそんなに良いものなのか?これ?自分ではよく分からない。
「確かにこれはなかなかの物だな。」
「そうだろう。そうだろう。ピックの腹は最高なんだ。………うん?誰だ?!」
いつも間にか俺の腹で誰か知らない女性が寝ていた。
「やぁ、若人諸君。」