領主の悩み
「はぁ……どうするか…」
今悩んでいるこのザ・金髪イケメンおじさんこそがピック達の父にしてカロリール家23代当主サイアン・カロリールである。
「どうされますか?断っても良いのでは?」
執事長のジョージがそう提案するが、流石に友の頼みを断るのもなとサイアンは悩んでいた。
「だが、これをどうするよ。」
サイアンはジョージにも見えるように友の手紙を机に広げた。
「新大陸での新たな開拓計画ですか?」
「あぁ、他国が今、他国との戦争をやめて力を入れている事業だが、我が国は他国より遅れている。」
「内政に力を入れすぎましたかな。」
「そうだな。その分発展はしたが、新たな発見は少なかった。」
他国が戦争をやめたのを見て、この国は内政に力を入れた。元々、四つほどあった国が大陸から侵略を防ぐ目的の為にまとまった国だ。争いの種は幾らでもあったが、それでも入れすぎたな。
それにうちには関係ない話だったしな。
「我がカロリール家は外にはあまり関心がなかったのもあって何も発言しなかった。」
「仕方ありません。カロリール領は広大でこの国で最も発展している領地です。勝手に外の情報は集まります。諜報部隊も防諜に力を入れています。」
この土地は侵略して手に入れた訳ではなく、この国ができる前から我らの領土だった為、領主や国民も外には関心がない。
「それに、我らが行かなくて大丈夫ではないですか?この前も頼みを聞いたではないですか。」
「それはそうなのだが……」
確かにこの前もサイアンの友人は大陸の学園に我が子供達を留学させることを頼んできて、それをサイアンは受けた。
「はぁ…では頼みは聞くとして、誰を送るのですか?大陸は未知の土地、何があるか分かりません。エルフや獣人という未知の知的生命体がいるようですし……」
「そうだな。順当に考えると、サブを行かせるのが一番安心するが、あいつは次期当主だしな…」
カロリール家は危機察知と洞察力共に優れた者が当主に選ばれる仕組みだ。
だから、何も無いとは思うが……
「それでも、相手は新大陸。何があるか分からない。」
「では、ヘラ様ですか?」
「いや、ヘラは戦力として申し分ない。兄弟の中で剣の才能は一番あるが、あの子はピックよりマシだが、危機察知が欠けている。開拓は3年後だが、その弱点を完全に埋めれているとは考えにくい。」
「それでは、ピック様もダメですか?」
「あぁ、あの子は強いが、今回の開拓には危機察知が必要だ。あの子だけが行くのなら、一番安心出来るだろう。あの子の生存能力は私が知っている生物でも一番だろう。だが、今回は団体で行く。あの子には任せられない。危機察知に変わる何かが有れば良いのだが……」
「それでは、ミル様ですか?ですが、彼女は……」
「あぁ、分かっている。あの子には任せられない。」
「では……」
「あぁ、姉に頼むよ。」
「それは!本気で…ございますか?」
いつも冷静沈着なジョージが取り乱していた。
「あぁ、あの人なら問題なかろう。」
「あの人自体が問題な気がしますが……」
「それは言うな………」
まだ、サイアンの悩みは続きそうである。