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俺ら、高校生の記憶戦争  作者: 秋月 Raich
2/2

貴方の記憶で助けを求めます。

 俺ら、高校生の記憶戦争シリーズの第二話です。どうぞお楽しみください!

「どうしてくれるのだっ!我ら一族の大事な皿を!誰に頂いたものなのか、解っているのか!?」


「時堂家には、特別な信頼をおいておりますのに。」


「誠に時堂の、血を引いているのやら」 


私が今から入れられるのは、折檻部屋?地下牢?


この時間帯は、警察がうるさいから、地下牢かしら。5年前、同じようなことをした。其の時は、泣きわめいたのに今は、西条家のご指導のもとこんなにも冷静でいられるの。殴りたい?よく考えて。そんなことをしたら、母上が泣き頼みして払って頂いている高校の学費は、どうするの?あまりにも非合理ではないの。


 ガッチャーン


本の中だとそう描かれるけれど、現実ではそんな生易しい音ではなかった。金属音と、鉄が擦れる音と、木に何かが当たる音。


 気持ち悪い。私はずっと父親が大嫌いだった。あいつは、私への躾として暴力もふるってきた。算数ドリルで一問間違える度に鞭で叩かれていたのを覚えている。食事も何日も食べさせてもらえなかったんだっけ。弟たちの方が良くできていたから、弟たちには、甘かった。弟たちが私を面白がって殴ろうが、蹴ろうが父親は、笑って見ているだけだった。


 「とっとと、地下牢に連れていけ!」


 黙れよ。どうせ弟たちがこの皿を割ったときには、怒らないんだろう?


 触んなよ。その汚い手で。お前の娘なんかになりたくなかった。そうやってお前は、娘を縄で縛って地下牢に閉じ込めるんだ。消えろ。


 滑るようにして地下牢へ落とされた。台所の横に小さな扉があって

、そこから突き落とされるだけで地下牢へ行ける。皿を割った私は、父親に意識を飛ばしたその一瞬で地下牢へ投げ込まれた。真っ赤な線がたくさん入った目と滲んだ目が合った。いけない私!馬鹿な私!父上がいなくなったら、どうやって生きればいいの?わざと聞こえるようにして、わざとわかるようにして、同情されるのがこの世の中で一番私を汚したじゃない。


 「どうして」


それ以外の言葉は出なかった。大量に出る涙で荒い呼吸でもう喉が早くも占領されていた。


 いつまで泣いていたか、覚えていない。ただ次に起こった忘れられない出来事が私の人生を変えた。


 バチバチバチ


なんの音?胸騒ぎがする。ものすごい、棚が倒れるような音がした。


火事かもしれない。音が大きくなるにつれ、血管が浮き出し顔が青くなっていった。嗚咽混じりの息が過呼吸になっていく。


 もう一度人生をやり直したい。たった一軒隣の家に産まれていたら。たった一つでも特別なものを持てていたら。こんな思いしなくて済んだのに。何度こんな思いを胸に刻んたかわからない。死にたいって何度も思って何度も試した。でも生きるって楽しいって、好きな人が初めてできたとき、友達に助けてもらったときに感じたから。今死にたくない。死にたくないっ。だから、


 −−−たすけて


 午後5時32分。とある高校の屋上に男子生徒が二人。蒼白な顔をした者とそれを不安げに見る者たちだ。


「結葵?」


「はぁはぁどこにいる?今、行くからっ!」


結葵と蓮、ここまでの経緯は、朝に戻るところから始まる。


 6時 起床


未だに信じられない。信じられていないのにこんなに冷静でいられるなんてよっぽどの中二病か、馬鹿野郎なんだな。スマホの画面を開いて検索履歴を見る。「記憶共有」の文字が、ずらりと並んでいた。母さんに言っても姉に言っても信じてもらえないのは明らかだ。


「一人での抱え込みはきつくね?」


捨て台詞を吐いて台所へと向かった。


「結葵?大丈夫なの?昨日あんな青白い顔して二階に上がっていったんだから。」


家ではいい子な俺があんなふうにしたのは、母親としては驚くべきことなのだろう。でも秘密を明かすわけにはいかない。普通に生活していた俺が突然ああなったんだ。もしかしたら他にも同じようなことが起こっているのかもしれない。そうした場合、変に母さんに関与してほしくない。テストでも部活でもそうだが、自分の言葉自分が一番わかっているのに不必要に他人に関与されると苛立ちを覚える。もう高校生だから思春期と言うやつかもしれないが個人的には誰にでも当てはまると思う。


 差し出されたフレンチトーストを食べる。「食べ物が喉を通らない」という状況が容易に理解できた。


 もしかしたら、知らない間に実験材料にされていたなんてこともあるかも知れない。100年前は、宇宙に行くことなんて想像すらされていなかったんだ。それに母さんは、昨日のあれだけでこんなに動揺するか?とにかく俺にこんなチャンスが訪れたんだ。何にも取り柄がなかった俺に。不安と孤独に包まれていた俺を救ったのは、皮肉にも何も取り柄がない過去の自分だった。


「行ってきます。」


「どうしたの?力み過ぎw」


まあ、家族が俺を売るわけないよな。


「そうかな?行ってきます。」


いつも会う近所のおばあさん、通りすがりの会社員、ランドセルを背負った小学生。いつもの光景なのに全員が、俺をじっと見ている気がした。


「よお!結葵!」


「よっ!」


蓮は、いつもどおりだ。こいつは、どんなときも俺の味方だった。小さい時俺のハンカチが隠されたことがあった。ただの面白半分でやったつもりだったんだと思う。でもそいつらにこいつは本気で怒ってくれて、本気でハンカチを探してくれた。俺はとっくに諦めて、めんどくさいと思ってすらいたのに。部活も俺がへまするたびに励ましてくれて。テストも一緒に勉強してくれて。泣いたときは、一緒に泣いてくれて。こんなに救ってもらったのに何も返せてない。俺には返してやるくらいの力がなかったから。こいつにこのことも打ち明けようと思った。でも何また人に頼って、甘えてるんだよ。


「結‥‥葵?」


自分で、自分でなんとかしろっ!甘えるな!


「何?」


「お前、なんで‥泣いてるんだよ。」


「え?」


顔は、涙でぐちゃぐちゃだった。やっぱりお前には勝てないや。


 思いっきり深呼吸して手を震わせながら、掠れた声で、嗚咽を交えて打ち明けよう。こいつに中二病だと思われるよりも、精神科連れて行かれるよりも隠し事をするのが何億倍も辛いんだな。そんなに大事なやつなんだ。当たり前に隣りにいたやつが。


「‥‥‥俺、‥実はな、あのな、信じてくれなくていい。あの‥‥あのな、記‥憶が共有できるんだ。」




 誤字脱字があったら、教えてくださると嬉しいです。感想大歓迎!面白い、次は?などの短いものでも待ってます!(๑•̀ㅁ•́๑)✧

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