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89話 絶望と裏切り

 他のエリアと比べて男達がいる場所は、まるでどこかロックバンドがライブをしているかのような喧騒があった。


 ウェアウルフにデビルスネイクをはじめとする強力な魔獣が襲い来る。


「お前等!しっかりしろ!まずは一体ずつ倒すんだ!」


 リーダー格であるガランが喉が張り裂ける程に叫び、取り巻き達は息絶え絶えになりながら呼応する。


 ガランが先頭に立ち、襲い来る魔獣を迎撃する。


 あぶれた魔獣を中衛が相手をし、後衛が魔法で援護をする。個々人の力は劣っていようとも、ガラン達はもう何年も同じ時間を共にしている。


 連携の練度は成熟し、格上相手にも引けを取らない自負があった。


 だが、


「グッ!済まない!またそっち行ったぞ!」


 そう言うガランは既に多数の傷を負っており、ウェアウルフの攻撃を受け止めるとよろめき仰向けに倒れ込む。


 なおもウェアウルフは重心を掛けて獲物の喉元を嚙み千切ろうと牙を剥く。


「クソガァァァァァッ!!」


 ガランがウェアウルフの腹部を蹴り上げて弾き返す。


 持っている短剣で魔獣を切り刻む。


 一体を倒し、ふと後方を振り返ってガランは愕然とする。


 自信を持っていた連携も隊列も完全に崩れてしまっていた。


 数の力が減少し総合力が弱まっている中で、このエリアに現れる強力な魔獣を相手にするにはかなり荷が重い状態になっている。


 ガランが目の前の敵に背を向けて仲間の元へ走る。


「――――――ッ!!」


 直後、背中に強い衝撃と炙られたような熱に襲われ苦痛に顔を歪める。ガクッと膝が落ちそうになり、視線を落とせばデビルスネイクがふくらはぎに牙を立て、肉を抉り取ってしまっていた。


 それでも歯を食い縛り、一歩、また一歩と駆ける。


「ガランさん……」


 仲間が自分を呼んでいる。


 その声はやがてか細いものに変わる。


 ウェアウルフは死に体となった相手にも容赦せず、ただ欲望の赴くままに牙を剥き人の身体を貪り食う。


「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


 行く手を阻む魔獣を無理矢理退かして仲間を傷付ける敵を斬る。感情を押し殺す為に喉が張り裂ける程に叫び、我武者羅に短剣を振るう。


 憎しみを込めてダメ押しをし、力無く倒れている仲間を揺さぶるが反応は鈍い。


 身体は原型を留めてはいるものの、所々食い千切られて欠損部分が目立つ。


 もはや弱弱しい呼吸が残っているだけであとは鼓動が止まるのを待つのみの状態となっていた。


 自分が今に固執してしまっていることで、直近何度も別れを味わうことになっていた。


 好い加減慣れろよ、と自らを戒めようともそうはいかない。


 ガランは顔を上げて離れたところで戦況を眺めているラングに向かって叫ぶ。


「もう駄目だ。ラング!撤収だ!」


 あぁ、今日も駄目だった。


 それにまた犠牲を出してしまった。


 そんな無力感と絶望を胸に抱いていた。


「なにを言っている?まだ始めたばかりじゃないか。もう少し頑張って貰うぞ」


「なッ!ふざけるな!この惨状を見ろ!今日はもう無理だ!」


 これまでならガランの合図でラングが転移魔法を展開して場を離れるところだった。


 なのに、なにが可笑しいのかラングは笑みを浮かべてガランの要求を突っ撥ねてしまった。


「私から見ればまだやれるはずだ。ほら、仲間達も頑張っているじゃないか。貴様も負けないようにしないと、な?」


「馬鹿が!それどころじゃねえだろうが!さっさと転移させろ!」


「断る」


「は?」


 予想だにしていない回答に、ガランは思わず間の抜けた声を出してしまった。


 ラングがふいに指を差す。


 その方向には窮地に立たされている仲間達の姿があった。


「クソッ!」


 ガランはラングから一旦目を切って仲間の救援に向かう。


 懸命に武器を振るっていると聞こえて来るのは不穏な言葉。


「こういうシナリオはどうだ?ガラン一行は連日の無茶が祟って全滅。看守は必死に止めたが、ガランがクリアに執着したことにより痛ましい事故が起きてしまったとな」


 なにを言っているのかまるで理解出来ない。


 俺がここまで来るのにどれだけのことをしたと思っている?


 ラングが指示するままに仕事をこなし、目を付けた囚人を陥れるような汚いこともした。


 全ては監獄から外に出る為に行ったものだ。


 俺が行ってきたことはラングにとって利益があった。


 得た魔石を頻繁に横流ししてやっていた。徒党を組んで仕事をこなすことで効率が上がり、その功績から上級看守の地位も得られた。


 いわば俺達は―――――…………


「思い上がるなよ。所詮貴様等は死んで当然の罪人なんだ。私達と対等になるなんてことは決して有り得ない」


 そう言ってラングは気味の悪い笑みを浮かべる。


 ラングは……このクズ野郎は端から俺を利用だけして第零監獄から出すつもりなんて無かったんだ。


 自らは手を下さず、俺から絞るだけ絞って、あとは事故を装って殺すつもりだったんだ。


「諦めろ。貴様等じゃ、ここのエリアをどうこうすることは出来んよ」


 終わった。


 きっと今までの囚人達もそうだったのだろう。


 どれだけ頑張って、外に手を伸ばそうとも、最後はコイツ等の意思一つで消されてしまう。


「ガランさん!」


 仲間が叫ぶ。


 だが、もう武器を握る力が入らない。


 その時、間近で転移の魔方陣が展開されるのを確かに見た。


 なにが起こったのか分からない。


 ただ、そこからあの気に入らない女が現れたことだけは理解出来た。

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