73話 囚人達の位置付け
ラングが開いた理解不能な催しが終わった後、怪我人が多数発生したことで白衣を着た男達がかなり忙しそうに駆け回っていた。
重軽傷関係無く担架に乗せられ、運ばれていく様を眺めていたのだがここに医療というものがあること自体が意外だった。
「一応人権めいたものはあるってことかな」
「どうだろうな。なにか裏がある気がしてならないが」
私の見解に対して、眉を顰めながら訝しんでいるのはスルトだった。
それに対して私から言えることは無いが、空っぽな相槌を打ちながらスルトの全身を矯めつ眇めつ眺めて見る。
無傷だった。
追って来るレッドラットを撲殺したのか、その手には血液がこびり付いてはいるものの、自身が負ったであろう傷は皆無だった。
「なんだよ?」
「いや、なんでも無いわ」
かつて相対した殺人鬼以上の体格を誇るだけに、それに比例して高い実力を持っているということか。
「これはまた……」
こうして集められた囚人達を眺めて気付いたのは、削られてしまった人数についてだった。
凶悪犯と言っても人間の域は越えられないということか。
半数以上が運ばれてしまい、残っているのはほんの数人となってしまっている。
「これだけしか残らねえのかよ。ったく、大したことねえな」
ラングが露骨なまでに不機嫌そうに舌打ちをする。
自身の開いた催しにより多数の負傷者が出たというのに、全く気にせず罪悪感すら覚えていないであろう態度を見ると、どちらが犯罪者であるか分からなくなってしまう。
「よし、ではこれから貴様等にランク付けをしてやる」
「ランク付け?」
「そぉだ。よく聞け。ここ第零監獄には囚人達の位を表すランクというものが存在する。それは世界に存在するS~Gで位置付けされており、ここでも当然Sランクの人間が最も位が高いものとしている」
一同が黙り込む。
表の世界では例えGランクであろうと、余程のことが無ければ虐げられるようなことは無い。
だが、ここでは―――――――、
「分かっているようだな。ここでランクがGと位置付けされるということは、囚人達の中でも最低辺な存在であり奴隷と化す。その扱いはぞんざいそのものだ。細々とした食事に、硬い寝床に不愉快なイビキ。凡そ碌な扱いは受けない」
ラングがニヤリと笑みを浮かべる。
Gランクが受ける扱いというのは、聞いているだけでもゾッとするものとなりそうだ。
ここには大罪人しかいないのであれば、そんな者に慈悲を掛けることなんて有り得ないだろう。
「だが心配するな。貴様等は最初の洗礼に対して目立った傷も負わず、こうして私の前に立っている比較的優秀な囚人だ。そんな貴様等はここにいるだけでGランクを回避することが約束されているのさ。尤も、ここにいない連中はそれだけでGランク確定だがな」
一同安堵の息が漏れる。
「さて、そんな中でランク付けを行っていく訳だが、その基準は先程の催し物に対する貢献度だ」
なにを言っているのか、すぐに理解することが出来なかった。
貢献度、とはなんだろうか。
なにかしらの目標を設定されていたという記憶も認識も無い。他の囚人達も顔を見合わせながら眉間に皺を寄せているところを見ると、単に私が聞き逃したとかではないということだ。
「アレを見ろ」
ラングがそう言って親指を立てた先にあるのはガラス張りの一室だった。
天井からぶら下がる派手な照明器具、壁に吊るされている高級そうな絵画。
無機質な監獄内にあって、それだけで一際上等で豪奢に見える。
そしてそこから俺達を見下ろすスーツ姿の連中。
ここからでは表情は伺い知れないが、あまり良い連中では無さそうだ。
「貴様等が如何にあの方々を楽しませたか。それに尽きるってことだ」
ラングのような傲慢そうな男に方々、だなんて言わせるとはね。
素性は知らないがさぞかし位の高い連中なのだろう。
私が魔王の座から退いてからというもの、人間にも一部優位性は生じるようにはなったが、こんな下衆のような存在も現れるようになったか。
「さぁお待ちかねのランク発表の時間だ。貴様等の監獄生活を左右する大事なことだ。よぉく聞け」
それからラングが興奮気味に、まるで歌うようにランク発表を行っていく。
レッドラットは殆ど倒していないし、なんだったら窮地に陥っている囚人を助けたケースもあった。
監視カメラにもばっちり撮影されていただろうし、アレをお偉い方がどう感じるか。
あまり期待出来ないかも、とやや項垂れながら傾聴する。
だが、発表後に付けられたランクはかなり意外なものとなっていた。




