48話 メアの真意
遠くの爆音を耳にし、家屋の主人たるケイは薄っすらと笑みを浮かべる。
目にはしていないが、その威力が脳裏に浮かぶようだった。
「随分と嬉しそうね」
その背後に立つメアが薄っすらと笑みを浮かべる。
「弱っている龍に呪いを掛けて屍龍にしてやって夢瑠と戦わせてみたけど、そうそう上手く行かないものね。流石に侮り過ぎたか」
メアが腕組みをしつつ、さして残念でも無さそうにしている。そんな様子を見ながらケイは頬杖を突く。
「ま、私の調律も施されていたからね。そう簡単に殺されるようでは困るんだけど。で、今回は駄目だった訳だけど次はどうするの?」
「うーんどうしようかな。今は考え中かな。その気になればいつだって殺せるんだけど、あっさり過ぎちゃ面白く無いしね。どうせやるならジワジワと苦しめてからじゃないと」
端から聞いているならば大半の者が引いてしまうような話。それでもなお愉快そうにしているのはケイくらいのものだ。
ケイが肩を竦める。
「メアの憎しみはもう筋金入りだね。夢瑠はそんなに悪いことをしていたかな。私にとっては退屈しない日々だったけど」
「そう言うのはアンタくらいよ。今私の元にいるかつての配下達は皆、一律にその時を待ち侘びているくらいだわ」
「ほぉそれはそれは。で、メア自体はやっぱり将来次期魔王狙っちゃう感じなの?」
「私はそんな柄じゃ無いわ。将来のことより、今楽しみことが大事なのよ。表に立って動くより、裏で魔王を操るくらいの立場が理想ね」
「メアらしいね。嫌いじゃないよ」
それから適当な話をしながら時間を過ごしていると、メアが眠そうに欠伸をした後に伸びをする。
なにかに気付いたようになにも無い壁の方へ、厳密にはその向こう側に意識を傾ける。
「この辺りにしておこうかな」
メアは詳細は語らずともケイはそれがなにであるかを察する。
手をヒラヒラと振ってその場から去ろうとしているメアに視線を向ける。。
重要視はしていない。
あくまで軽い気持ちで、どうでも良さそうな風に背もたれに重心を預けながら口を開く。
「しつこいようだけどさ、メアの目的ってなんなの?」
「いやいや、だから…………」
向けられた問いは先のそれと同様のものだった。
であるからこそ、メアは去り際に湧いたごく僅かの苛立ちと共に同じ回答を出そうとした。
だが向けられる視線が気になる。
故に口籠もってしまった。
「別に嘘は吐いていないわ。ただ、真の目的はまた別のルートにある。私にとってはどちらに転んでも支障は無い。それだけのことよ」
メアはそれ以上語らず、また、ケイに追及される前に姿を消してしまった。
「残念。もう行ってしまったか」
メアがその気になれば、現段階の夢瑠を殺してしまうことくらい容易である。それでも今回のように、わざわざ朽ちた龍を仕向けるという中途半端な行動に違和感を抱かずにはいられなかった。
切っ掛けは単にそれだけ。
なんの根拠も無い、いわば鎌をかけるような行いではあったがそれが図星を突いたのか、メアから一瞬余裕が失われた。
ケイは椅子の前脚を浮かせてブラブラと物思いに耽る。
近づいて来る気配。
それが誰のものであるかは既に分かっている。
ここからでも感じられるオーラや魔力は、ほんの少し前と比べて充実しているようだ。
「狙っているのかどうか……」
ケイの力を以ってしてもその真意までは覗けなかった。
この調子では暫くは山の無い展開が続くかもしれない。
長くのんびりと楽しむのならそれも良いが、冗長ともなると食傷気味に陥ってしまうこともある。
そうなるくらいなら……。
「一石を投じてやるのもまた一つかな」
それはケイ自身が動くことを意味している。
大きな力を持っていながらも不誠実な存在。
ケイの力にはまだ誰も想像していない使い方があるということ。




