憲法9条改正で脱原発の道を
憲法9条改正で脱原発の道を
2020年暮れ、町田は再び議員会館の江田の部屋にいた。野党再編でできた立憲党の代表になった江田の横には、幹事長の福川もいた。
「今日は、次の大政局に向けて一つの提案を持ってきました。大政局は来年ある次の選挙後に来ます」
「もったいぶって、何?」
江田は、政策の話なのか政局の話なのかはっきりしろと、言いたげだった。
「折角、立憲党という名前にしたんですから、憲法9条の改正案を持ってきました。9条を改正して、自衛のために通常兵力を持つことと核兵器の開発・保持は永遠に放棄すると明記します。これにより、核兵器の開発につながる原発も新設を認めず、すべて廃棄していくことになります。憲法改正に伴い原子力基本法とかも廃止して原子力廃棄促進法で原子炉の廃炉と核のゴミ処理を進めます」
「ふむふむ。何となく狙いが見えてきたぞ」
「憲法改正だから、発議に衆参の三分の二が必要で、この憲法改正案に賛成する勢力での大連立を呼びかけます。一朝一夕にはいきませんが、自由安心党は、非核三原則は国是だと言い続けてきた政党です。『核兵器は、作らず、持たず』という国是を憲法に書くのに反対できますか? 核武装して米国と戦争する度胸なんかはなからないでしょう。この憲法改正が通れば、2021年に発効する核兵器禁止条約を日本が批准することもできます」
「確かに、そこは狙い目だよな」
「どうせ安全保障上は、核の傘なんてもうとっくに幻想ですからね。ついでに経済産業省は、脱原発・新産業省に改組し、原子力規制委員会は原子炉廃炉委員会にします。原発に代わる新産業を作り出すのは、これまで政策を間違えてきた官僚たちの宿題です」
町田は、いつになく饒舌だった。
「憲法改正ができたら、不平等条約である日米地位協定を改正して日本国内の米兵の行動に関する裁判管轄権を日本のものにするよう日米交渉で迫ります。もともと沖縄で海兵隊がどれだけ日本人を殺しても大統領が恩赦できるようにしている条項ですから。憲法改正を国民が選択し、日本は永久に核武装しないのだからと。沖縄再占領計画を米国が放棄して海兵隊が沖縄から出て行ってくれれば、辺野古も作る必要がなくなって一石二鳥なんですがね」
力説する町田に、江田は不敵な笑みを返すのだった。