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銀白色の涙  作者: どらえもん
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国際監視下の日本と原発官僚の暴走

 国際監視下の日本と原発官僚の暴走


 第二次世界大戦中の日本政府は、原子力爆弾の開発を行っていたが、まだ理論的な研究の域を出ていなかった。朝鮮半島で原爆実験を行う準備をしている間に。広島、長崎に原爆を投下され、終戦になった。

 戦後の日本政府は、「世界で唯一の被爆国」として原子力は平和利用に限定し、「非核三原則」を国是とする政策をとってきた。核兵器拡散防止条約(NPT)を批准し、国際原子力機関(IAEA)による監視を受け入れて。米国に限らず核保有国は、核兵器の拡散(非核保有国が核兵器を持つこと)を絶対に認めない。そもそもIAEAの設立(1957年)を提唱したのは、ダレス米国務長官だった。

 ダレスの狙いは、日本と日米動力協定(1958年)を結んで米国産の原子炉を日本にプラント輸出し、濃縮ウランも提供する代わりに、IAEAの査察という公然スパイ活動で、日本が核兵器を開発しないように監視する仕組みを作ることにあった。

 町田は、伯父の小島から「IAEAのスパイの半分が日本に常駐している」と聞かされていた。核兵器の開発を進める北朝鮮やイランよりも、核保有国にとっては技術力の高い日本が核兵器を持つことの方がはるかに脅威なのだ。

 2014年のクリミア紛争で、ロシアが地域を限定した戦術核の使用をほのめかして米国などの介入をけん制したため、原発企業を日本に売り、一時は「核なき安保」に向かっていた米国は、核政策を変更し、2018年に「小型核兵器の開発」という新しい方針を発表した。これまで核兵器が「使えない兵器」と呼ばれてきたのは、破壊力が大きすぎたためで、破壊力を抑えて小型化すれば使える兵器になるという発想だ。それは、まさに福島第一原発の事故について町田が中村と議論した「アタッシュケース原爆」に他ならなかった。

 日本が核兵器を保有してNTP条約から脱退した場合、米国は即日、沖縄を再占領し、日本に宣戦布告する。それが「沖縄再占領計画」である。北朝鮮が、とか中国がとか、言ってみても、問答無用なのだ。外交安全保障の歴史と常識を知らない日本の方が悪いのだから。

 2006年12月25日付の産経新聞は、日本政府が「核兵器の国産可能性について」との資料を作成していたことを報じた。この資料の中では「1〜2年の期限で核兵器を国産化することは不可能」であり、黒鉛減速炉の建設が必要で「小型爆弾を試作するまでに最低でも2千億円〜3千億円の予算と技術者数百人、3〜5年の期間が必要で、核実験せずに開発するとなると費用と期間は更に増える」とされている。そう、世界中の核保有国のスパイが常時監視している中で、何年もかかる核兵器の開発などできるはずがないのだ。普通ならば。

 しかし、仮に原発事故に見せかけて意図的にメルトスルーを起こさせ、数か月で実用化できる状態のアタッシュケース原爆の材料を回収するように命じている原発官僚のトップがいたとしたら? その元官僚は、今は世界三大原発企業の経営監督機関のトップで、経営側に回収した放射性物質を使って秘密裏に核兵器開発を命じることができるとしたら? 

 福島第一原発で菅原首相が10年前に出した原子力緊急事態宣言は、10年たった今も有効で、解除はされていない。1号機の格納容器からメルトスルーした政府が「デブリ」と呼んで何が何だかわからなくしている放射性物質が回収されない限り、緊急事態宣言は解除されない。「事故」はまだ終わってない。

 政府はこれまでに何度かデブリの回収を試みたが、すべて失敗している。だがそれは「未遂」でしかない。町田は、現在原発官僚たちが国民の目を盗んでやっていることは、現在進行形の犯罪だと考えている。それも「国家転覆罪」だ。主権者である国民に意思を問うことなく国の根幹の政策を変更し、それが自動的に戦争の引き金を引くことになる。これが犯罪行為でないなら、すべての犯罪は軽犯罪になる。どこかの原発再稼働を推進したA級戦犯の孫の元首相と同じ論理だ。

 「やっぱりデブリは米軍やIAEAの皆さんの協力を得て、新しい放射能センサーロボットを作って回収して、処理方法もその枠組みで決めるしかないよね」

 町田は、政策マンの目に戻って、福島第一原発の緊急事態宣言解除と廃炉に向けて、必要な論点を整理していくのだった。


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