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銀白色の涙  作者: どらえもん
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原発官僚との口論

 原発官僚との口論


 5月のある日、町田は、原子力保安院のある課長を政策に関するヒアリングで自室に呼んでいた。まだ若く見える課長と一緒に二人の課長補佐が同行していた。町田が切り出した。

 「原発がメルトスルーしてもチャイナシンドロームが起きないように、原子炉の下に大きなセラミックの受け皿を作る技術の特許を西芝が、1997年に取得した。ヨーロッパでは、2000年以降、新設の原発には必ずこうした原発の非常事態に対応した安全装置の設置が義務付けられている。なぜ日本では、いまだに義務付けられていないのか?」

 「そんなことをしたら、目立が潰れるからですよ」

 課長は、こともなげに言った。

 「君は自分の立場がわかっているのか?」

 町田は呆れて言った。本当に規制官庁の担当者とは思えなかったからだ。

 「原発と原発企業を守るのが自分の仕事です」

 「ブー。国民の命を守るのが、君の仕事だ。規制官庁が原発企業を守ってどうする。完全にはき違えている」

 「いえ、間違っていません。自動車と原発と中小企業、この三つをわれわれが守ってきたから、今日の日本があるんです」

 「通産バ官僚の典型か。いいか、自動車は日米摩擦を機にメーカーが米国向けの輸出を現地生産に切り替えることで、全米自動車労組とウィンウィンの関係を築いた。役所は関係ない。中小企業を守ってきたというが、規制緩和で大店法を廃止した後、地方の商店街がシャッター通りになっているのが見えていないのか? 原発も核保有国が安全保障を核兵器に頼るのをやめる政策転換をした結果、お荷物になる原発企業を日本に売りつけてきただけだろうが。ババ抜きでババを引かされて、世界の3大原発メーカーになったと喜んでいるなんて、世界中の笑いものだぞ」

 なじる町田に課長は食い下がる。

 「原発で世界の最先端を行くことが、抑止力にもなるんです」

 「ほう、中曽根教の信者か。もう世界は、『核なき安保』に動き出しているのに。4年前にキッシンガー、ショルツ両元国務長官らが『核なき安保』への政策転換を求めた論文を発表しているから、読んでみるといい。9.11以降のテロとの戦いを経て、テロリストとの戦いには核兵器は何の抑止力も持たないことを欧米は痛感しているからね。安全保障の認識をアップデートしないと、完全に世界から取り残されるぞ」

 町田の剣幕に、課長は口を噤むが、目はまだ不満を示していた。


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