東電本社に乗り込み制圧した首相
東電本社に乗り込み制圧した首相
15日午前5時35分、社長とともに内幸町の東電本社に乗り込んだ菅原首相は、何事かと集まってきた勝間会長ら200人近い社員を前に大声で話し始めた。
「社長から福島第一原発から撤退したいという申し出があったが、撤退は認められない。これは、東電がどうという問題ではない。東日本がどうなるか、この国がどうなるかという問題だ。本部長として断じて撤退は認めない」
東電の対策本部が、一瞬、静まり返る。
「今が正念場だ。政府と東電が緊密に連携して緊急事態に臨機応変に対応する必要がある。そのために、ここに政府と東電の合同対策本部を置いて、経済産業大臣かその代理に二十四時間体制で指揮をとらせる。皆さんは、その指揮に従ってもらいたい」
菅原が東電を事実上、制圧した瞬間だった。そして、それまでの混乱のもとになっていた二つの指揮命令系統が、本来法律が想定している通り首相を頂点とする一つになった瞬間でもあった。主務大臣や主務大臣の代わりとなる政治家が常駐している状態では、原発官僚が横から口を挟むことはできなくなった。
「とっさの判断だった」と後日、菅原が語るこの政府と東電の合同対策本部設置から後、福島第一原発が落ち着きを取り戻すまで首相官邸と東電の足並みが乱れることはなくなった。菅原のファインプレーだった。
東電本社には、昼番として空江田経産相が、夜番として細川豪志首相補佐官が常駐することになった。事故発生後、ほとんど宿舎にも帰れていなかった空江田経産相が、これでやっと夜眠れると内心ほっとしていたのは、内緒の話だ。




