お蔵入りになったスクープ映像
お蔵入りになったスクープ映像
気を取り直した町田が携帯で連絡したのは、知り合いの大日本テレビ報道部の遊軍キャップだった。
「福島原発の爆発のスクープは、もしかして田中?」
「ああ、そうだ」
大日本テレビ報道部の遊軍キャップ田中徹は、ぶっきらぼうに答えた。田中は、学生時代に菅原の選挙の手伝いをしていたこともある。町田から見ると、菅原事務所の後輩だった。
「すごいね、新聞協会賞もんだよ」
「お世辞はよせ」
「それで一つ頼みがあるんだが。あの映像をスクープしたチームにもう少し現場に近づいてもらって、3号機と4号機が一つのプレームに入るように固定で映像を送り続けてもらえないだろうか? 嫌な予感がするから、しばらく監視できるようにしたいんだ。湾岸戦争の時にやっていたように、画面の下にワイプで入れるような感じにできないかな。NNNのCSニュースの方でいいんだけど・・・」
町田が用件を言い終わる前に、田中はピシャリと言った。
「それは無理だ。あの映像を撮ったチームは、帰ってくる途中だ。映像も夕方のニュースには流れない。お蔵入りになった」
「なっ、どうしてだ? 誰が見てもスクープだろうが。世界中で流れてるぞ」
「スクープかどうかの問題じゃない。俺のクビも危ない。上からの統制がかかってる。編集じゃなくて、もっと上だ。うちがどういう放送局かは知ってるだろう」
「ああ、ポダムが作ったCIA放送局だったな」
町田は、あまりのことに暫く黙ることしかできなかった。
田中が予想した通り、一週間後に田中は人事部に異動になった。それに反発するように、田中は貯めていた有給休暇をとり、故郷の滋賀に戻った。「しばらく東京を離れる」。そう言い残して。




