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銀白色の涙  作者: どらえもん
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「東日本消失」の危機

 「東日本消失」の危機


 東日本大震災や原発事故の報告を受けるために午後1時から衆議院別館5階の大会議室で民主党の両院議員総会が開かれる予定で、会場には上京した議員や秘書、党職員が詰めかけて、ごった返していた。入り口で並んでいた町田に声をかけてきたのは、畑山内閣と菅原内閣で総務相を務めた原田一博だった。

 「おい、どら。いいところにいた。ちょっと来い」

 原田は、町田の腕を掴むと、問答無用とばかりに階段を降り、衆議院第一議員会館への地下通路を進んでいく。自室まで「連行」した町田を奥のイスに座らせた原田は、おもむろに切り出した。

 「大変だ。東日本が吹っ飛ぶかもしれない」

 「もう少し詳しく、落ち着いて話してください」

 町田は、どうどうと宥める様に、原田に手ぶりで伝えた。

 「今朝、佐賀大の学長から連絡があって、グーグルアースで確認したら、福島原発の位置に震災後に上空から撮ったらしい写真が貼り付けてあって、1号機の冷却棟が津波でなくなっていると。3号機の冷却棟も損傷しているように見えると。このまま放置すれば、二次冷却ができないので、福島第一原発と隣接する福島第二原発まで連鎖すれば、最悪半径300キロが吹き飛ぶ計算になると言ってきた」

 「それは信頼できる情報でしょうか?」

 「この学長は、東大の講座で核物理学を俺が勉強した時の恩師で、原発の冷却系の専門家だ。福島第一原発の3号機の冷却系も設計している。福島にある核燃料の量も最新の情報のはずだ」

 福島第一原発から半径300キロというのは、東京はもちろん横浜や新潟までを含む広大な範囲であり、とても避難など指示できるとは考えられなかった。

 「それだと、福島にある核燃料の総量が菅原さんにちゃんと上がっていない可能性が高いですね。菅原さんは東工大の物理で卒論も流体エネルギーの何とかってやつで、燃料棒の重量さえ教えれば、自分でエネルギー計算して避難範囲をはじき出せるんです。それが騒いでないということは、原発官僚が情報管理している可能性があります。すぐに官邸に行って、菅原さんに面会を求めましょう」

 原田はすぐに立ち上がって扉を開けると秘書に指示した。

 「総理の秘書官に連絡してくれ。これから至急官邸で面会して総理に伝えたいことがあると」

 しばらく返事を待つと、原田の携帯が鳴った。菅原からだ。

 「急ぎの用って何? 携帯で話せることなら、このまま話してくれ」

 「実は、・・・」

 原田は、福島第一原発と第二原発にある核燃料が誘爆すれば、最悪半径300キロが吹っ飛ぶ可能性があるという情報が信頼できる専門家からもたらされたことを説明した。

 「ちょっと待て。俺が聞いている話と全然違う。俺の計算だと半径30キロ避難でいいはずなんだがな。ちょっと待ってろ」

 菅原はそう言って近くにいた誰かに原子力安全・保安院の次長を呼ぶように指示した。

 「まずいですね。情報が上がってない」

 町田は顔を顰めて、小声で原田に話した。菅原は、続けた。

 「保安院の次長を呼んだから、佐賀大の学長の連絡先を教えて、話し合って統一した情報を俺に上げるように言ってくれ」

 菅原は、それだけ言うと、電話を次長に代わった。相変わらずのマイペースである。その後、保安院から首相に上がっていた情報は、1-3号機の原子炉内にある核燃料分だけで、1-4号機の燃料プールに保管されている核燃料と福島第二原発にある核燃料を加えると、最大で半径300キロが吹き飛ぶ可能性があることが保安院の次長から恐る恐る報告された。事実は、佐賀大の学長の言うとおりだった。

 もともとキレやすいことで有名な菅原が、ブチ切れたのは言うまでもない。この瞬間、菅原は、心の中で原子力緊急事態対応マニュアルを破り捨てていた。その後、菅原は保安院からの報告は、眉に唾をつけて聞くようになった。そして、翌日から知り合いの東工大の原子炉に詳しい教授らを首相官邸に招き。助言を受けて独自に原発の危機管理を指揮していくことになる。


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