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経産相のベント実施命令
経産相のベント実施命令
陸自ヘリの機内で、菅原は空江田経産相に携帯で電話していた。
「ベントはまだか?」
「まだです。ついさっきも答えたよね」
「何やってるんだ。爆発するぞ」
そこに、後部座席の斑野が声をかけた。
「原子炉は構造上、爆発はしませんよ」
菅原は、携帯を耳から離し、通話口を手で押さえながら、キッと振り返る。
「五月蠅いな。あんたは、俺が聞いたことに答えてればいいんだよ」
菅原は、大声で叫んでいた。完全に激オコ状態だ。一瞬の間の後、菅原は前に向き直って大声で電話を続けた。
「ベントの指示は、口頭ではだめだ。文書で大臣命令を出してくれ。文書の大臣命令をきかなければ、社長だってクビにできる」
「本部長がそこまで言うなら、ベント実施の命令を出しましょう」
午前6時50分、空江田経産相がベント実施命令を発出した。法的に完全に有効な主務大臣の文書による命令である。しかし、それでも東電本社が、1号機のベントを指示することは最後までなかった。




