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銀白色の涙  作者: どらえもん
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つながらないプラグ

 つながらないプラグ


 福島第一原発に着いた電源車には、すぐに1号機の冷水ポンプの電源から配線が繋げられようとしていた。ところが、ここで問題が起きる。電源車のプラグと接続コードの型式が違うため、繋がらなかったのだ。福島第一原発は、東都電力ではなく、北東電力の管内にあるため、電力会社間の取り決めで主たる電力供給は北東電力が行うことになっていた。そのため、発電所のプラグには、東都電力とは型式が違う北東電力のものが採用されていたのだ。しかも、発電所で使う電源は電圧が200ボルトで、電源車の大半は電圧100ボルトにしか対応していなかった。

 プラグが繋がらず、電源車からの電力供給ができないという報告を受けた菅原は、舌打ちをした。

 「電力屋がプラグ一つ繋げられないのか。すぐに北東電力から電源車を送らせろ。」

 「北東電力側の道路は、倒れた鉄塔で塞がれていて、通行できない状態のようです」

 「なら海水を注入しろ。冷水ポンプが動かないなら、海水で冷やすバックアップの仕組みがあるはずだぞ」

 菅原は、迷うことなく指示した。

 「それは、ちょっと待ってください。海水を注入したら、原子炉の中を全部入れ替えて掃除してからでないと再稼働できない」

 菅原に異論を唱えたのは、原子力安全委員会の斑野春樹委員長だった。斑野は、最初の原子力災害対策本部の会議に出た後、国会記者会館でNHKや民放テレビ局の番組に次々と出演し、「原発はマニュアル通りに対応すれば安全」「最悪ベントすれば、メルトダウンは起きない」と力説して、政府が垂れ流してきた“原発安全神話”に沿った解説を繰り返していた。

 しばらく菅原と斑野の険悪な論争が続いたが、それも原子力保安院の職員の報告で無意味になる。

 「現地からの連絡で、津波で冷却塔が流されたため、海水による原子炉の冷却は不可能だそうです」

 「ならベントだ」

菅原は、途惑うことなく指示した。

 「まだ住民に避難指示を始めたばかりです。避難が終わらないとベントはできません」

 「そうか。なら地元警察から住民への避難指示が終わったら、すぐに報告を入れろ。その時点でベントを指示する。東電はすぐにベントの準備に入るように」

 住民への避難指示を確認後にベントを実施する。この時点ですでに菅原の意思は固まっていた。午後11時ごろのことだ。


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