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銀白色の涙  作者: どらえもん
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不思議などらえもん

この小説では、生存者は仮名、物故者は実名で表記します。

 不思議などらえもん


 春の訪れを感じさせる陽光が注ぎ込むキャピトル東急ホテルのレストラン。180センチ、体重は・・・の巨躯を揺らしながら、立ち上がった町田光一は、集まった8人の学生ボランティアメンバーに語り掛けた。

 「はい、注目。先日は、皆さんの協力で資金集めパーティーを恙なく終わることができました。ありがとうございます。多少の活動資金もできたので、今日は皆さんの慰労の会をささやかですが、開くことにしました、無礼講ですので、楽しんでいってください。それと、ここのアップルシナモンパンケーキは絶品ですから、おススメです。では、議員からひと言と乾杯の音頭をどうぞ」

 続いて、中肉中背で五分刈りの民主党の橋田勉衆議院議員が立った。

 「皆さん、いつも事務所のお手伝いをしていただいて、ありがとう。いつも慌しく会議に出たりしているので、ゆっくり話す時間もなくて申し訳ない。今日は、何でも答えるので、普段できない質問を遠慮なくしてください。では、パーティーが無事終わったことを祝して、乾杯!」

 拍手が起き、グラスを打ち鳴らす音がひびく。議員が席に着くと、回覧板のようにメニューが回されていく。

 「僕は、いつものパーコーメンとアップルシナモンパンケーキで」

 町田は、メニューも見ずに早速、注文する。

 「みんなも食べて、食べて。アップルシナモン、美味しいよ」

 「私も食べてみよっかな~。どらさんの食べ物に関するセンスは、リスペクトしていますから」

 と言って同じメニューを注文したのは、慶応大学経済学部2年生の田中京子だ。町田のあだ名は「どらえもん」。その名前は、彼の不思議な能力に由来するのだが、もちろん㈣次元ポケットを持っているわけではない。

 どういうわけか、町田には、将来自分と強い関係を持つことになる人を初対面で見分ける能力があった。うまく説明できないのだが、とにかくピンとくるのだ。そして、その人の未来が一瞬の映像のような形で「見える」こともある。世間でいうところのデジャビュー(未来視)というやつだ。もっとも。自分でコントロールできるわけではないし、どのくらい先の未来なのかもわからないので、やっかいな能力ではあるのだが。

 町田は、早大1年生の秋、ふらっと立ち寄った東大駒場祭でティーチインを開いていた一人の新人衆議院議員と出会った。「たった4人の政党でどうやって総理大臣になる気ですか?」と質問した町田に、その議員は「選挙で勝つんだ」と大真面目に答えた。

 ティーチイン終了後におでん屋台に連れられた町田は、「議員会館で若い人が集まる会をやっているんだ。来てみないか?」と勧誘を受けた。そして、町田はその議員の書生になった。「いつかわからないけど、あなたは総理大臣になる人だから」。そう言われて一番驚いていたのは、誘った議員本人だった。

 周囲にいくら笑われようと、町田が「将来総理大臣になる」と言い続けた政治家は、厚生大臣在任中に野党の民主党を立ち上げるといった荒業を政策担当秘書にしたどらえもんに命じたりしながら、政界を駆け抜け、30年後に首相官邸の主になった。菅原隼人首相その人である。



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