シャボン玉
公園に広がるシャボン玉をみて書きたいと思いました。
暇つぶしにどうぞ。
カーテンの隙間を縫って差し込む光で目が覚める。
誰にも責められないようにカーテンを閉めていたのにわざわざ隙間を見つけて入ってくるなんてもの好きだなと思い、ベッドから這い出る。
昨日、飲み散らかしたままの350mlの缶ビールが転がっている。灰皿の上には見慣れないタバコが途中辞めのまま虚しくつぶれている。トイレに向かうと開けっぱなしの便器がやたらと悲しそうだった。
用を済ませ、薄暗い部屋に帰るとさっきよりも汚く思えてきて一晩中守ってくれたカーテンを開ける。光に照らされたワンルームの部屋はやはり汚かった。よくこの部屋で一夜を超えたと思えるほどだ。
流しに向かい水を一杯飲むと意識がさえてきた。
「お前といると不幸になる」
この世に自分が存在する理由だった人に言われた言葉がよみがえる。水滴が落ちる音がやけに鮮明だ。
言葉をかき消すために風呂場に向かい、服を脱ぎ棄てシャワーを浴びる。人工的な温かさがやけに体にしみる。体の底から自己嫌悪が込みあがり嘔吐する。つんとアルコールの苦みが鼻と口を刺激する。排水溝に流れていく自己嫌悪を眺めながら、今日死んでしまおうかと思った。
風呂から上がり大人の王国のような部屋に戻り、髪を乾かす。無機質な音を立てるドライヤーが優しく髪の毛を優しく包み込む。窓から見える青空からは迷いなど微塵も感じない。
適当に髪を乾かした後、ハンガーにかけっぱなしの服に手を伸ばす。特に予定はないが公園に行こう。この部屋にいると何度も自己嫌悪が込みあがってくる。
鍵を開け、薄暗い廊下に出る。想像していた気温より涼しく外に出てよかったと思えた。日向と日陰の境界線を越える時はなぜか心臓が高鳴ったが、越えてみればなんてことはなった。太陽はまんべんなく降り注いでいる。草木は揺れ、独特の音を奏でる。
自分の足音が気持ちとは裏腹にご機嫌なのが腹が立つ。途中、飲み物を買おうとコンビニに立ち寄る。店員が言う定型文を聞き流し、飲み物を手に取りレジへと向かう。なぜかシャボン玉セットへと手が伸び両手がふさがる。違和感を抱かないまま、あり得ない組み合わせが成立している袋を受け取る。
公園につき、ベンチに座った後にその袋を開けても違和感はやはりなかった。
シャボン液の蓋を開け、シャボン玉を作る準備をする。思い切り息を吹くと無数のシャボン玉が目の前に現れる。日常が非日常に変わる瞬間は美しく、心が惹かれた。
シャボン玉が死ねない自分に対する当てつけのように跡形もなく次々消えていく。
羨ましく思い、手を伸ばし捕まえてみる。掴んだシャボン玉は消えずに手に残る。不確かな柔らかさは赤子のように愛しかった。
「お前といると不幸になる」
込みあがる自己嫌悪を飲み込むために手にしたシャボン玉を口に運ぶ。
今朝と違う苦みが口にしみこみ、目の前に現実が広がる。差し込む木漏れ日が心地いい。
目のまえを通る子供が夢を語る。
もう一度シャボン玉を作る。今度は消えないまま登っていく。




