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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺が連載している小説のヒロインたちが『休載しないで!』と俺の小説のファンの身体を乗っ取って陳情してくるのだけど

キャラクターって本当に自分で動くと思います。


追伸

タイトル一部変更。

言い回しなどを一部修正しました。

まず自己紹介をしよう。

俺は西条輝之。

高校生ながらネット小説をたくさん連載している。


ペンネームは『氷河三世紀』


空き時間の多くをそれに費やしてきたが、感想やブックマークがもらえればそんな苦労も吹き飛ぶというものだ。


まだ出版社さんから声はかけられてないけど、熱烈な感想とかもらえるだけでも嬉しくなる。




しかし…さすがに手を広げすぎた。

たくさんの作品を連載しすぎたのだ。


このままだと毎週更新できない小説が出てくるな。


『え?うそ?!』


人気の低めな奴から更新頻度落とそうかな?


『それなら私は大丈夫ね』

『わたくしはどうなりますの?!』


それよりストーリーが思い付いたものを優先にするかな?


『ネタが欲しいってこと?』

『でも、私たちには何もできないし…』


やっぱり好きなキャラクターの居る話は最優先に更新だよな。


『好きなキャラクター?』

『も、もちろん私よね!』


なんてさっきから脳内妄想で小説のキャラに返事させてみたけど、虚しくなってきたのでやめよう。


来週は更新全部止めて、一度頭を空にしよう。



『来週は休載します』






翌日の放課後。


俺は謎の手紙で校舎裏に呼び出された。


女の子っぽい文字だったけど、告白?

それともイタズラか?


果たし状ではないよな?


そう思っていると、あり得ないことにうちの学校で屈指の美少女である井上亜紀さんがやって来た。


まさか、手紙の主は彼女なのか?


「手紙、読んでくれた?」


やっぱりか!


「う、うん。読んだけど」


どうしよう。

告白されるの?

それとも『じゃーん。実は罰ゲームでやっただけでした!うそだよん』とか言われるの?


それならそれでネタになるから良し!


ドキドキドキドキ


「あのね、お願いがあるの」

「は、はい!」

「『クラスメイトの美少女は実はポンコツなので俺が毎日通い夫をしています』の更新をしてほしいの!」


は?


「お願い!私を見捨てないで!」


どういうこと?


そうか!俺が急に連載を休んだせいでこのまま休載になるとか思っているんだな!


「まさか井上さんがそんなに俺の小説を好きだったなんて」

「そうよ。大好きなの」


面と向かって言われるとすごくうれしいな。


「でも、どうして俺が書いているってわかったの?」

「だって、私は『理乃』だもん」

「え?」


理乃は『クラスメイトの美少女は実はポンコツなので俺が毎日通い夫をしています』のヒロインだ。


「だからね、私の小説(・・・・)の連載を辞めないようにお願いに来たの」


つまり俺の小説が好き過ぎて、自分がヒロインだと思い込んでしまったってこと?


これ、どう返事したらいいの?


「『人気の低めな奴から更新頻度落とそうかな?』とか『ストーリーが思い付いたものを優先にするかな?』とか『やっぱり好きなキャラクターの居る話は最優先だよな』とか考えていたけど、私の事はどう思ってるの?確かに人気は低めだけど、私の事が好きだからあんなに色々なことをさせるのよね?」


え?

えええっ?!


どうして夕べ考えていたことを知ってるの?



「本当に理乃なのか?」

「あなたは半裸でないと筆が進まないとか言わないと信じてくれないの?」


どうしてその事を!


「まさか家に盗聴器やカメラが…」

「ハードディスクの中身言おうか?」

「まさかハッキングまで…」

「まあ信じられないか。じゃあね、私の事どう思っているか考えて」


どう思ってるって…井上さんは清楚な感じなのにあんなちょっとエッチな小説を愛読してくれてるんだな。


「この子のことじゃなくて、理乃のことよ!」


え?

まさか心を読まれてる?


いや、このくらいは予想できるだろうから、ここは354869とか適当な数字を思い浮かべれば…。


「354869って言えば信じてくれるのね」

「マジかよ!」


いかん、本当だった。


どうしよう。

理乃ちゃん降臨とか、ええっと…。


「あっ、もう駄目みたい。だから私の事見捨てないでね!」

「あっ、待って!」


俺は彼女の肩を掴むと彼女はびくっと体を震わせた。


「な、何で私はここに居るの?どうして知らない男子に肩を掴まれてるの?」

「あっ、ご、ごめん!」


慌てて手を離す。


「ここでぼうっとしているのを見かけたから声を掛けたけど返事がないから、大丈夫かと思って肩を揺すってあげたんだよ」

「そ、そうだったのね。私、疲れてるのかしら?」


そう言いながら井上さんは去っていってしまった。





何だかとんでもない体験をしてしまったぞ。


それにしても清楚な井上さんにちょいエロの理乃の精神が入るとか、凄いギャップ萌えじゃないか。



「ちょっといい?」

「あっ、岩徳(がんとく)さん」


立ち尽くしていると今度は岩徳玲子さんに声を掛けられた。


彼女はこの学校の裏番と言われるほどの喧嘩っ早い女子生徒だ。


男でも泣かされるんだよな。

せっかく綺麗な顔立ちしてるし胸も大きいのにその性格で台無しだよ。


ん?

そんな岩徳さんが『ちょっといい?』なんて可愛らしい話し方するか?


「あ、あの、お願いがあるのですけど」


何その丁寧な話し方?

私刑前の儀式か何かですか?


かえって震えが止まらないんですけど。


「『内気な幼なじみは負けフラグを折りたいとイメチェンを図って斜め上に行く』の連載を辞めないでほしいんです」


は?


またこのパターン?


「まさか涼華(すずか)か?」

「うん!わかってくれたんだね!」


岩徳さんの見た目で微笑まれると不思議な気持ちなんだが。


「連載始まって、まだたいしたイメチェンしてないうちに休載とか、凄くショックなの」

「ご、ごめん」

「私、要らない子なのかな?」

「そんなこと無いよ!涼華は凄く一途で優しい子で大好きだから!」

「嬉しい!」


ぎゅうっ


だ、抱きつかれた。

大きい胸が押し付けられて…。


端から見たら岩徳さんに絞め殺されそうになってるように見えると思うけど。


「それにしてもどうして岩徳さんに乗り移っているの?」

「それはね、この子が『イメなな』の愛読者で、私と自分を、えっと、涼華と玲子のことね。私と自分を重ね合わせるくらいのファンだからなの」


じゃあさっきのもそうなのか!


「私の小説を読んでくれている時に精神が同調(シンクロ)するのかもね。でもそのお陰でこうやって直接お願いできたわけ」


凄いな俺の小説。

まさか、世間一般の小説がみんなこうとか言わないよね?


「あっ、そろそろ時間だ。じゃあね、更新待ってるから」


そう言って俺に抱き着いたまま涼華の意識は去り…


「な、何であたしがお前に抱きついているんだよ!」


どんっ!と俺は突き飛ばされた。


いかん、殴られる。

いや、半殺しかもしれない。


そう覚悟を決めたとき、


「忘れろよ!絶対だぞ!」


そう言って岩徳さんは走り去っていった。


まさか照れてる?

そんなはず無いよな。




とりあえず落ち着こう。


俺は壁に持たれて考えを整理する。



俺の小説に自己投影するくらいのファンに俺の小説のヒロインたちが乗り移れるらしい。


そして俺に休載しないでくれと懇願してきている。


そんなこと言われたら辞められないよな。


ヒロインたちに頼まれたからだけじゃなくて、そんなに俺の小説を好きになってくれている人がいるのだから。


頑張ってみるか。


そういえば井上さんってエロい描写のある俺の小説に感情移入して自分と重ね合わせているとか…誰にも言えないな、これ。



ドドトドドド


ん?


凄い勢いで岩徳さんが戻ってきた。


ま、まさか改めて俺を殴って記憶を消すつもりになったのか?!


「もう連載はやめてほしいですわ!」


え?


「わたくし、これ以上の恥辱には耐えられませんの!」


この口調は…


「エリザベート?!」

「気安く呼ばないでくださいまし!」


まさか岩徳さんが『俺は異世界の王女様と一緒に牢屋に閉じ込められたのでとりあえずイチャイチャする』の愛読者だったとは!


というか、あれかなりエロいんだが。


それをたった今読んだってこと?学校で?


岩徳さん、恐ろしい裏番だけど純愛にもエッチにも興味があるってこと?


「いつもいつも、あんなこととかさせないでほしいですの!」

「あんなことって?」


よし、自分の口で言わせてやろう。


「『自分の口で言わせてやろう』とか酷すぎますわ!」


しまった!ヒロインたちは俺の考えていること読めるんだった!


「連載をやめていただくか、続けるならあの牢屋から出してほしいですわ!」

「いや、あの狭い中で二人っきりだから面白いのであって」

「だからっておトイレの話が多すぎますわ!」

「まあ、読者受け良かったし」

「だからって何度わたくしにお漏らしさせましたの?」


これ、誰かに聞かれたら凄い誤解されるな。


「とにかく、更新するならもっと普通の場所にしてほしいですわ」

「それでは主旨が変わるんだけど」


牢屋から出たらタイトル詐欺だよな。


「だいたいいつもいつも寸止めですのよ。どうして最後までできませんの?」


おい



それはR15指定だからだ。

ギリギリのラインで踏みとどまるのは仕方ないんだよ。


「そうですわ!いっそ打ち切りにして『18禁版』として再開してほしいてますわ!」

「できるかっ!」


なにこいつ?

アブノーマルなのは嫌だけどエッチは好きとか?そんなキャラ設定してないぞ!


「そんなことありませんわ。よく後書きで『キャラクターが勝手に動いてくれる』と書いていますでしょう?」


それはそういう意味じゃ…そうなるのか?


じゃあ何?

うちの(ヒロイン)たち、マジで勝手に動き始めたってこと?!


「あっ、時間ですわ」


ささっと俺は岩徳さんから離れて影に隠れる。


「…ん?どうしてまたここに戻ってきたんだ?まあいい。気分転換に『したロマ』読んでから帰るか」

「そ、それはだめっ!」


俺は物陰から飛び出して岩徳さんのスマホを奪った。


「てめー!何しやがる!」


しまった、つい反射的にやってしまった。


だって『したロマ』って『下着を履いているか毎朝確かめてほしいお嬢様とのロマンス』って俺の小説で、ヒロインが毎朝挨拶代わりにスカートをたくしあげて下着を見せつけるんだよな。


このヒロインが乗り移ったらスカートを捲り上げかねない。


「やめろ!画面を見るな!返せ!」


襟元を掴まれてスマホを取り返される。


「見たのか?それなら記憶を消してやる!」


拳を振り上げる岩徳さん。


俺は思わず…


「岩徳さんって、氷河三世紀の作品好きなの?」


ピタッ


「やっぱりそうなんだね。実は俺もなんだ」

「おお、まさか同志に出会えるとは!」


『おお、心の友よ!』みたいに言われた。


「あたしが氷河先生の作品の大ファンとか絶対内緒にしろよ。イメージ壊れるからな」

「うん、わかった」

「やっぱり氷河先生の作品の中でも『したロマ』は名作だと思うんだ。あのヒロインの名台詞『おはようの替わりに下着を見せているのですから、おまえさまもおはようの替わりに私の下着を誉めるべきですわ』って言うのが…」


それ言うか?

言っても恥ずかしくないくらいのファンってことなのか。


「…おまえさま」


は?


岩徳さんは上品そうな仕草でスカートの縁を摘まんで一礼すると、そのままスカートを捲りあげた。


しまぱん!


「やっとお会いできましたわ」

「優衣香か?」

「ふふっ、下着を見たらわかるでしょう?」


いや、それは岩徳さんの下着だから。


というか、岩徳さんがまさかのしまぱん。


「この方は私に自分を重ねて、小説に出てきた下着は全部持っていますのよ」


ナニソレ


「市販されていない変わったのもあっただろ?トカゲ柄とか」

「この方は自作していますわ」


どんだけ好きなの?!

それとも裁縫得意って所で驚くべき?


いかん、岩徳さんに凄く親近感湧いてきた。


しかし、小説を読むだけじゃなくて印象深いセリフを言っても乗り移れるのか。


「それで、私の要望ですけど」

「はい」

「たまには履いてないのもいいかと思いますの」


却下ですっ!

お読みいただきありがとうございます!

感想とかいただけると嬉しいです!

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