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最後に笑うものが最もよく笑う、そして山雨来たらんとして風楼に満つ

 挿絵(By みてみん)


「生清水 魁だわぁ〜!!」


室内に雪海さんののろけた嬌声が響く。


なんやかんやでぐちゃぐちゃになってしまった公園の泥にまみれた俺たち3人は現在、雪海さんによるスペシャルフルコースが夜中の2時を回ったというのに振舞われている。


しかしなんと元気なことだろうか、桜田さんも、招待(拉致)された清水 魁も疲労困憊な顔をしながらも、ガツガツと食べている。


あの後俺と桜田さんはそのまま、コイツを家に返さずアジトまで連れてきた。

ずっとここまで来る間、首根っこをつかんでいた桜田さんはだいぶ右腕がお疲れのようで、左手でスプーンを握るというまぁまぁ器用な食べ方をしている。


そもそももう少し俺が熟考して行動していれば、こんな手間のかかることにはなっていなかった。幾ら決定権があっても独断行動がすぎたのではないか?今度からはもっと作戦を練って協力を仰ぐべきだな。

桜田さんはなんだかんだ文句言いながらも俺の意見を尊重してくれていたし、もっと信頼するべきだ……雪海さんはまだアレだけど。


しかしまぁ、初めて異能力を見れたことだし行ってよかったとも少しばかり思うところはある。



………そして、俺に発現したあの能力。



あれは結局なんだったんだろうか。俺ので間違いはないと思う、いや分からないが。俺の影から出てきて俺のことを守ったのだから俺のだろう。


もしかしたら記憶を失う前に手に入れていた能力が覚醒したとかそんな都合のいい話なのかもしれない、俺はそれをラッキーと受け止めていいものなのか。


「太郎!何ぼーっとしてんのよ!あんたのお手柄なんでしょう!?よくや捕まえたわ!うふふふ、合法的に清水くんにご飯を振る舞える日がくるだなんて!私今、とても幸せ!」


合法的ではありませんけどね?と声に出そうとした言葉は呆れるほど嬉しそうな雪海さん表情に耐え切れず黙殺された。


清水 魁はというとそんな雪海さんのことを変態を侮蔑するように見ている。


初対面だというのに失礼だと思わないのか、隠す気はないのか、そんな注意は文字どおり眼前の確かなる変態を目の当たりにして、毛ほども自分でも思わない。


それにしてもこれじゃ、完全にターゲットじゃなくてお客さんと同じような扱いだな。その位の扱いでも逃がすことはないし、やられることはないんだろうけど。


「俺は何もできませんでしたよ、桜田さんがほとんどやってくれました。」


前半は確かに無能力で清水 魁の能力をかいくぐり、説得ができるかと思ったが最後には全てが桜田さんが持って行ってしまった。


「はっはっは確かに!俺がいなきゃありゃ死んでたな!なぁ、清水?」


「…………………どうだろうな。」


どうして清水 魁なんかにいきなり話を回したりしたのかと思ったら、桜田さんの顔は完全に赤らんでいてアルコールが回っているように見えた。


「そうなのー!そんなに清水くんそんな強いのー?!あはは、桜田、もっと飲んじゃいなさい!ついでに若い二人も飲んじゃいなさーい!」


「俺は未成年なので呑めませんよ、雪海さん大分酔ってます?」


ダブルミーニングでその要求は呑むことができない。

よく見ると、雪海さんもだいぶ酔ってるみたいだ。じゃなきゃ、ここまで彼女が品のないことをしないはずだ。


「酔ってらいわよ失礼ね!どうせ私達違法団体なんだから法律を出すなんてナンセンス超えてカオスよ!」


「桜田さんも似たようなことを言っていたような。僕はそれでも守れる部分は守るんです」


「生きにくそうな性格してんな」


「お前に言われたくないんだけど」


清水 魁が意地の悪いことを言ったが、すぐにバクバクと目の前に出された食事にまたありついた。

そんな中着信音が鳴り響いた。


プルルルル!


ピッ!


「あらぁ?はーい!もしもしー?雪海 宮古20歳くらいですぅ。彼氏はいません。もしかして、未来のパートナー?」


『残念だが、雪海俺はお前の未来のパートナーではない。』


雪海さんがスマートフォン越しにどぎつい自己紹介をしてから数秒も経たずして赤らんだ顔は真っ青に引っ込んだ。


「ど、どうして、夏山くんが?……あまりそっちから電話かけてこないでしょう?」


『桜田の携帯に何度も電話したが、出てこなかった。十五夜は既に寝てるだろう。子機も出なかった。太郎はそもそも電話を持っていない。苦肉の策だ。」


「へぇ、羊頭狗肉の策なのね。……あ、あぁいえなんでもないのよ?ちょっと今お酒飲んでて。」


『確かにお前は羊頭狗肉だな。酒を飲んでるのもすぐわかる。夜中にボスから呼び出しがあってな。もう少しでそっちに着く。太郎の、その、なんだ、お祝いは明日のほうがいいか?』


「うふふ、別に今でも構わないと思うけど?あなたの褒め言葉一つで彼、5年は生きられそうじゃない?……やっぱり、明日にしてくれる、そういえば今お客さんがいるの忘れてたわ。」


『そうか……例の猫殺しの犯人か?』


「いいえ?若き天才ピアニストよ。」


『なんにせよ、明日にするよ。盛大に祝おうじゃないか。……じゃあな、雪海。あまりはしゃぎすぎないようにな。』


「あなたも働きすぎて死んだら元も子もないんじゃなくて?……今日は早めに寝たほうがいいわ、おやすみなさい。」


『あぁ、おやすみ。』


電話口の会話はひと段落したらしく、ホッとしたようにため息を吐いた後、嬉しそうに彼女はこっちを向いた。


「まだまだ、夜はこれからよー!」


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