運命の出会い
本日、オールしてて、最近話題のなろうってなんだろって思ってきました。楽しいとこですね。
「くそ!あと1軍で救えたのに!!あーナーネス!」
相手はどうやらハッカーらしい。
異様に手が伸びた規格外の化け物軍団に一網打尽にされ、僕らの軍陣と報酬は露と消えてしまった。
戦闘機を下りて、ロビーに戻るとアンチウィルスソフトが真っ赤になって警告してくる。
「はいはい、勝手に修復しといて。」
手を振りながら装備を外しては捨ててマイルームへ歩いていく。
脱ぎ捨てた装備を律儀に片付けるのはSAI
ここでは喋らず意思を示さないシステムロボットをいう)
ハッキングにやられたゲームギアゴーグルを検査中の完全人工知能のCAI(別名:エル)が
いつのまにか同時進行しながら朗らかに僕に呼び掛けてきた。
「おや、主人。これはかなり珍しいもの見たいだわ~(笑)てっきりスパムかと思ったけど、
どうやら新手の懐古ゲームを無料配布するキャンペーンだったみたいだわ~(笑)
まったく驚かせやがって。ふざけんなよ。」
所詮学生の微々たる収入で買える激安CAIだ。
かつて遠い祖先の惑星で権力を持っていた組織が最初に作ったことからその名前が付いた。
言語設定もジェンパディー語ではなく、
第2惑星圏の言語だったためわざわざ交信所で料金を払ってパッチを取り寄せた。
見た目こそ死に物狂いで徹夜して勝ち取ったスキンのおかげで容姿端麗だが、
流行の民族衣装(使用人バージョン)に身を包んだ美少女からは
想像もつかないドスの効いた音声と、
荒っぽい口調だけはどうにもできなかった。
「で?その懐古ゲームっつーやつの詳細は。
エルは私語が多過ぎ。端的に。頭痛いから早く。」
嫌味っぽくひねくれた口調でわざそっけなく返答し、
足早に歩くのはイライラしているせいだ。
さっき宇宙戦争ゲームでクソハッカー集団に煽られ
賞金を目の前で見せびらかすように略奪され、
わざとスパムのお土産付きでレア報酬をぶん投げられたことが怒り心頭なのだ。
そのスパムは実はスパムではない。
強力なスパム信号を出し、警告するアンチウィルスロボットを発動させ気を引き、
「基本無料のゲームでした~試しに遊んでみませんか?」
なんていう嫌な気の引き方をする一種の宣伝。
しかも遊ぶとスパム発信者に若干の報酬が入るため、
憎きハッカー集団には一銭たりとも与えたくない。
最近毎日のようにこの手のゴミ報酬に付随させて投げつける行為が横行し、
辟易しているところだが不労所得で味を占めた若年層はアカウント強制消去させても
ゾンビのように復活してくる。
毎度毎度、懐古ゲームなんてつまらないものはやっても意味がないので捨てている。
ポズティ(通貨)が稼げるわけでもないのに。なぜ人はハマるのだろうか。
現代のGalaxia(仮想世界)に圧倒的に画質もポリゴンも劣るはずなのになぜ…?
「ご主人、今回の懐古ゲームは今までのとはわけ違う。『The last of the summer』
原題は太古昔の言語で書かれてて難しくて読めない。これ、個人が作ったらしい。
しかも作者は全くの無名。完全に趣味で作ったもので売れ数はわずか50本くらい。
舞台はとある惑星で夏を体験するゲーム。
『素晴らしい絶望と幸福の味をどうぞ。私はあなたにまた会いたい。あの夏で待ってます』
説明たったこれだけ!?…なにこれ美味しいの?うんk(笑)」
「へぇ・・個人製作の恋愛ゲームねぇ。どうせ今までのよりも酷い出来なんだろ?
そんなの早く消去だ消去。ついでにそのゲームの配信元に興味ないから
二度と送るなって言っといて」
データを検索中のエルを横目に空中に映し出されたゲームパッケージを見た時、
動悸のような錯覚に陥って、目の焦点が一瞬合わなくなった。
これはなんだろう。何かがある。本能的にやばい奴だ。
ホラーゲームに似た逃げ出したくなるような
絶望と感動的な物語を読んだ時や誰かと笑い合う時に感じる暖かさ。
後ろ向きの誰かが僕をゲームの中から待っているような気がした。
寒気にも似たそれを感じて怖気づく。
最後の惑星と言われた第3惑星のジェンパディーに住む人々には
多少本能的危険回避の予知能力がある。
ちなみに起死回生の第2惑星は意思伝達に長けた能力、第一惑星は消滅してしまったため、
もう今となってはわからない。太古の昔からあった第一惑星の事は古い文献やデータが
壊滅なほど消滅しており、未だ未知に満ち溢れている。
「ご主人、これ消去できないわ(笑)遊ばないと消去できませんって。凄い。
こんなことされたら意地でも消去したくなるのがエルちゃんだう~(笑)ぶっ潰す!!」
可愛い和装メイド服の少女から酒でしゃがれた声で暴言を吐くエルは、
相当本気でシステムに介入しているゲームに腹を立てているように見えた。システム同士、
互角に戦いたいらしく、物理アタックでゲームを壊そうと手のストレッチをしている。
次の瞬間激しい音共にエルの体は宙を舞い、
謎の懐古ゲームに痛恨の一撃をヒットさせたかのように思えた。
「なに…!?貴様、まさかこの私に勝とうなどとは!ちょ…ご主人、見ないでくれ。」
完全にそこらの雑魚より悲しい捨て台詞を吐き捨てて、
床にたたきつけられて俯きがちに悔しがる美少女のちぐはぐな言動に笑いをこらえつつ、
すらりと伸びる足がなんとも艶美でそちらも薄目で見つめる。
咳払いをして明日の方向を見つめた時、エルは立ち上がり
猫背で悔しそうにお辞儀をしてきた。
「もうちゅかれた…今日はお暇させていただき候…おやすみなさいませ。我が主。ではの(´・ω:;.:..」
そう言うとエルはお休み宣言と共に消えた。
相当強い保護プログラムで守られているらしいそのゲームは
エルがいなくなっても無反応のまま依然そこに存在していた。
エルに消去できないということは僕のシステム管理ロボットたちにこれを消去することができない。つまり、後2時間後に開催されるフェスマッチにも参加できないということ。
それは稼げないということ。僕の本業は学生ではなく、
Galaxiaのゲーム上でプレイヤーと戦いそれで収入を得たり、
伸びしろのあるプレイヤーを当てる賭博に興じ利益をどぶに捨てる
ごく普通の中間プレイヤーである。容姿も良くない僕に当然投資する人もおらず、
うだつの上がらない人生に不満があり葛藤しながらを悶々と過ごしている最中である。
稼げないとなると、このクソゲーをどうにかこうにか終わらせる必要がある。本当にクソだ。
エルがいない間は少し怖いが、いざというときは来てくれる。エルはそういう奴だ。
何かゲームの中でバグがあっても問題はないはずだが、
先ほどから僕の本能が、信号を送ってくる。
行くな。行くな。
しかし、このまま放置するわけにもいかず、
ゲームギアゴーグルを少し震える手で装着して嫌な汗を拭ってゲームに触れた。
起動に入る暗闇の中で一瞬だけ誰かの叫び声がした。
わー。。。形になるかなぁ。ぐだったらすみませんといいつつ、もうぐだってる。おやすみ~寝ます。




