転移と若返り
目を覚ますとそこは暗闇だった。だが煩いエンジンの音と揺れていることから何かの乗り物の中のようだ。
そして周りには人の気配があった。詳しい数は分からないがかなりの数だ。
そして色々な声が聞こえた。
「あいつの言っていたことは本当だったのか!」
「畜生!HDDのデータ消して来ればよかった!」
などの言葉をいう者もいれば、泣きじゃくったり訳の分からない奇声を発している者もいた。
そんな中で十数分過ごし、周りも少し落ち着いてきた時にエンジン音と揺れが収まった。
そしてしばらく経つとドアが開いた。そのドアの前にはヘルメットと軍服を着た兵士が立っていた。
「おい、お前たち!目的地に着いたぞ、さっさと降りろ!」
兵士は少々苛立ったように言った。
指示通りに乗っていた乗り物から降りると、兵士は運転席に戻りどこかへ行ってしまった。
取り残された俺はどうすれば良いのかわからずとにかく辺りをうろついてみた。すると少し違和感を覚えた。いつもより体が軽いのである。不思議に思い自分の手を見てみるとそこにあったのはしわだらけの老人の手ではなく若々しい若者の手だった。それに驚いた俺は自分の顔を触ったり、周りにあった水たまりに顔を映したりした。
そこに映っていた顔、そして手触りからこれは自分の20代の時の体だと確信した。だが、同時に疑問が沸いてきた。なぜ20代に若返っているの
かと。これもあの薬の力なのだろうか?
そんな事を考えていると、
「おい!あんたらが今回の雇われ兵か?」
その声がする方向を向くとさっきの兵士とは別の兵士が走って来ていた。
「いや、遅れてすまない!ちょっとトラブルがあったもんでな、本当はトラックが着いた時にはスタンバイしとかなきゃならなかったんだが…
まあそれは置いといて俺に着いてきてくれ、あんたらには色々と手続きをしてもらわなきゃいけないんでね。」
そう言うと兵士はさっき走って来た道を先導するように歩き始めた。