セールストーク
その男の外見はよくいるサラリーマンという感じだった。スーツを着て眼鏡をかけ、ビジネスバッグを持っていた。そんな男に突然話しかけられたのである。
「どうも、こんにちは!あなたは見たところ生活に困っていらっしゃるようですね!」
いきなり陽気な口調で話しかけられ、驚いている俺に向かって男の口から次の言葉が飛び出してきた。
「見たところあなたはお金に困っているようだ。そこであなたに割のいいバイト...いや、ちゃんとした仕事を
紹介致しましょう!」
この男は何を言っているのだろうか。仕事だと?こんな老いぼれにできる仕事なんてものがあるのか?
しばらく考えた結果俺はある結論に行き着いた、こいつは俺をからかっているという結論に。その結論に行き着いた瞬間、俺の心を見透かしたように男が言った。
「私があなたをからかっているとお思いですか?もしそう思っているのでしたら答えはノーです。私はあなたを正式に雇いたいのですよ。勿論、双方の合意が必須ですので、無理にとは言いませんが。」
「わ、分かったよ、仕事の内容と報酬によっては考えるさ」
俺は男に若干気圧されながら言った。すると、男が真剣な表情で仕事についての説明を始めた。
「分かりました。では最初に仕事の内容についてです、まず最初に断っておきますが私は決してあなたを
バカにしたりしている訳ではありません。また、騙そうとしている訳でもないという事を理解して欲しいのです。」
「ああ、分かった。余程のことでもない限りお前の言うことを信じるよ。」
「ありがとうございます。では遠回しに言っても回りくどいだけなので単刀直入に言います。あなたには...」
男が一呼吸置き、そしてこう言った。
「戦争に参加してもらいます。」
「はぁ?」
俺の口から、思わずそんな声が出ていた。