1/7
始まり
俺は今、人生で一番不幸な時を過ごしている。明日もそうだし、この先何十年とこの状態が続くかもしれない。
俺はいわゆるホームレスというやつだ。戦争の中生まれ、その後何年も「国に尽くせ」と言われて育った。
やがて戦争は終わり、自分が働ける会社を見つけてそこで何十年も働いた。そして俺は定年退職をして、さてこれからどうするかと思っていた矢先に、ギャンブル好きな友人の借金の保証人になるという契約書に判子を押してしまった。案の定友人は夜逃げして払えもしない大金を俺に押し付けてきやがった。俺はその借金を返すために身の回りの物を売った。家、家具、趣味の物、最低限の衣服以外は全てだ。そんなこんなで、俺は明日の飯のおかずを毎日考える生活から、今日飯にありつけるかどうかを心配する毎日になってしまった。
仕事をしようと思ったこともあったが、身元も分からないような爺さんを雇ってくれる場所など何処にも無かった。そんな状況の中に、俺はある男と出会った。