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 冷への報酬が2億と聞かされ周りにいた冒険者にも聞こえていた。

 耳を疑う金額である。

 とても一般の冒険者には届かない破格の額。


「おい、聞いたかよ、2億だぞ。冷は町1番の大金持ちとなったぜ!」


「凄え奴だぜ。まさかこんな短期間でここまで金持ちになるとはな」


「このペースで行くと近い将来はとんでもない金持ちになる。商業ギルドに登録して金貸しだって出来るレベルだ」


 冒険者たちは冷をうらやましくなり噂話を始める。

 強くなりたい、金持ちになりたい、と言うのはこの世界の男も同じであった。

 冷の才能に惚れ惚れもするし、憎みもする。

 冷の外見はお世辞にもイケメンとは程遠いし、女の子にモテたこおもない。

 残念な程酷いってわけではないが、端的に言って普通な顔だち。

 体格も普通で痩せていてもなく、太っていてもない。

 良く言うと、普通な人であるが、悪く言うと何も特徴のない外見となる。

 それでも冒険者は冷に嫉妬していた。

 男としては外見には嫉妬しないが、才能には嫉妬するものだろう。

 強くて、金持ちとなれば、何も才能がない男からは、いいなぁと羨望の的となる。


 ギルドには冷を見たさに町の女の子が潜んでいた。

 冒険などしないから居ても意味がないのだが、冷に近づきたいという一心で集まった。

 噂が噂を呼ぶとはこの事であろう。

 近場の町の娘も集まっている。


「キャー、あれが冷様よ!!」


「素敵!!」


 当然に町の女の子にも噂は広がる。

 女の子達は冷に憧れて近づきたいと思ってるのであるが、それは叶わない。


「なんだよ、なんだよ、うるねえなぁ〜」


 常にアリエル達が周りにいて囲んでいる為、近寄れない雰囲気なのだ。


「……」


 遠目に見ていてキャーキャーと言われているに留まった。

 犯人はリリスである。

 リリスしか女の子達に冷たい視線を送る者はいないからだ。

 女の子はリリスと目が合うと、その凄みに圧倒されて足がすくんでしまう。


「怖いわね……」


 しかもリリスは淫魔らしいと知れば、もう冷には近づきがたいとなる。


「リリスったら、女の子を睨んでいます」


「やめなさいよリリス。たかが冷の追っかけでしょ。無視したら?」  


「追っかけだがなんだか知らないが、最近特に多い。迷惑なんで睨んだ」


「勝手に睨むなよな。あれは俺のファンの娘だよ。睨むのは無しでお願いします」


(困ったことにリリスは俺のファンを威かくしちまう。せっかくのファンが減っちゃうよな)


 よって冷の周りには男の冒険者はいるが、女の子達はいっこうに増えないのであった。

 

(俺ってやっぱりモテないようだな。残念だけど)


 とにかく商業ギルドに行って見ることにして冷は、


「ユズハさん、商業ギルドに確認に行きますから、直ぐに戻って来ます」


「わかりました」


 返事をするユズハを待たせて冷は隣の商業ギルドに出向いて、


「こんにちは冷です」


「ど、ど、どうも冷さん!!!!! 今日は信じられない金額が、2億もの大金が冷さん宛ての口座に入りました。いつでも引き出しできますから……」


 来店するやパトリシア店員が大慌てで対応する。

 驚いてしまい声もいつもの美しい声ではなくなっていた。


「どうしようかな、こんな大金あっても困るよ」


(日本なら大金持ちだろう)


「そ、そ、そうでしょうね。まだ若いのに凄いです。ギルドも驚いてます」


「それならパトリシアさんに全部あげようか?」


(嬉しそうだから、ちょっと言ってみた。それに美人だし)


 冷は綺麗なお姉さんなので、本当にあげてもいいかなと思い言ってしまった。

 言われたパトリシアは、


「アハハハ、冷さん、冗談はよしてくださいね。もちろん欲しいですけどね。お姉さんをからかってもダメよ!」


「からかってないよ。本当にあげますよ全額さ」


(要らないのかな)


「えええええっ!!」


 ギルド店内でパトリシアは気絶した。

 いくら冗談でもパトリシアには刺激が強すぎであった。

 倒れたパトリシアに申しわけなく、


「また使う日に利用しに来ますので……」


 とパトリシアにお礼だけして冷は商業ギルドを去っていった。


(まいっなな。まさか気絶するとは。悪気はなかったのだけど、今度から気をつけます)


 つい先程、王都から知らせがきたばかりであって、内容には腰を抜かしそうになる。

 ガーゴイルを倒したというわけで、破格の金額にも納得した。 

 再び冒険者ギルドに戻るとクエストをユズハ店員から教えてもらう。


「冷さん、パトリシアから確認出来ましたか」


「はい、ちゃんとパトリシアさんに会って確認しました。少し驚いていたみたいですが」


(まだ倒れてるかもね、ごめんなさい)


「それは後で聞いてみます。それと大事な要件であるクエストですが、こちらはどうかな?」


 ユズハ店員がみせたのは経験してきたクエストランクよりも上のランクである。


クエストランク6

ワームズの討伐

報酬 1匹 4000マリ


 ランク6とあって、1つ上のランクだとわかった。

 ランクが上がるにはギルドの許可がいる。


「あれっ冷、ランクが6に上がってますが、許可は出たのかな」


「本当だ、6になってる」


「どうなのかな?」


(今までは5だったんだよな。6がどの程度なのか)


「許可は出ましたし、冷さん達なら特別に許可するとのこと。一般的にはまだギルド登録して間もない冒険者には禁止されてますが、一般的の範囲には該当しない特別なパーティーと判断しました。良かったですね」


 ユズハ店員に一般的ではないと言われた冷は喜んでいいのか、悲しむべきなのかとなり、


「あ、ありがたく思います」


 素直に受け入れることにして、クエストの中身を教えてもらう。


(俺ってギルドの上の方から、期待されてるようだから、頑張るとしよう)


 いい方向に受け取ることにした。

 

「あの〜ユズハさん、ランクが5と6には差がどれほどあるのかしら?」


 アリエルは気になって質問した。

 ユズハ店員はクエストランク6の内容を詳しく教える。


「ランク6と5には差があります。それは4と5の間でも説明した通りです。よって先ずは自分達の命を大事にすること。かなり危険性はあります。はっきり言って、ウチのギルドに登録している冒険者でもランク6となると逃げ出してしまいます、恐らくは」


「逃げ出すレベルか」


 険しい顔で語りかけるユズハに冷はなぜか笑顔で、


「その方がこの子達を鍛えられるから良いんです。強い魔物と戦えばそれだけ経験値を積めますから。嬉しい限り」


(適度に高いと鍛えられる。ハイペースは禁物。6ならいけるかもな)


 冷はランク6を嬉しいと表現してしまい、ユズハとしては魔物の説明がしずらいのであった。

 ここは少しでも怖がってもらいたい。

 せめて緊張感をもって欲しい。

 それでないと他の冒険者にしめしがつかないのである。

 

「へぇ〜、鍛えるのが本当に好きだなお前は」


 リリスがあきれる。


「冷氏は自分を鍛えるのに満足できずに私達まで鍛えて楽しんでます」


「それは言えてる」


 アリエルもミーコに賛成した。


「アハハハ、鍛えて満足してもいいだろう。俺は楽しんでるんだよ」


(現に強くなってきている)


「そこは否定しないのね」


「冷らしい」


 冷の変な性格にユズハは、


「アハハハ、ずいぶんと仲の良いパーティーですこと」


「ただの変態だよコイツは。ユズハに教えてやろうか、コイツの正体を!」


 リリスはユズハに真実を教えよつとした。


「やめとけ、リリス!!!」


(ユズハさんには言うなって!)


 冷はリリスの口を押さえつけた。


「ううううう……」


 苦しそうにもがくリリス。

 それを無視してミーコがクエストの説明をと、


「説明お願いします」


「ま、魔物の説明をします。今回の魔物はワームズ。特徴としては巨大なイモムシと言えばわかるでしょうか。とにかく大きくて、そして土の中に潜り込んで生息しています」


「イモムシ!」


「キモいかも」


 やはり虫系は苦手。


「土と地上を行き来出来るってことだな」


(モグラ叩きのようにして頭を叩いてやろうか)


 モグラ叩きはゲーセンなどにあるゲームである。

 それとはもちろん違うが、冷レベルまでくると、違いはないとなる。


「どうするのよ!」


 アリエルは急に慌てだす。  


「冷氏、今回は止めましょう!」


「なぜ?」


「なぜ?って当たり前です。巨大な虫なんて嫌です」


 ミーコも嫌だと言った。


「我慢してよ。クエストなんだからさ。相手は選んではダメ。苦手とかなくしておこう」


(どんな相手にも戦えないとダメよ)


「チェッ、仕方ねえな」


「リリスよ、よくぞ言った」


 リリスはワームズのクエストを受けると言った。


「リリスは偉い」


「リリスを尊敬します」


 残った二人は素直に尊敬した。


「はい、土の中に潜んでいる時は攻撃出来ませんから注意してください」


「なるほど。攻撃のタイミングが大事か。ありがとうございます。それでは行ってきます」


「お気をつけて!」


 軽く挨拶して行ってしまう冷達を見てユズハは、考えさせられた。

 歴史上の伝説的な人物達と関係している3人が々時代の同じパーティーのメンバーにいることに。

 そんな確率を考えたら何億分の一、いや何兆分の一、いやそれ以上の低い確率でしかあり得ない。

 いったいなぜなのかと深く考え込んでしまう。

 そんなのは全くお構いなしな冷は町を抜けて冒険に旅立つ。

 

「さあ、みんな、またクエストを張り切っていこう!」


「別に張り切っていこう、とはなりませんが。相手がイモムシと聞いてかなり引いてます私」


 アリエルは冷とは逆にテンションが低め。

 イモムシと聞いて気味が悪いと感じたからだった。

 それを聞いたミーコは、

 

「魔物だから気味が悪いのは当たり前ですアリエル、女神だからといって可愛くしても戦って」


 女神でも容しゃはしない。

 ミーコに言われて、なにも言えなくなるアリエルは、


「か、可愛くしたわけじゃないわよ」


「うるさい、うるさい、早く歩けっての!」


 ここでアリエルとミーコの間に入ったのがリリスであり、面倒くさく感じたからだった。

 やがて目的地付近に到着した。

 当たりは柔らかい土が覆っていて、ユズハ店員が言った戦いになりそうである。


「一面が土」


「広い」


「ここら辺がワームズの出現地のようだ。まだ姿は見えてないな。話では地中に潜んでいるようだから、そこを気を付けてくれ。今回も先ずは君たちが戦うんだ」


 冷はやや危ないなと感じつつも、これも成長して欲しい為に戦わせることに決める。


(魔族とも戦えたのだ。きっとやれるだろう)


「わかったわ冷氏、あなたの考えが」


「ミーコ、そう言ってもワームズは見えてない……」


「アリエル、ワームズはきっと地中に隠れてる。私達がもっと近くにくるのを。じっと待ってます」


「近くにいくのは危険てことだわ。それならばこっちも遠くからワームズが出てくるのを待ちましょう」


 アリエルはミーコとリリスに持久戦をしようと持ちかけた。

 アリエルの考えは、決して間違ってはいない答えであった。

 しかしミーコは違っていた。


「いいえアリエル、ここはこっちから相手の中に飛びこびましょう」


「そしたらワームズの思うつぼだわ!」


「そうだぞミーコ。死にに行くようなものだ、やめとけ」  


「素早さのある私なら可能です。最初に私がワームズのいる付近へ行きますから、ワームズが出てきたらそこでリリスとアリエルで応戦して」

 

 ミーコがおとり役となりワームズを逆にはめてカウンター攻撃する作戦であった。

 とてもリスクの高い戦法であろう。

 しかしミーコの決意を感じて、


「……わかったわミーコ」


「……無理するな!」


 アリエルとリリスは危険を覚悟で頷いた。

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