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アリエルはその昔、女神と
勇者は友達だったと話した。
最初に説明しなかったのは、冷に教え過ぎると混乱するからと思った。
現に冷は混乱していた。
ややこしいくてこの手の話は苦手であった。
「まさか女神が出てくるとはな。アリエルも無関係ではないてことさ。でも勇者はどうやって知り合ったんだろうな女神と……。俺はその……アリエルとは転生させられてきたから、知り合ったわけで、勇者も転生者かな?」
(俺が勇者ではないだろう)
「そこはギルドでもハッキリとはわかっていません。歴史では謎となっています」
ユズハも不明確だとした。
しかし勇者なら魔王にも対抗できるのは知られている。
人族が生き残れたのは勇者の力が大きかった。
だが残念ながら勇者の血筋は滅びたとされている。
「伝説によると転生者ではなかったとあります。勇者はある特殊なスキルを持っていたようでして、それは交神スキル」
「交神とは?」
交神という聞き慣れない言葉に冷は戸惑う。
(どう考えてもこの世界には電気通信機など存在しないし、電話もないだろう)
「神とも会話出来るスキルで、普通はあり得ないですが、勇者だけはそのレアなスキルで女神とも会話をしていたと伝説ではのこっている。恐らくは交神しているうちに仲良くなり、気が合う仲になったと。でもあまりの酷い状態に、このままではヤバイと思ったようです」
超レアなスキルであり普通は習得するのは不可能なスキルである。
「女神も危機だとわかったてことか……。そりゃー魔王が出てくるわ、絶滅死かかるとなれば放っておけないよな。アリエルのご先祖さまも困ったわけだろ」
(無数に異世界はあるのだろうから、困った時の為に交神スキルを授けたのかもな)
「はい、非常に困ったことに魔王は時空魔法スキルを使用できたとありまして、別の異世界に移動が出来たとかで、全ての異世界が絶滅まで至ったのです。破壊に破壊を尽くしてめちゃくちゃに異世界を壊したもようです。それで女神はもう見てられないとなり、勇者に交神を行い、女神が自分で転生する道を選んだと記されてます」
「女神がやって来たわけか。まるでアリエルと一緒だな」
(歴史は繰り返すっていうからな。それにしてもアリエルの前の女神はすげぇよな。アリエルと大違いだ)
「転生の仕方が違いますが!!」
無理矢理に転生させられたとは言えないアリエルであった。
「それでどうなったんだ?」
「勇者に魔王と魔人の強力な魔物を封印させる魔法スキルを授けました」
「大昔の女神は転生してもステータスは維持出来てたとなるな。アリエルは転生したらステータスが初期設定化だろ。そこに違いそうがあるんだよな」
(どうしてアリエルはダメなんだ)
「どうやら大昔の女神先輩はステータスを変わらずに転生を自由に行き来が出来たということになりますね。私にはどうしてなのかわかりませんが」
「封印スキルを授けて魔王らを封印したのか勇者は?」
「最初は勇者と女神の間でケンカが勃発しました。なぜかと言えば、勇者のせいで魔王や魔人らが自由に動けるようにしたとあって、勇者を罵倒した。勇者も反撃しだして、女神にちゃんと異世界を管理しろと言いのけた。それで勇者と女神は大喧嘩になる。でも最終的には争ってる場合ではないとなり、勇者に封印魔法スキルを授けておく。そして淫魔に対して言いつける。淫魔がしていたとされる隷属スキルでもう一度魔王や魔人らを隷属してくれと迫ったのです」
「どうなったんだ、私のご先祖さまは?」
リリスは気になったのかアリエルに言い寄る。
「そこで淫魔と勇者が仲良くなり、和解してくれたら良かったのだが、両者とも維持の張り合いとなり、くだらないプライドが邪魔する結果となる。お互いを認め合ってる部分もあり、友達だがライバルでもあったのです。となると淫魔は隷属などするかと勇者と女神の与えたチャンスを棒に振るいました。その為、勇者は魔王に対して封印魔法スキルを使い、見事に成功した」
結局は勇者と魔王は戦うことに。
「封印したということか?」
「はい、封印には成功しましたが、ある条件付きとなる。実は魔法の効力には時間がありまして、一定期間で封印の効力は薄まり、やがて復活してしまう。歴史上では魔王は別々の時代に復活しました。しかしその度に封印魔法スキルで封印してきたのです」
「復活した時は、封印魔法スキルはどうやって覚えたんだろうな。また女神が授けたとか?」
「そうなんです。女神は時代ごとに最強の冒険者に封印魔法スキルを授けて、何とか絶滅を防いできたの」
アリエルの歴史の話を聴きユズハ店員は納得した。
「それで謎が解けました。何時の時代でもなぜか不思議と封印魔法を使える者が現れて、魔王を封印したとあるから。普段は封印は出来ないのに、急に使えたと記録されてて不思議でした。女神様の力だったとは」
「淫魔はその後どうなったんだ。勇者とはケンカしてそのままかな?」
「はい、いっこうに仲直りはしなくて、遂には女神もブチ切れて淫魔に対して女の子にしちゃう魔法をかけてしまった。それも可愛くて能力もほとんどなくて、魔物を従える力は無くされてしまったのよね」
「ひ、酷いことしやがるな。悪いのは勇者なのによ。女神は嫌いだぜ」
リリスは口を膨らませて怒る。
淫魔の一族が弱まった原因とされた。
「だけども、こうして人族は魔王や魔人から絶滅を逃れられてきたと伝えられてます。しかし今は話が違い、歴史上にない危機を迎えていると。それは大昔の偉大なる魔術士がいて、将来、とんでもなく脅威が人族に襲いかかる。歴史上の最悪の受難が起こると記されていて、それが現在てわけなのです。そして不可思議なのはあなた達の存在です。この受難が来る時期とまるで合わせたかのようにして、女神と勇者と淫魔の関係者が現れた。特にミーコさんは勇者の血を引く可能性があると、リリスさんは淫魔族の出身であると。このタイミングは何の意味があるのか、考えてしまいます」
ユズハ店員が真剣な面持ちで説明する。
ユズハには、この3人の登場は予言されていたものか、判断はつかないのである。
「そこに俺は運悪く転生しちまったてことでいいよね。そしたら俺はやる事は決まってる。次の魔人も、次の魔人も、全員倒してやろうと思ってる」
冷は魔人を倒せばいいと、簡単に思ってるのだった。
(それで解決なわけだから、オッケーです。それ以上難しく考えません)
「冷氏、あなたは今の話を聞いてたの? とても単純な話じゃないし」
「そうだよ、お前は単細胞すぎる」
「俺のだけでは無理かもな。だったら君たちが強くなるばいいだろ。4人居ればひとりよりも強いし、もっと強いっていう魔人にも対抗できる。だからクエストと俺の訓練をどんどんとこなしていこう」
(まさかこの子らが過去にここまで関わってるとはな。そうなると血は血を呼ぶ。間違いなくサラブレッドていう奴だ。過去の強大な偉人クラスにまで強くなるかもしれない。今はどうみても遥か下の戦力しかないとして、最初に出会った頃よりも強くなってるのは間違いないかない。鍛え方しだいでは化け物クラスにまでレベルが上がることもあり得る)
冷にとっては彼女達を強くするのが貴重な戦力となると確信した。
あえて言うなら冷の右腕となり得るのだ。
クエストと訓練と聞いてアリエルは、
「女神なのにこの程度だと思われたくありませんことよ。だからクエストも訓練も逃げずに行きます!」
女神なのにまだ補助的な存在だとわかって言った。
アリエルに続いてミーコは魔人を復活させた責任を感じ、
「冷氏の申し出、この勇者の名に恥じないよう、まい進します!」
「素晴らしい!」
「頑張れ!」
「いつになく強気」
と勇者ではないが、本人はかなりヤル気をみせた。
その瞳は輝いていた。
ミーコに影響されたのかリリスも奮起して、淫魔復活を考えていて、
「淫魔は素晴らしいのだ!」
「大きな声で言うことじゃないけどなリリス……」
「いつもより誇らしい感じする」
「淫魔が復活したとなったら、大変なことになりますが……」
冷に大丈夫かと心配される始末となった。
冷はこんなにも歴史上の件とこの子達が関わるのに、意味深な物を感じた。
歴史は繰り返すという。
まさにこの子らこそ今集まったのは、偶然だろうかと思う。
とても偶然にしては出来すぎだろうかと。
冒険者ギルドでは、ユズハ店員がクエストを新たに紹介しようとした。
その時に連絡事項が発生していて、ユズハ店員ですら目を疑う内容の件であった。
「あの、冷さん。クエストを紹介する前に、とても凄い内容のお知らせが来ました」
ユズハ店員のお知らせと聞いて何かなと思う冷は、
「何かな……」
なぜか言い出したくても口が上手く開かないユズハ店員は、
「あ、あ、あの、王都からのお知らせでして冷さん宛でして、ハンマド国王から冷さんに報酬が来てますと。ガーゴイルを倒して捕まえた件の報酬を冷さんに贈ると。受付けはし商業ギルドで受け取りくださいとあります。き、き、金額は2億マリとあります!」
声を上ずるように言ったユズハ店員を前にして冷は、
「商業ギルドですか、国王によろしくお願いします!」
とまるで友達感覚に扱う。
「凄いな、マジで。それだけあれば飯はたらふく喰えるな」
「リリスはとりあえず飯ね」
リリスも腹が空いてきていたので、思わず言ってしまう。
その金額を聞いたミーコは驚くしかなく、
「に、2億とは恐れ入った」
と、盗もうにも金額の額がデカ過ぎて盗む気が起きない。
もちろんアリエルとリリスも苦笑いするしかなくなっていた。
冷も驚くことは驚くのだが、道場の建築中で金は使ってしまったから、嬉しいというよりもホッとした感じに近かった。
(2億あれば当分は借金はないだろうな)




