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 冒険者ギルドにはラジッチがやって来るなど、ガーゴイルが出没するは、いまだかつてない経験のコットル。

 町にとっては早いとこ伝染病を治してくれと祈るばかり。

 ラジッチ達がウル森に出発しようとした最中、空に黒い鳥が現れた。

 ラジッチの頭の上を旋回し出す。

 騎士団がその影をみつけて、


「ラジッチさん、あれは鳥ですか。鳥にしては大きいかと、もしや魔物ではありませんか?」


「魔物……。こんな大事な時にわずらわしい。町を襲ってくるようなら戦う。関係なければ無視して出発だ」


 ラジッチは上空を見つつ指示した。

 特別関係ないなら良いがと思う。

 警戒心は持つことにした。

 ラジッチの言うこととは違う展開に騎士団が、

 

「ラジッチさん、どうやら、攻撃してきそうです」


「……魔物か、本当に?」


 ラジッチは魔物がたった1匹の単独で町に攻めてくるのを疑問視した。

 普通はあまり例が無い。

 やって来る意味があまりないし、よほど強い魔物でないと冒険者の数で圧倒的に負けるだろう。

 それではなぜ単独で来たか。

 おのずと答えは見えてきた。

 騎士団がその姿を確認して声を震わせて、


「あ、あ、あ、あれは、羽が、ガーゴイルでは?」


「……情報と同じか。ガーゴイルだろう。全員防御しろ。ふっ、ウル森にこちらから出向く手間が省けたわけだ」


 上空にいたのはガーゴイルであった。

 ラジッチは向こうから来る相手に鋭い視線を送る。

 旋回しつつ周囲を探っていた。

 ガーゴイルにとって目標は1人。

 冷のみだ。

 あとはどうでもよい相手。

 騎士団など目にもとめない。

 しかし邪魔なので、攻撃を仕掛けたわけだ。

 真っ逆さまに降下し、騎士団の頭を過ぎ去る。

 と同時に短剣で騎士団を数人を切り裂いて行った。


「うわぁ!」


「ラジッチさん、速いです!防げません」


「さすが魔人だ。俺でも見えねえ」


「ラジッチさんが?」


「ああ、全くな」


 ラジッチは仲間の騎士団が斬られたのが実際に見えなかった。

 これでは残りの騎士団も殺されるのが目に浮かぶ。

 そこへ別の軍勢が町に侵入して来た。

 突然のガーゴイルの攻撃にパニックの上の襲来。

 騎士団の中には後ずさりする者もいた。


「ラジッチさん、今度は前方から軍勢が。恐らくは数十匹はいます!」


「クソ、アレは見た目魔族だ。ガーゴイルの配下の魔族だろう。」


 ガーゴイルの配下の魔族が遅れて到着した。

 数では騎士団とほぼ互角。

 騎士団の姿を見るや、方向を騎士団に向けて突進していく。

 

「魔族が来るぞ、全員剣を抜け。突進だ!」


「おお!!」


 魔族が来るのをひるまずにラジッチは突進を選択し指示した。

 前から魔族、上にはガーゴイル。

 ラジッチははっきり言って苦しいと感じた。

 この時ばかりは死をも感じさせられたのだが、リーダーであるからして、弱気な面をみせては負ける。

 あえて突進を指示した。

 ラジッチは自慢の斧を振りかざし魔族と激突。

 頭を吹き飛ばした。

 魔族はそれをみても全く足を止めない。

 恐怖感が人族とは根本的に違うからだ。

 騎士団の剣と魔族の剣がぶつかり合う。

 魔族も負けてはいない。

 騎士団の体を切り裂き血が吹き出す。

 町の入り口付近で起こった戦闘に町の人々は恐怖し、避難をした。


「みんな大変だ、魔族が現れた。奥に避難しろ!!」


「早いとこ逃げろ!!」


 掛け声をかけながら人々は逃げる。


「ぐわぁ〜〜〜〜」


 そこを魔族に捕まり槍で突かれて血まみれとなる。

 騎士団も助けようとするが間に合わなかったのだ。

 さらに続いて槍で殺していった。

 パニックになり人々は泣き叫ぶ。

 

「助けてくだ……」


「魔族め!」


 騎士団が庇うようにして身を投げる。

 魔族の剣が背中に突き刺さり流血した。

 口からは大量の血を吹き出して倒れた。

 ラジッチだけは別格であった。

 得意のスキルである大車輪を駆使する。

 斧で魔族の腕を潰す。

 肩を殴りへこます。

 腹を破裂させる。

 周囲の魔族を次々と殺していったが、相手の魔族が戦力的には上であった。

 そのため魔族は騎士団を力で押し込み、騎士団は後退していく。

 

「おい、後退するな! お前ら!」


「ダメですラジッチさん。魔族が強すぎます!」


「……ヤバイぞ、このままだと」


 戦況は負けつつあった。

 突然に来た魔族が勝利しつつあり、返り血を舐めて嬉し上がる。

 ガーゴイルはラジッチの上空から移動していた。

 冷を見つける為だ。

 必ず居る予感がした。

 まだこの町のどこかに居ると。

 魔人の感であった。

 

 その頃、冒険者ギルドにも一報が入る。

 まだ何も知らない人達は賑やかに過ごしていた。

 そこへ突然来た客は血まみれであり、何事かと思った。


「大変ですぜ!」


「どうかしましたか、血が流れてますよ」


「町に魔族が侵入して来たんだ。みんな殺されてる。それにガーゴイルも目撃したとか!助けてくれ」


 そのひと言に店内にいたギルド店員、冒険者はせんりつした。

 聞いた情報と違うからだ。


「バカな、ガーゴイルはこちらが手を出さなければ安全だと聞いたぞ。なぜ今?」


「わかりません。ただ騎士団が偶然に居合わせていた。だけどその騎士団でさえもかなり殺されてる。魔族には勝てそうにない」


「騎士団が戦ってくれてるのですね。きっとラジッチさん達でしょう」


「あのラジッチさんですか!!」


 ラジッチという名に驚いた。


「ひとりだけとても強かった方が居ました。あの方がラジッチさんでしたか。だけど相手が有利なのは変わりません」


「俺達が行きましょう。騎士団だけに任せていたら恥ずかしいのでな」


 居合わせていた冒険者が立ち上がり言った。

 

「ガーゴイルもいますよ!」


「待つんだ、本当に行くのかい? あのガーゴイルだぞ!」


「行くしかないだろ」


「死にに行くようなものだ」


「それでも行くのか俺達の役目でもある」


「そうだよな、コットルの町の危機だ。逃げるわけにはいかない」


「見て見ぬふりはできないですから」


「お願いいたします!」


 ギルド店員は冒険者達に礼をする。

 この町の危機を知って見ないふりはできなかった。

 それだけこの町を好きな証拠である。

 冒険者はギルドを出て魔族討伐に急いだ。

 

 魔族達の争いが起きたのを冷はまだ知らなかった。

 場所的には近くにいて、揃ってウル森を目指そうとしていた。

 ガーゴイルが伝染病の原因だと判明したからだ。

 

(よし、ガーゴイルが悪いと判明した。奴とは因縁がある。戦う理由が出来たというものだ)


「ウル森に行くのですね」


「そうするよ俺は。キミたちは宿屋に居てもいいぜ。なにせ危ないからな。まさか再び俺が来るとはガーゴイルも思ってないはずだ。

まぁ普通ならそう考えるだろう。でも俺はちょっと違うんだよ。一回戦って負けてた。あのままやってたら死んでたな。だけど強い相手と出会うと妙に闘士がわいてくる。会いたいってな。俺って変かな?」


 

(普通じゃないよなやっぱり)


「分かってるなお前。変だな。それにガーゴイルが美人だから会いたいのもあるだろ。半分は?」


「あるわけないだろう! コッチは真剣なんたぞリリス」


 冷はリリスに叱るように言った。

 だがあながち外れてはいない。


(5%はあるかもな……。やはり俺は変だな)  


「ん……待って。向こうが騒がしい気がする」


 ミーコにはなにか胸騒ぎがした。


「えっ……。そう言えば慌ただしいですが。冷、行ってみましょう」


「そうだな。あれはおかしいぞ」


 アリエルも気がつくと全員で近くに行ってみることに。

 その時はまだ悲惨なことになっているとは思いもしなかった。

 近くに行って周囲がとても言葉に出来ない程に荒れ果てて死体だらけであったのに驚いた。


「なんだよこれは……酷い」


(町の人々が……)


 冷は棒立ちとなる。

 とても言葉では表せない光景に。


「みんな殺されてる。それも剣や槍でやられたあとがあるわ」


「ここで殺し合いがあったようだな……やったのは誰だ」


「見て!! あそこで戦ってるぞ」


「魔族か!! あの感じは魔族だろうな。こうしてはいられないぜ、みんな行くぞ」


(魔族てことはガーゴイルの族か。もしそうなら俺にも責任がある)


「帰る場合じゃないわよね」


「魔族……許せないわ!」


「私も魔族だけど、これは許せない!」


 冷を筆頭にしてアリエル達も魔族のいる地帯に向う。

 相手にガーゴイルがいるのは分かっていても、この光景を見たら行動せざるを得ない。

 血の匂いが漂う地に足を運んだ。

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