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「ぬうううううう……人族などの攻撃を受けるとは……悔しい!!!!」


 意表をついた攻撃を受けてしまい悔しがる。

 相手の能力を見誤る。

 地面に背中から落ちたガーゴイル。

 見たほどのダメージはない。

 痛みもほとんどなかった。

 その後に着地する冷。

 魔人に対して、


「俺をナメてるから蹴りをもらうんだよ」


(蹴りは入ったのにあんまし効いてない。魔人はやはり格が違うようだ)

 

 モロに蹴りを喰らっても、スッと立ち上がる魔人ガーゴイルに表情を歪めた。


「これ程の冒険者がいようとはな。手加減し過ぎた。この様な無様な姿を晒してしまうとは。これ以降はスキルでいかせてもらう。覚悟の用意を」


 蹴落とされてカチンときていた。

 二度と蹴りは受けないと決める。

 スキルを使うと宣言した。

 どんなスキルかは不明だが感で危険だと察知した冷は避難させることにする。


「君たちは先に町に帰ってくれ!」


(危ない。俺の直感が言ってる)


「冷は?」


「俺なら必ず後から行く。必ず」


(相手が魔人だから必ずって言いきれないけど……)


「……先に町に行ってるわ……」


「いいのですかアリエル、冷氏を置いて帰って。魔人ガーゴイルですよ相手は。応援を要請しましまょう」


「いや止めろミーコ。キミの気持ちは有り難い。だが魔人は応援でどうこうなる相手じゃない。むしろ邪魔になりうる」


(魔人に対抗できる冒険者が直ぐに来れるとは思えない。かなりの強いはずのラジッチでアレだから)


「そう、わかりました……。決して死なないでお願いします」


「死なないでって、俺は死なねえさ!」


(今回だけは嫌な予感するのはなぜかな)


 彼女達が去っていくのを確認してから再び頭を戦いに切り替える。

 そこへガーゴイルがスキルであるウインドキルを発動した。

 

「ウインドキル!」


 緑の羽を左右に広げる。

 羽は鳥のように小さな羽が集まって形となっている。

 幾重にも重なりあい、無数の数が生えている。

 その一部である1枚の羽が抜ける。

 更に1枚、もう1枚と次々と抜け出した。

 抜け出した羽は落下するはずである。

 その羽は落下せずに冷に目がけて飛来して来る。


「!! 飛び道具か?」


 飛来する羽を冷は寸前でかわした。

 その際に顔をかすめる。

 僅かにかすめただけで、顔にかすり傷が生じた。

 この羽は普通の柔らかい羽とは違い、切れ味鋭い武器と化していた。


(これはただの羽じゃない。恐ろしい程に鋭い武器。まるでナイフを投げられた感じだ。しかも薄いので大量に来たら目視するには難しいぞ)


「フフ、これもかわすか。その身のこなし方、並の鍛え方では到達できまい。褒めてやろう。でもこれはどうかな?」


「また羽かい!」


(羽が無くなるまで頑張るしかねえな)


 またも羽が飛来した。

 それも今回は数が違う。

 さっきよりのと比べて圧倒的な数を飛来させたのだった。

 少ない数では対応出来た。

 しかし大量に飛来させる戦法には、さすがの冷も苦笑い。


(これヤバイだろ……)


 猛烈な速度で1枚が迫るのをかわしていく。

 ガーゴイルの目にも止まらぬ速さで動く。

 これでもかと羽が抜けて飛来した。

 全部かわしていく冷も、限界があった。

 何本かは身をかすめて、ダメージを負ってしまった。

 

「あんなに多くは当たるよな……」


(厄介な羽だこと。オマケに羽が切れたら終わりかと思いきや、途切れない。どんどんといくらでも新しく生えている)


「まだまだいくわよ」


 より大量に羽は飛ばされる。

 撒き散らすといってもいいだろう。

 四方八方に無数に散らした。


(おい、これじゃ避けるスペースもないだろ。これが魔人の能力か……ヤバイな)


 ガーゴイルこスキルであるウインドキル。

 とても難しい戦局になったと実感する。

 ここまてで冷が体に大量に羽をもらう。


「あんたの羽は弾切れしないのか?」


「残念でした。弾切れなし。ウインドキルは無限でした」


「マジか……」


(予想外れたな)


「最後はこれでジ・エンド」


 ウインドキルを放つかと思いきや放たない。

 ガーゴイルは冷がうずくまる体に近寄る。

 なぜ近寄ったのか。 

 近くにいく理由があった。

 肩を掴むと首に顔を近づける。


(俺の首に……。何する気だ?)


 首が狙われた為に冷はとっさに両手で防ごうとした。

 反射神経の優れた冷の特質でもある。

 向き合った状態のガーゴイルに両手が。


(ん…………なんだこれは)


 何ともいえない柔らかな感触が。

 手の平に伝わる。


「……どこを触っておるのだ!!!!!!!!」


「???この感触は胸?」


(何やら俺はとても良い物を触ってるのかな)


 正解であった。

 とっさにとった行動の為、意図的にしたわけではない。

 偶然に起きた産物なのである。

 触られたガーゴイルは偶然だとは考えない。

 まさかの攻撃と考えた。

 なんて卑劣な攻撃なんだと。

 ガーゴイルは冷に両胸をもまれてジャンプして距離をとった。

 あの場面でそんな行動をしてくるとは予想外であった。

 冷はとても豊かな胸を触れて嬉しくなる。

 しかも首への攻撃も回避出来たのは奇跡的。


「悪かったガーゴイルさん、ワザと触ったんじゃないから」


「許さん!!!! 生かしておく予定であったが予定変更。絶対に殺す!」


「触る予定ではなかったのです!」


「その割には嬉しそうな顔をしているが?」


「い、い、いや、嬉しいのではないんだ」


(何を言ってるのだ俺は。戦い中だぞ)


「こんな変態的な攻撃をする相手は初めて。キレました」


 ガーゴイルは胸を触れて完全にキレていた。

 目は血走り、怒りで顔を歪ませる程に。

 冷は今がチャンスと判断した。

 冷静さを失ってる今こそが。

 そこでスキルを使うことに。

 油断しているので遠距離からのスキル。

 オメガラウンドを選択。  


「オメガラウンド!!」


 空中に無数の岩が作られる。

 それらをガーゴイルへ向けて放った。

 ガーゴイルは羽を広げてぶつかることなく避難する。

 岩は全て地面に叩き落とされた。

 一発も当たらず失敗となった。


「不発だったな。この程度のが私に当たるかよ……」

 

 普通ならとても避けきれない量である。

 しかしガーゴイルからしたら大したことはなかった。

 無論、全神経を岩から回避するのに集中したのは当然である。

 辺りは岩と地面が衝突した衝撃で大量の砂煙が舞った。

 ガーゴイルには砂煙が邪魔となり一瞬だけ冷を見失った。


「……しまった……あの冒険者め」


 砂煙が晴れていった。

 もうそこには冷の姿は消えていた。

 これが真の狙い。

 始めから、当たるようにみせかけて、実は地面に当てて逃亡するたいう作戦であった。

 この作戦は見事に成功した。


(上手く逃げれたな。あの魔人と戦ってる時間はない。早く俺は町に帰りたいんで。戦いの続きはまたのお楽しみとしよう)


 決して怖くて逃亡したのではなく、理由があった。

 子供達を治してあげたいという想いからだ。

 あくまで冷静な判断をした冷が上手であった。

 後に残されたガーゴイルはあともう少しで首にと残念がる。

 首を狙うのは、ある理由があってのこと。

 首に噛み付き吸血するのが、ガーゴイルの好物であったから。

 森に入ってくる冒険者をターゲットにして吸血していた。

 冒険者は吸血されると、死ぬことはなかった。

 ただし、ガーゴイルの持つウイルスが体内に入り込む欠点があった。

 しかも本人には吸血された記憶がなくなる特質も持っている。

 記憶がなくなる為にガーゴイルの存在は今まで知られることがなかったのだ。

 人族の生き血を吸うのが大の趣向品であるのは同じ魔人の間ではよく知られている事実である。

 サイクロプスとの会話。

 

「人族の生き血を吸って楽しいのか?」  


「うん。美味いのよそれが。サイクロプスも吸ってみな、私の言ってる意味がわかるから」


「わかりたくないが。俺は酒の方が増しだ。人族の作る酒は美味いぞ。人族を殺すのは簡単だ。俺達が本気を出せば直ぐにでも人族など絶滅出来るだろう。そしたらもう酒が飲めなくなる。それは困る。だがら逆らう奴は殺すが、酒と食料を差し出す人族は生かしてあるのさ」


「あなた結構、人を殺してるわよ」


「そうだったけか」  


「確かうん十万人くらいよ」


「殺し過ぎたかな」


「私は血を吸えれば良いのよ。だから人族を絶滅させる考えはない。でも魔王様を復活させたらそれも終わりかな」


「まぁそうだろうな。予定では絶滅させるらしい。俺たち魔人は上の魔人様から命令されたら動くだろうしな」


「今のうちに楽しむとしましょう」


「なぜか今日は話が合うな」


「ふふ、結局は私達は似た者どうしね」


「そうか……魔人なんてそんなもんだぜ。他のも同じだ」

 

 サイクロプスとの会話をなぜか思い出してしまった。

 冷を追いかける真似はしない。

 どこに行ったのかさえ不明であるし、想定を超えた強さに笑みを浮かべた。

 人族もなかなかやるなと。

 


 その時にアリエルらは急いでコットルの町に到着した。

 冷を置いて帰ってきたのは罪悪感が生まれていた。


「大丈夫かしら。ガーゴイルの強さは恐らくはサイクロプスと同等かそれ以上です。ひとりでは難しいかと……」


「ミーコ、冷は大丈夫だと思う。アレはきっと何か考えを持って戦ってるから」


 残念ながら考えていたのはガーゴイルの胸の感触である。

 決してアリエルの意味した事とは程遠い。

 

「で、どうすればいいんだ。草は持ってるだろ。ギルドに行けばわかるんじゃねえかな」

 

 リリスが草を手にして言った。

 袋にはかなりの量の草があった。

 

「そうですね、リリスの言うとおり冒険者ギルドならばわかると思う。私達がウル森に行ったのも許可を得て知ってるし」


「それなら話は早い。冒険者ギルドへ行こう」


 彼女らは町に着くと先ず草を待って帰ったと報告しに冒険者ギルドに向かう。

 もう会えないとは考えないようにした。

 

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