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 リリスの個人レッスンをした後にアリエルをのぞいた。

 彼女は今日からは回復魔法の特訓となっていた。


「アリエル、スキルの方はどうだい?」


「まあまあね」


「回復系なので冒険ではとても重要なスキルになりそうなんだ」


「今のところ私しかいないからね」  


「スキルだけでなく魔物と戦う気持ちも向上しているよ」


「どんな風に」


「以前なら魔物見ただけで怯えていた」


「えっと……そうだったけ」


「トボケでもダメだ。俺はしっかりと覚えている」


「そうでしたか」


「だけどサイクロプスの件の時は魔族と戦った。戦うことでアリエルの中に経験となっていき、怖さが消えていってるのだろう」


「そう言われると、戦いに自信が出てきたのかな。ただリリスとミーコがいたのもある」


「いいチームかもな。それよりも見せてよ」


「いいわよ、聖なる治癒!」


 回復魔法の特訓をすることで、魔力も増える効果もある。

 より早く確実に出せる必要もあってのことだ。


「うむ、いい感じで使えそうだなアリエル。ミーコがダメージを負った場合、ミーコを後方から支援できそうだな」


「……」


「どうした? なんかあまり反応がよくないみたい……」


(あれ、俺は何か今気に触るようなセリフ言ったかな。特に言った覚えはないが)


 実際にアリエルはムスッとして訓練をしていた。

 それが冷に伝わっている。

 

「……だって私はいつも後方支援ばかりでしょう。ミーコやリリスより活躍する機会がないつていうか」


 アリエルの不満は後方で安全な場所にいることであった。

 

「つまりミーコが先頭で突っ込む、リリスが斬り合うのを前にして、後ろにいていいのかと。それはそれでいいだろう。アリエルには後方が合ってるのさ」


(アリエルにはアリエルなりの不満があるようだ)


「後方が合ってるて、それが戦ううちに疑問に感じてきたのよ。なにか私はお荷物ではと」


「そんなことねぇし。アリエルは必要なメンバーだ。誰一人として不要なメンバーなんていないぞ」


(独りではなくて何人かでグループを作るってのは人間関係が現れるんだな。俺は今までわからなかった。神は人間じゃないけど人間関係はあるようだ)


「……そうかしら。私が居なくてもリリスとミーコがいれば戦える気もする……」


「気にし過ぎだぜ。アリエルは必要なメンバーだ。俺は今まで完全に単独プレイヤーだったから、アリエルの悩みが気が付かなかった。後方が価値が低いなんてことはないだろう。どちらも同じさ」


「ミーコとリリスは必要がある。けど私はどうかなって思っちゃう。回復系とかあるけど、このままあの2人から不要になるのではって」


「考え過ぎだろう。あの2人はそこまで考えてない。むしろアリエルが後方にいてくれるから、前に出ていけると思ってるはずさ」


「……そうなのかな。直接聞いたわけじゃないからわからないわ」


「要はアリエルが早く回復系のスキルを実践でも使えるようになれば、この問題は解決するさ」


「わかった。次はミーコに教えてあげて。私はこのまま練習してるから」


 やや突き放す言い方なアリエル。

 冷とは顔を合わせずに練習を始めた。

 冷としては、これ以上この問題に突っ込む勇気はない。

 かえって、話がこじれる可能性がある。

 まして冷は人間関係が不得意なだけに、なまじ深入りは避けることにした。

 アリエルから離れてミーコの所へ向かう。

 ミーコは聖剣ヴェルファイアを片手に素振りを行っている最中であった。

 そこに声かけした。


「よおミーコ、調子はどうだ?」


「はい、剣術を磨こうとしてまして、こうして素振りをしていました。冷氏は剣術や槍術も並外れてるから、ぜひとも教えて欲しい」


 ミーコは素振りを一旦やめて冷にお願いする。

 冷もまんざらではないと、ミーコに近寄ると。


「あっ、教えて欲しいとは言ったけど体にタッチは無しです。言葉で説明してください。それで理解できます?」


 冷を完全に信用してない発言であった。


「……あ、そうだよな。じゃあ俺も剣を振るうから真似してみるんだ」


(ミーコの奴め、なぜ俺が体に触ろうとしたのを察知出来たのか不思議だ。女の子に教えてる振りしてボディータッチするのに憧れていたのだぞ)


 冷は多少なりともガックリと肩を落とす。

 少年期から抱いた夢であったから、ショックは少なくない。

 だがここでショックをみせるとミーコにバレるので、完全否定しておく。


「何を言ってるのだミーコよ。俺ははなから触る気はない。俺を甘くみるなよ。さぁ剣術をたっぷりと教えてやる」


「お願いする!」


 冷はミーコと剣と剣を合わせて力を測る。

 見るべきものと、改善する点が感じられた。


(剣を振るう素早さはあるな。足も速いし、敏しょう性に優れているのはわかる。これはきっと強力なレベルにまで成長出来る。俺が感じるのだから間違いなしだろう。戦うことで相手の技量はある程度わかるものだ。ミーコは俺が思った通り非凡。つまりそこらの冒険者とは違う逸材だ。勇者の血を引くと言うのは本当かもな。だが弱点もみつけた。せっかく2回攻撃しても腕力不足である。つまり攻撃の破壊力が不足していて、2回攻撃しても1回攻撃と変わらない程度になってしまう。これではもったいない。ミーコを更に成長させるなら絶対に力をつけさせることだろう。そうすれば格段に相手から脅威になるはず)


 ミーコの欠点をみつけた冷は、集中的に力を鍛えることにした。

 それは体が小さいミーコには最も課題として厳しい。

 力強くなるには、ひといち倍トレーニングを課すことが必要となる。


「いいかミーコ、力を鍛えるには繰り返し剣を振るうのが1番だ。無駄がないし、間違いなしだ。変に腕立て伏せとかしても、辛いだろう。それよりも長く続けられる方法がいい」


「素振りなら楽しいです。何回振っても苦にならないので、これなら続けられる」


「どんどんと振ってみれくれ」


「こうですか!」


「そうだ、その調子だ」


「はい!」


「そのいきだ」


 ミーコは剣を上下に振り抜くと、額からは汗が流れる。

 


「はい!」


 ミーコは冷に言われたようにして剣を上下、左右に振った。

 剣を振るのはやってみるとわかる。

 腕が上がらなくなるのだ。

 直ぐにミーコは両腕が上がらなくなり、苦しくなる。

 腕が上がらないのは、自分が力不足だと考えた。

 魔物を倒せるだけの力が欲しいと願う。

 何度も何度も剣を振った。

 振るう度に汗が散った。

 その様を見て、冷は嬉しくなる。

 ミーコの懸命な努力に。

 しかし中級魔人を倒して世の中から認められるようになったにも関わらず別のことを考えていた。


(ミーコはきづいていないようだ。実は素振りをするのは意外と体を揺するものである。だからミーコの体は今どうなってるか。それは上下に激しく揺れている。となると……。もの凄く大きな胸も一緒に揺れている。体に直で触れなくても十分に楽しめるのだ)


 と生徒が必死に頑張っている最中にこの妄想。

 英雄がきいて呆れる。

 訓練はハードに続けられた。

 冷の予想を上回る速度で彼女達は強くなっている。

 嬉しい結果と言える。

 リリスとミーコ、アリエルを集めて訓練の終わりを伝える。


「よし、訓練はここまでにしよう!」


「フゥ〜」


「もうダメです」


「早く飯喰わせろ」


 3人とも終わりの合図で疲れがどっと出た。

 訓練中は汗を流した。

 冷は終始、胸とお尻に注目していた。


「わかった、飯にしようか。これだけ訓練したら空いて当然だ」


「道場が完成したら楽しみのようですね」


「そりゃあな。俺は幼い頃から道場で戦いあってきたから。道場を見たらわくわくするよ」


「根っからのバトル好き」


「バトルオタク」


「どこでそんな言葉覚えたんだよ」


「教えない」


「それならもう一回訓練させるぞ」


「わかった、済まない。もうオタクとは呼ばない」


「ねぇアリエル、オタクって何?」


「ミーコは知らないの」


「知りません。聞いたことありません」


「知らなくていい!」


「教えてアリエル!」


「知らなくていい! 教えるなアリエル!」


「オタクってのは、その分野にはめっちゃ詳しい」


「へぇ〜、褒め言葉なのね」


「違う、違う、その分野には詳しいけど、それ以外は知らない。興味もない。他から見ると理解不能なわけ。だから褒め言葉じゃないの」


「あらら、つまり冷氏はバトルしか知らない、それ以外は役に立たない男なわけね」


「よく理解できました」


「アホか!」


「間違ってましたか」


「役に立たないは余計だよ」


「同じようなものでしょ」


「同じじゃないよ!」


「オタクの話はいいから、早く飯に!!!!」


「リリスは飯オタクってこと」


「そうなるわ」


「冷と一緒にするなよ!」


「リリスは当たってるぜ」


「いいから早くしろ!」


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