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 翌日になり冷は商人に会い相談したい内容を話したいと。


「つまりは商人と交渉しに行くというのだな」


「そうしたい。俺としても早く道場を作りたいってのもあるんだ。君たちには退屈でつまらない話かも知れないが」


(商談だから興味がないだろう)


「そもそも冷は商談的なことが出来るの。難しいのではないかな」


「はい、ありません。俺は何て言うか、人と話すのが大の苦手だし最も不得意な分野だろう」


「わかってます。それでは余計に私達が一緒に行かなければなりませんことよ」


「よくわかってて助かるよ。それでは商人のとこに行こうか。それとネイルはまたお留守番だぞ」


「はーい主人様」


 ネイルは冷に言われてうなずいた。


「ネイルもたまには外に行きたいのでは?」


「いいえ、外に行きたいとは思いません。外は危ないし、好きではないのです」


「へぇ〜、意外とインドアな性格なんだ」


「はい、戦闘タイプなみんなとは違うかな」


「私も本当は戦闘タイプじゃないことよ」


「でもいつもご主人様と一緒にクエストに行ってますよね?」


「なぜか行ってますって感じなの。行かなくて良ければ行かないわね」


「そうだったのですか。商人との話は後で聞かせてください」


「わかったよネイル」


 ネイルは部屋にあずけて、商人の店に立ち寄ることに。

 商人の店は開店してあった。

 以前に会ったのと同じ男がいた。


「これは冷様。今日は何か御用でしょうか」


「おおありだ。御用があってきた。おおよその予想はつくか?」


「購入された土地の件とは別の物件を購入しにきたとか」


 商人は少し考えて答えた。


「いいや、新しい土地は今は要らない。話をしたいのは土地の上に建物を建てたいという相談だ」


「建物ですか、まぁそれは当然ですよね、なにせ土地だけ持っていても役には立ちません。それでしたら何か建てた方がよろしいです。それでお住まいになられる建物と考えていいですか」


「違うんだそれが。誰も住まない」


(まぁ、普通ならそうなるだろう)


「住まないと……。では何をお建てに」


 商人は難しい顔で質問した。


「道場だ。俺はあの土地に道場を作りたい。わかるかな道場てのが?」


(わからないと困るな。イチから説明するはめになる)


「道場とは……。私にはわかりませんが、具体的に教えてください」


 正直に言って知らなかったのだ。

 道場なんて言葉は日本語の言葉であるから、知らなくて当然であろう。


「やはり知らなかったか。じゃあ教えよう商人さん。道場てのはな武術を教える場だな。要は強くなりたい者が通って強くなれる。俺が教えるから間違いなし強くなる。この子が道場の生徒だ。つまりは武術が出来る建物を作って欲しいのだよ」


(これでわかってくれるだろう。俺の説明で理解出来ればの話だが)


「はぁ……。もしかして養成所では冷さん?」


「養成所! まぁ確かに似てはいるな。似たようなものだが、なんというかな、そのもっと特別な養成所だな」


(養成所と道場の違いか。あまり考えてなかった。そんなに違いはないと言えばないかもな。俺としては道場ていう言葉が好きだから使っただけだ。それに学科の授業はない。あれは退屈だからする気はなし。授業など俺が教えるのは不可能だろう。それを商人に言葉で説明する能力が残念ながら俺には不足している)


「特別な養成所ですか。確かに冷さんが先生でしたら、さすがに特別でしょう。他の先生とは違い説得力がありますから。話はだいたいわかりました。そしたらどの様な建物を作ればいいですかね」


「体育館に似てる作りだ」


(俺のイメージをそのまま伝えてみた。それしか言いようがなかった)


「体育館とは?」


 日本の学校ではないから、会話がイマイチ噛み合わない。


「う〜とな、天井が高くて中はガランと何も無くて、床は木で出来ていて、大勢の人が同時に動けるって言ったらわかるかな?」


(これでわかるかな。やはり俺は会話が下手だよな)


「なんとなくわかりました。運動が出来る建物ですね。木で出来ていて大きな建物」


「そんな感じだ。作れるかい?」


(わりと通じるもんだな)


「ええ、作れますとも。直ぐに建物の技術士に伝えて作らせます。もちろんマリは支払っていただきますが」


 話がわかったところで、さっそく金の話を切り出した。


「ああ、それは大丈夫だ。マリならある。外観は俺のイメージでお願いする」


(やっぱり道場と言えば、和風な外観がいいだろう)


 冷は和風のイメージを獲で伝えておくことにし、商人に任せた。


「わかりました。ありがとうございます。至急、お作りします」


 商人は新しい仕事が入り満面の笑みを浮かべる。

 当然であり、なかなか新しい建物を、それもかなりの大きさの建物となる物を注文を受けたのだから。

 微笑まない商人はいない。

 

 商人の店を出る。

 するとミーコが不思議そうにしていた。


「冷氏は養成所があれだけ嫌いと言っていた。なのに自分で養成所を作るて変な気がする」


「養成所じゃない、道場だ。それに嫌いなのは教えられるのが嫌いなのであって、俺が教えるのなら嫌いではない。授業を受けるのは退屈でつまらないからな」


(後は建築されるのを待つだけ。楽しみつつまつとしよう)


「ずいぶんと自分勝手な話」


「俺が作りたいように作らせて欲しい」


「それが危険」


「危険とは?」


「密閉された建物に入れられたら、誰も見えない。そしたらエロいこともやれる」


「馬鹿なことを言うな。道場ではエロは禁止。絶対に禁止」


「言ったな、今、言ったな!」


「ああ、言ったよ!」


「みんな聞いたよな今の言葉」


「はい、聞きました」


「私も聞いた」


「俺って脅されてる感じするが」


「それだけ信用されてないのだよ」


「夢を話してるのに信用されてないなんて残念」


「普段から信用されるようにしましょう」


「わかった。おフザケはしない。だから猛特訓に徹する」


「猛特訓すればいいというわけじゃないです」


「教師ずらするな」


「まぁそう言わず君たちには、今日も訓練を開始したいと思ってるぞ」


「でも質問がある!」


「なんだろうかリリス」


「今まで使っていた土地は工事するのだろう。しばらくは使用不可になるのではと思って」


「確かに工事中は使用できないか。別の空き地で訓練するしかなくなる。迷惑のかからないようにきをつけたい」


「いいのかな、勝手に使ってて。誰かの土地かもよ」


「うん、それは俺も不安はある。誰かの土地なら言ってくるだろう」


(他にも空き地はあるから、問題はないだろう)


「冷氏が怖くて言えないこともある」


「あり得ます。本当は言いたくても冷が居たら怒鳴れない」


「俺は言われたら、直ぐに出ていくさ」


「殺されるって思うよ普通は。なにせ魔人も倒すのだから」


「魔人と人の区別はつくよ」


 さっそく冷達は別の空き地を見つけて訓練を開始することに。

 

「確かアリエルは魔法スキルを覚えたな」


「聖なる治癒のことね」


「女神だけに聖なるか」


「女神だけの特権と言っておきます。私だけのオリジナル」


「えばる女神は見たくねえけど」


「何か言いましたか冷?」


「いいえ、何も」


「アリエルがそこまで言うなら拝見しましょう」


「まだ覚えたてなので、使えるかはわかりません」


「それを実戦でも使えるように訓練しておこう。そうすれば戦闘が楽になるだろうしな」


「そうするわ」


「私もスキルを覚えたようだ。ディープスピンてスキルらしい」


「ほう……リリスもか。どんな能力なんだ」


「それがまだわからない」


「わからないって、偉そうに女神が何とか言ってたのは何だったのよ」


「知らないのだからしょうがない」


「訓練の時に試してみようか。攻撃のスキルだと良いけどな」


(リリスのは後で判明するだろうから楽しみもできた)


「ちなみに私はどうしましょう。アリエルとリリスと違い特にスキルは覚えてません」


 ミーコが申し訳ない顔で言う。


「別に謝る必要ないさ。ミーコはとても必要な攻撃メンバー。現在の2回攻撃は相手にとって嫌だろうから、より攻撃力を高めていこう」


(攻撃力が上がれば、有利になるのは明らかだ。剣術と腕力を集中的に鍛えるようにしよう)


 それぞれが個人の能力の上昇に励んだ。

 リリスは新しいスキルの練習をした。

 ディープスピンは魔力を高めてエネルギーを放出し相手にダメージを与えるスキルであった。

 しかしリリスはどう使うのかわからないでいた。


「よし、リリス、ディープスピンてやらをみせてくれ」


「ディープスピン!」


 リリスは手を前に出して唱えた。

 だが特に何も変化はなかった。


「……」


(何か今のリリス、手に魔力が集まっていたような……)


「ダメね。何も怒らないじゃない」


「使え方が違うとか」


「そう言われてもわからない」


「スキルって最初の使い方が難しいです。よくあるスキルならイメージ出来ますが、知らないとイメージ出来ない」


「たぶん今のであってるのでは」


「私にもわからない」


 悔しそうにするリリス。

 せっかく手にしたスキルを使えず、ガックリと肩を落とす。


「いやまだ諦めるのは早いぜ」


「えっ……。どうして?」


「もう一度試してみてくれ。俺には変化が感じられたんだ」


「わかったわ、もう一度やってみる。ディープスピン!」


 冷に言われてもう一度トライする。


「……こ、これは……もしや」


(リリスの手に強烈なのを感じられた。魔剣と組み合わせても面白いかもな)


「結局は同じだった」


「諦めることないよ。きっといつの日か使えるでしょう」


「早く使いたい」


「いいや、リリス、俺にはディープスピンが見えたぜ。次に魔剣グラムを持ってやってみな」


(俺の考えが正しければ、魔剣グラムと合うはずだが)


「魔剣グラムが関係してると……。この剣を持ってと……」


「魔剣と何が関係あるの」


「リリスには魔力はあるんだ。それが今のを見ててわかる。剣と合わさることで生かせると思った」


「ふ〜ん、魔力は込めたのは込めたよ。でもイメージしてるように出ていかなかったのは言うとおり」


「それなら試してみなよ」


「そうだな」


 3度目は魔剣グラムを持って唱えた。

 リリスはあまりいい感じはしなかった。

 どうせダメだろうと思い込んでいたからだ。

 だがリリスの予想は裏切られた。


「おお、魔剣グラムが光輝いてるぞ。これはなんだろうか!」 

 

 突然に魔剣グラムが不気味な光を帯びたのだった。

 リリスにはこの光が理解できなかった。


「不気味な光。まさに魔剣って感じする」


「魔族っぽいわよ」


「褒めてくれてるの?」


「そうよ」


「魔族らしくないからいいと思うわ」


「何かしら、馬鹿にされてる気もする」


「気のせいよ」


「魔剣グラムにリリスの魔力が込められたとみていいだろう。その状態で剣を振ってみてくれ」


(俺の考えでは、あの魔力が放たれるとみた。もちろん試してみてわかるが)


「ええ、魔剣を振ればいいのだな。よし、振るぞ!」


 リリスが魔剣グラムを頭上から振り下ろす。

 一直線に地に向けて振り下ろされた後に、剣からは

 魔剣グラムを構えて魔力を集中させて、剣を振るう。

 振り抜いた剣の先から光が飛び出した。

 光は波の様な形となり、離れた木に激突した。

 木は破裂し吹き飛んだ。


「これがディープスピンの正体だ。リリスの魔力を集めて剣から放出できるってわけだ」


(俺の思ったより凄い破壊力だっな。誰も居なくて良かった。次から周りを気を付けさせよう)


「へへ、私の魔力ね。これ使えるぞ!」


 リリスは新しいスキルに満足感を得ていた。


「リリス良かったわね。凄いじゃないか。これなら離れた魔物にも攻撃できる。ミーコとは違う戦いも有りね」


「確かに攻撃できる。ミーコより速度がない私でも、魔物と戦えるスキルになりそうだ」


「アリエルが後方支援となるし、バリエーションが出てきたわね。最初よりも戦いの形になってきた」


「これならどんな魔物と遭遇しても恐れることはなくなりそう」


「アリエルったらずいぶんと強気な意見」


「そうよ、その内、冷も必要ない時がくるかもね」


「あ、それいいかもな」


「おいおい、みんなして俺をのけ者かよ!」


 実際にミーコが素早さがあるので、どうしてもミーコよりも後に攻撃せざるを得ない。

 放出スキルを得たことで、攻撃パターンのバリエーションが増えたのは間違いない。

 冷は彼女達が嬉しがる姿に、微笑ましくなっていた。

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