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 ミーコは戦闘の武器である聖剣ヴェルファイアを構えた。

 いつもなら素早さを活かす攻撃が得意である。

 しかし草を刈る作業は慣れてないのもあり、思うように刈れていなかった。

 

「う〜ん、難しいなぁ。剣を上手く使えないんだよなぁ〜」


「聖剣ヴェルファイアはミーコには長いからでしょう。ナイフならば小さいので切りやすい。でもナイフより長い分扱いにくい」


「そうなのよ。草を刈るには長過ぎるのよ。手が疲れてしまう」


「腰が痛くなる」


 リリスが早くも不満。


「まだまだあるんだから」


「本気でやるとかなりキツイぞ」


「思ったよりね」


「冷氏が言うように、トレーニングにはなりそう」


「よく思いついたわこんなの」


「草狩りとトレーニングを考えたのは単にいいわけで、自分がやりたくないからでは」


「それもあるかもなアイツなら」


「ほらほら、おしゃべりしてたら終わらないぜ!」


 冷はおしゃべりしてるのを見て注意を促した。


「わかってます!!!!!」


「よく見てる」


「冷には騙しは通用しないってことよ」


「まだまだ沢山あるわよ草は。3人で協力しないと全部は難しい」


 時間がかかり過ぎると彼女達の体力に影響がある。


「なるべく早く終わらせようぜ。こんなの退屈でつまらねえ。1秒でも早く終わらせたい」


 リリスはミーコと違い早くもヤル気をなくしかけていた。


「まだ始まったばかりなのに、手を動かしてください。ひとりでも怠けると私達の負担が増えるのです。さぁ!」


 アリエルが怠け出したリリスに注意した。


「偉そうに言いやがって。アリエルだって手でむしり取れよ」


「取ってるわよ!」


 アリエルはリリスに不満をぶつけるように言い返した。

 まだ草を刈って1時間経ったあたりで、弱音を吐くには早かった。


「おいおい、君たち。まだ全然刈れてないだろ。これも魔物を倒すのに必要な訓練だと思うんだ。どうだ足腰が辛いし、手も疲れてきてないか?」


(そろそろ、最初の疲れが出る頃あいだろう)


「はい、とても足腰が苦しいし、痺れてもきました」


「ミーコだけじゃないだろ。アリエルもリリスもだろうよ。それは普段使わない筋肉を使ってるからに他ならない。きっと君たちの体内では今まで使われなかった筋肉が使われて疲労が溜まってきているのだ。それがこの訓練の目的さ。基礎の体力の数値も上がってるはずだ」


「言われてみれば足はクタクタで歩くのも困難になってる。こんなにもキツいとは……」


「そうだろ最後まで頑張ればいい結果が待ってるぞ」


「もう少しだけやってやろうかな」


 リリスは魔剣を慣れない草刈りを始めた。

 それから1時間が経った。

 草刈りは半分以上は終わっていて、土が露出された地肌をみせていた。

 特に喧嘩にもならなく、頑張って作業をしている姿に冷はいたく感動していた。

 しかし冷が感動するのには実は別の理由があった。

 彼女達の作業する姿。

 それは冷にとっては、素晴らしい光景である。

 アリエルはムッチリとした太ももをみせているし、リリスとミーコは大きな胸をおしげもなく披露していた。


(草を刈る作業てのは、どうしたってこういう風に見えちゃうんだよな)


 胸の谷間がより強調されたりして思わずガン見してしまう。

 もちろんこの作業は第一に訓練が目的である。

 その次にこの光景となる。

 冷は楽しみつつ訓練できるわけで一石二鳥と言えよう。

 冷がエロい光景を楽しんでいるのは彼女らには内緒としておく。


(バレたら大変だ。作業なんて途中でやめてしまうだろうからな)


「もうだいぶ刈ったよな」


「そうね、私達頑張ったわ」


「あんなにあった草がなくなってる」


「刈ると気持ちいいのは不思議」


「もう二度とゴメンだよ」


「リリスは見ててわかった」


「当分は生えてこないと思う」


「魔法で草が生えてこなくすることできねえか?」


「知らない」


「生えてくるでしょう」


「道場建てたら大丈夫」


「それもそうね」


 そうして素晴らしい姿にみとれていると草はかなり減っていき、ほとんど刈られて綺麗になっていた。


「よく頑張って草刈りをしてくれた。お礼をいいたいくらいだ」


(なかなかやるな君たち)


「ふう〜。疲れた。もう終わりよね冷」


「完了としよう。リリスもよく頑張ってくれた」


「足がパンパンなんだけど……」


「それはわかる。猛烈に足腰を使ったからだな。明日には筋肉痛になってるな」


「筋肉痛! こんな苦労して明日も苦労するのかよ」


「訓練とはその繰り返しなのさ。俺も幼い頃からずっとそうだった。毎日筋肉痛さ」


(思い出す筋肉痛の日々を。懐かしいものだけど)


「苦労されてきたのですね冷氏は。よく不良にならなかったと思う。親に反抗してグレてても不思議ではないです」


「俺は親に反抗するどころか、むしろ感謝してるぜ。なぜならここまで強くなれたのは親のおかげでもあるからさ」


(本当は親が怖くて嫌々だったのだけどね)


 冷の親はこれまた武術の達人であった。

 唯一、逆らえない人物でもある。

 1面草だらけであった土地は、綺麗になっていた。

 

「これなら建物を建てられる。冷の夢の道場てのを。でもその道場てのを作るのには、マリが必要でしょう」


「まぁ必要だろうな。また商人に相談することになる。俺は建築の技術は持ってないので、コチラの建築の技術者に作ってもらうしかないな。マリの値段は交渉するけど、マリは大量にあるから足りないことはないだろうよ」


(1億あるからな、問題ないだろう。ただこっちの世界の建築の相場がわからないだけに、交渉しようにも難しいかな。できるだけ安くさせよう)


「また商人に頼む気」


「それしかない」


「商人ならその点の職人も知ってるでしょう。きっと紹介してくれる」


「商売人ですから」


「そこらへんは俺は詳しくないんだな」


「交渉どころか話すの苦手ですもんね」


「下手すぎ」


「そう言うな。これでも信じられないくらい進化したんだ」


「以前は話すのも出来なかったんですもんね」


「こうして君たちと話すのも不思議なくらいにな」


「よく成長しました」


「ありがとう」


 道場を建てるとなると、買い物するのとはワケが違う。

 莫大な金が必要となるのは、日本と変わらない。

 普通の日本の収入では、定年まで住宅の建築費を支払うのが、一般的。

 この世界でも同じで、だいたいの冒険者は住宅を支払うのが精一杯であった。

 その点、冷は特別であろう。

 わずかの期間でその資金を手にしたのだった。

 冷は、その事に大変に嬉しく思っていて、なぜならば日本ではニート状態であったから長年無収入が続いた。

 自分の稼いだ金で生活するのは、信じられない変化であった。


(俺が自分で道場を建てようとするとは。嘘みたいな話だ)


 時刻はすでに夕方に成りつつあった。


「体力も使ったし腹が減ったぞ」


「リリスも頑張ってくれたから、お腹が空いたのだろ。みんなも空いたかい?」


「空きました!」


「お願いします。何か食べさせて」


「じゃあご飯としよう。でも宿にはネイルがいるし、宿に帰ってから君たちにも作ってもらいたいが、どうだ?」


「すみません、もう私には料理する力ありません。アリエル、お願いします」


「ちょっとミーコ、アリエルに任せて大丈夫か」


 リリスは多少の疑問文で言った。


「それはどう言う意味でしょうか。まるで私の料理が不味いみたいに聞こえたのよね」


 ちょっとキレ気味になるアリエル。


「……いやいや、そうではないが、つまりはみんなで作ろうと言う意味だ」


「そうは聞こえなかったわ」


「よし、君たちに料理は任せるぞ。俺も腹が減ったから」


(全員で作れば問題はないだろう)


 宿に帰宅して、ネイルが待っていて、冷に飛びかかってきた。


「おかえりなさい〜主人様!」


「おお〜ネイル、おりこうにしてたかい?」


「はい、ずっと部屋で待ってました」


「よしよし」


 冷はネイルの頭を軽く撫でてあげる。

 ネイルは嬉しそうに甘えた。


「う〜、お腹空きました!」


「そうだろう、これからみんなで作ろうって言ってた」


「ネイルも一緒に作りましょう。材料はあると思う」


「なんだか皆さん泥だらけですが?」


「ええ、草を取ってたから汚れたの」


「えっと……草を。材料にする為ですか」


「違いますよ」


「食べれませんから草は」


「食べれないのに泥だらけになるまで。大変な1日でしたね」


「大変な1日です。もうしません」


「私も」


「絶対にしないぞ!」


「そう嫌がるなって。きっと役にたってるからさ」


「明日はゆっくり寝てます」


「当然に休みにします」


「いいわよね?」


「いや〜、もっとトレーニングしたかったけどな」


「したければ冷がひとりでどうぞ」


「寂しいこというな」


「明日は休日ですからね!」


「わかった、わかった」


(ここまで言われたら仕方ないか)



 その後は約束通りに女子だけで料理を開始し、無事に晩ご飯を終える。

 

(今日は訓練として草刈りが終わった。明日には商人に会って道場の建築に相談しに行こう)

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