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数日が経過したある日。
「すみません冷さん!!! お知らせです!」
部屋の戸が叩かれて声がした。
宿屋のエクセリアの声である。
「なんでしょうか?」
「たった今しがた、王都からの騎士団が来ましたと。そして冷さんにお会いしたいとのこと」
「騎士団ですか、わかりました会いましょう」
「騎士団は冒険者ギルドに居ますから行ってください」
「直ぐに行きます」
冷は即座に会うと答えた。
「ようやく来たようね」
「うん、さっそく出発だ」
冒険者ギルドに呼ばれた冷を呼ぶとして、どうやらサイクロプスを倒したから、それで王都から使者が来ていてご苦労様である。
わざわざはるばる冷に会いに来るなんて、有名になった証拠だろうと思った。
(もう迎えが来たのか)
「俺は冒険者ギルドに行くから、ネイルはまたここに居るんだ」
「はい主人様」
「アリエルとリリス、ミーコは俺と来てくれ。王都からの使者に会ってくれ」
「またマリが貰えそうだな」
リリスが金の話をした。
そこに反応したのがミーコ。
「多額のマリ……」
「たぶん褒めてもらい、そのついでにマリを貰えるはずだ。前回のオークの時と同じようにな」
「どうしたミーコ、急にそわそわしてきて落ち着きがないぞ」
「いや、なんでもないです。別にマリにはぜ、ぜ、全然、興味ありませんから」
「興味ないか。全部ミーコにあげようとしてたのにな、残念だな」
「ええ!!」
おおっぴらには言えないでいたミーコ。
いつかは冷から盗んでやろうとたくらんだ。
「騎士団が待ってるのですよね、待たせるよりも早く行きましょう」
「そうだな」
「本当に騎士団なのか」
「どうしたリリス。疑ってるのかよ」
「話が都合よく出来すぎてないかよ。魔人てのは王都は戦わないこたで有名なんだよ」
「戦わないとは?」
「魔人とはなるべく戦わずにいて、平和を保つ。ガチで戦ってどちらかが絶滅するのを避けてる感じ。魔族ならそこらへんは知っていて当然。その王都から評価されるのって変な感じしてさ」
「なるほどな、評価よりも俺が邪魔じゃないかとなるか」
「完全に信じるのは危ないとおもうぜ」
「ありがとうリリス。念のため気をつけて会うことにしよう」
騎士団には会うとして、100パーセント信じるのはよそうとした。
話の内容は、前回オークはそうだったから、今度も同じだろうなと。
冷としては金はあるほどいいわけだから、貰えるなら貰っておきたく、待たせるのも悪いのでさっそく出発し宿屋を出発して冒険者ギルドに直行。
すでにギルド店内ではユズハが冷が来るのを待っていた。
「冷さん、お待ちしておりました」
「どうもです」
「俺が呼ばれたと聞きましたが」
「はい、とても大事な要件ですので」
ユズハに言われてみて、待っていたなんて嬉しいひとことを貰い、ほくそ笑む冷。
(お待ちしていたとは、ちょっと嬉しいひとことだ)
そして王都の使者、騎士団もいた。
「すみませんね、待たして。俺が冷です。あなた方が王都からの騎士団ですか?」
冷は丁寧に失礼のないよう挨拶するのは、無礼なイメージはつけたくないってのもある。
「はい、私達が王都の使者でして、冷さんにはハンマド国王から大変な成果だと大喜びしてます、それで国王はあなた、冷さんにぜひとも一度王都に来てくれぬかと言われたのです。もちろんサイクロプスも一緒に同行してですが。もし問題なければどうでしょうか?」
スタンダール国のハンマド国王が冷に王都に来いと言われたようであって、予想以上に歓迎されてるのに上機嫌となる。
(うわぁすげぇ話がデカくなってる。俺が国王に会うて大変なことなんじゃないのか。いち市民が国王に会うなんて普通なら一大事だろうし。俺としては全然構いません。むしろ王都にも行ってみたいくらいだ。王都と言えば城があるだろうしな。異世界小説でも王都には城ってあったからと、簡単な理由。単純に興味本位であるが、面白そうだな。向こうが来てくれというのだから、悪い扱いはされないと思う。よし、それならば王都に行くの決定します)
「どうするの冷、王都って遠いのかもよ?」
「俺は行くことに決める、だって面白そうだしな」
以前の日本に居た頃の冷なら絶対に行かなかったもので、自宅警備員時代の冷からすると、今はずいぶんと行動的になったものであろう。
「簡単な理由だなおい。それでいいのかよ」
リリスにも軽くみられた。
「私達も一緒にですよね。冷氏ひとりでは寂しいですから」
「行ってくれるとありがたい。ぼっちは寂しいし、退屈だろう。君たちを見れないのはつらい」
「今さ、私の胸を見て言いましたか?」
「むね! 違う、違う、全然見てないよ。俺は真剣に言ってる」
(なぜミーコは俺が胸を見ていたのが、わかったのだろう不思議だ)
「その目が怪しいです」
「どうしたのですか冷さん。仲間から信頼されてると思ったのに?」
今のミーコとの会話を聞いていたユズハは、冷がまるで疑われているように聞こえたのだった。
「いやいや、これはいつもの事なんですよ。あはは。俺は信頼されてるから大丈夫です」
「信頼されてると自分で言うか!」
「そうですよ、お風呂に入ってあんな……こと……」
「ああああああっ! それ以上いわなくていいからな」
「えっと……、お風呂で何かあったと?」
「ユズハさん、全然気にしないでください。それよりも騎士団を待たせるのはまずいから」
「ああ、そうでした。王都に行くならお気をつけて!」
「はい、じゃあユズハさん。俺は王都に行ってきます!」
「いってらっしゃい冷さん。あなたならハンマド国王も気に入ると思います」
ユズハは冷に行ってきますと言うと思わず微笑みが溢れる。
(こんな美人に言われると嬉しいくなるな)
「ありがとう! あと騎士団の皆さん、王都に行くのは馬車ですか?」
そもそも冷は王都がどこにあるのかも知らないし、スタンダール国がどれくらいの大きさかも、日本くらいの面積なのか、それとも東京都くらいなのか、それすらわからないが迷子にならないようにしたいとは切実に思った。
(まさか歩きはないよな)
「はい、馬車を用意してありますから心配はいりません。王都まで我々も同行していきますし、サイクロプスもです」
それなら話は早いと冷は文句は一切なかった。
(アリエルとリリスとミーコも一緒で大丈夫か。ちょっとそこら辺が心配なんですが。なにせあの3人は珍しいな存在だから、国王もなんとおっしゃるか。びっくりしなければいいが)
「馬車があるのならお願いします。それとここに居る女の子も一緒でいいですか、大事な仲間なので。馬車に余裕があるのかわかりませんが?」
「3人くらいならお乗せできます。冷さんの仲間でしたら国王も喜ぶでしょう」
「君たちも構わないだろ王都に行くの?嫌なら残るようだぜ」
「いいえ、女神としては一度、国王にお会いしたいです」
「女神だって言う気かい。信じるかな」
「信じるに決まってます。王様なんだから」
「いやいや王様とか関係ないし」
「アリエルは決定としよう。ミーコは勇者の血を引くと言えば、好待遇されるかもな」
「好待遇ですか……。それは現金でしょうか」
「ミーコは金しだいか」
「そ、そんなことありません」
「その顔は大有りだろ」
「違いますから!」
「行ってみればわかるさ。ミーコも決定だな。残りはリリスか……魔族だけに大丈夫って心配もあるが……」
(リリスは微妙な感じするな。淫魔は王都からみて敵だろうし)
「淫魔でもお前の仲間だと言えばいいだろう。さすがに仲間を失礼な扱いにはしないよな」
「逆にリリスを危険視する可能性もある。なにせ淫魔は魔族の頂点にいた時代もある。隠したほうがいいですわ」
「あの〜〜もう聞いてますが?」
騎士団がアリエルに報告した。
近くにいるのだから聞こえるに決まっていた。
今さら隠しても無駄であった。
「聞かれてしまったからにはリリスは置いていくことにしましょう」
「アリエル! 勝手に決めるな!」
「わかった、わかった、リリスの事情は俺から説明するとしてこれで決定したな」
そこへユズハがサイクロプスとヘスティが縄で繋がれた状態で連れてきた。
サイクロプスは暴れることなく静かである。
「騎士団さん、サイクロプスとヘスティをお願いします」
「!!!!!!」
騎士団は魔人2人を前にして、異常な程に驚いてしまう。
「さすがに騎士団も驚きますか?」
「驚くに決まってますよ! 魔人ですから。それにヘスティまでも! 一度に2人も捕まえちゃうなんて、恐ろしいです冷さんは」
「ここのギルドではこんなのは日常です。毎日驚いてますから私は」
「はぁ〜〜」
あきれてしまう騎士団。
「俺を王都に送ったとして、どうするのかだよ騎士団さん」
「!! こ、これは国王の命令だ。おとなしく王都に来ればいいのだよ!」
「別に暴れる気はない。逃げる考えもないから安心しろ」
「魔人といて安心しろか……」
「サイクロプス様に失礼な口をきくなっ!」
騎士団に対してヘスティが怒鳴った。
尊敬するサイクロプスに失礼な言い方に頭にきたのだ。
「ヘスティ!!」
ヘスティににらまれて恐縮する騎士団。
これは面倒だと感じた冷はサイクロプスに、
「少しヘスティを黙られせてくれよサイクロプス」
「ヘスティ静かにしてなさい」
「はいっ!」
サイクロプスの言うことには従った。
ギルドの中にいた冒険者はサイクロプスを見るや、驚がく。
上級レベルの冒険者でさえ恐ろしくて有名なサイクロプスを目の前にしたから。
誰も口を聞く者はいなくなる。
恐怖で黙り込む。
「それでは冷さん、外でお待ちしております」
使者の言う通りに馬車が待っていた。
人生で馬車で旅をするとは冷は思いもつなかくて、家から出てバスに乗る、電車に乗るのさえ、億くうであったからで、理由としては面倒くさいてのが1番の理由である。
「馬車は私は初めてだわ。何しろ転生の場にはなかった」
アリエルは馬車を物珍しく見つめていて、その目の動きからどうやら初めて乗るようで怖がっている様子を感じるも、冷は他の移動手段があるのかと思ってみた。
「じゃあどうして移動してたんだ。まさか自由に飛んだりしないだろうな」
「時空系の魔法の装置があったから、簡単に移動出来たのよ」
「それって瞬間移動って奴か?」
(まさかそんな便利な魔法があるとは。ワープっていう物だろうが、1回でも使ったら病みつきだよな。もう歩くのも嫌になるから、使うのも考えものだ)
冷は知ってる知識で想像すると使ってみたいと思うのは、スキルストレージが出来るようになって以来のことで、いつの間にか何でもスキルとして使えるようになれると考えるのであった。
「時空移動よ。私は使えないけど、使える者がいたのよね。あれは便利よ。冷も使えるといいけど」
「俺はわからない、なにせ相手から真似るだけだから、そもそも俺が自分で習得したスキルなんてないんだし。期待はしなくていいよ」
そこに騎士団の方がやってきた。
「では冷さん、サイクロプスも乗せましたし、準備が整いましたようなので王都に出発します」
「よろしくお願いします!」
冷が挨拶すると準備は終了して出発して、大事なサイクロプスは縄で繋がれたままであるが、冷達とは別の馬車に乗せられた。
(ずっと縄で繋がれた状態もキツイかもな。ちょっと可愛そうになったが、サイクロプスは静かに黙っていたな。俺のスキルの縄を破れないとわかってるようだ。意外と物わかりがいいのね。使えるスキルを手に入れたものだ)
馬車は軽快に走り王都に向けて走りぬけ、馬車での移動は何日かかかってしまう。
(数日はかかるようだ)
疲れが見えたところで馬車が減速していくと、要塞のような形をした壁が現れた。
(なんだろう、これが王都なのか。ずいぶんと立派な外観だな。俺が外に見えた町を見るとリリスも気づいたようだ)
「あれが王都だろ、壁もあるし中には城がたってるしな」
リリスは城の方を指差した。
「さすが王都というだけはある。なんか緊張してきたぜ」
「冷は緊張することないわ。悪いことしてたのはサイクロプスなんだから、罰せられるのはサイクロプスよ。褒められて懸賞金的なお金をを貰えて、さらに国王からも信頼される。城にも特別待遇で接待されるはずよ」
「俺は特別待遇とかされたことないし、わからないな」
日本では特別待遇なんて経験はもちろんない冷は、イマイチぴんとこないであるも、ハンマド国王からは喜ばれてるのはわかってるので、お金だけもらい帰ればいいかぐらいの考えであり、むしろ他の方に興味があるのであった。
それは国王から賞賛され英雄扱いされるよりも冷にとっては興味があることで、それは。
(王都っていうくらいだから可愛い女の子がいっぱいいるのかな。都会の女の子は可愛いのは万国共通であろうから、期待していいだろう。あまり見てるとアリエルに怪しまれるから、風景を見てると思わせて女の子をチェックして行こう)
と招かれた英雄である冷は、評価されたいよりも性欲が上回る。
「まぁ普通にしてればいいわよ」
馬車は王都城下町を走り中央付近にある城にたどり着いて、冷は驚いたのは城の門にはすでに衛兵がズラリと並び、馬車が着くなり冷を出迎えるという高待遇、それは一般庶民扱いではなく、華やかな貴族、美しい令嬢、気品ある王族への対応であろう。
「冷さん、お待ちしておりました。ハンマド国王は城内におりますから案内します」
「お願いします」
(俺がこんな待遇を受けるとは)
衛兵に引き連れられて城内に入ってみた冷は、あまりのスケールのデカさに圧倒されたのは言うまでもなく、大きさは高層ビル、巨大な賃貸マンション、の様であり、ついキョロキョロと見回してしまう。
(凄い迫力だ。まさに城って感じする。写真にでも撮っておきたいくらいだ)
冷が城内で視線を変えて見てると、リリスから忠告を受ける。
「おい、さっきから落ち着かないぞ。少しは前を向いて歩けば。まさか城の可愛い女の子を見てるとかないよな?」
「だってさ、こんな感じの建物に入るのは生まれて初めてだから、すげぇなって。リリスだって思うだろ?」
「別に思わない。私がいた魔族の住処は城があったけどな。だからお前みたいに驚きはしないかな。あっ、ゴメン別にお前が一般庶民だったと馬鹿にしたわけじゃないから気にしないで」
「その言い方が、十分俺を馬鹿にしてるけどな」
(城に来て俺の生活レベルを比べられるとは思わなかったぜ)
一般庶民というククリにされリリスを一瞬見て呟く冷であったが、確かにセレブレーションな生活などしたことなく、家族での外食だってそんなになかったし、焼き肉なんてめったに食べれないし、ラーメン屋も食べたくても我慢してたしと、思えば一般庶民だなと思った。




