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 翌日。

 昨晩は初の混浴風呂を楽しみ愉快である冷。


(昨日は思う存分楽しめたな)


 しかし冷が、しでかした事態に本人はまだ事の重大さを感じていなかった。

 2人の中級魔人を倒したという事実。

 それも国から危険視された2人の魔人を。

 当然に国はこの知らせを直ぐに耳に入れた。

 冷の居るスタンダール国。

 ハンマド国王は魔人サイクロプスを捕らえたという知らせを聞いた瞬間に飛び跳ねて驚いた。

 

「本当になのかサイクロプスを捕らえたという情報は!!!!!! で、その捕まえた者は誰だ、さぞかし名のある冒険者なのだろう?」


 衛兵にその者の名を尋ねる。

 興奮しているので、衛兵も緊張している。


「はい、その者の名は冷と聞いております。ピルトの町からの情報でして、そこに滞在もしてます。ちなみに冷は中級魔人オークを倒してもいます。よほどの実力者である可能性があります」


「冷……か。あのオークを倒したという者か! 恐ろしい能力を秘めているに違いない。1度王都に来てもらいたい。もちろんサイクロプスも一緒にだ。そして彼には多額のマリを支払うように。それをピルトのギルドへ伝えてくれ」


「わかりました、直ぐにピルトの町に使者を送ります」


 ハンマド国王は冷に大変な興味がある。

 国ですら恐れる魔人、それを2人も倒したとあれば、世界の均衡に影響を与える。

 中級魔人を超える優秀な能力者なら国も欲しい人材であり、国の騎士団として雇いたいし、また幼い頃から訓練に金をかけて国も衛兵を育ててる現状を考えれば、冷の冒険者の価値は数万の衛兵に値する。

 ハンマド国王は直ぐにでも会いたいと思うのは当然であって、冷が国にいる間に会って、スタンダール国と良い関係を築きたいという欲深い考えを実行に移した。


「またもやあの冒険者のお手柄なの?」


 国王の娘であるビジャ姫が聞いていた。


「まさかとは思ったが、一度ならず二度もとは。恐れいる」


「王都に呼ぶのでございますか」


「そのつもりだ。魔人は敵。そして倒せる者は限られておる。そのひとりなのだから、歓迎しよう」


「私もお会いしたいでございます。よろしいですか」


「構わないぞ。ビジャが会いたいのなら。どんな冒険者かは知らないのでもいいならな」


「ええ、お会いします」


 そこへ側近である軍師コロナが加わり、


「ハンマド国王、申し上げたいことが……」


「軍師コロナか。どうしたのだ?」


「今の話を聞いていたのですが、冷とか言う冒険者は、かなり危険な面もあると思いまして」


「危険な面とは何だ。我々の味方だろう。魔人を倒しているのだから。それとも魔人を倒してるのが心配だと?」


「はい、現在に至るまでこの国が安定していられるのは魔人と大きな衝突していないのもあります。あえて魔人を刺激せずに静かにさせてる。そのおかげで犠牲者は減ってきていました。それを冷とか言う冒険者、それもまだ新人である冒険者がいきなり魔人オーク、サイクロプスを倒したとなれば、どうなるでしょうか?」


「うんん〜〜〜〜〜ん、確かに、魔人を刺激しない策でここまできたのはきた。ただし、倒してしまったからには褒めるべきではと思うが」


「もし、今回の一件で他の魔人が刺激されて動きだしたら。それこそ大変な事態となります。手がつけられなくなってからでは遅いです」


「では、どうしろと」


 軍師コロナは王都でも権力があり、国王からも信頼されている。


「今回は賞金は出しても、もう魔人には手を出すなと言うのです。そうしないと危ないです。私はそう感じました」


「軍師コロナ、あなたの意見はもっともでしょう。しかし冒険者の冷が全ての魔人を倒せるのなら、とても強力な味方となります」


 軍師コロナが冷を否定的にしたらビジャ姫が、反対意見を出した。


「び、ビジャ姫殿、いくらなんでも魔人を全員倒すのは無理でしょう。不可能ですし、その為に今まで苦労して魔人対策してきたのですよ」


「どうしてコロナには冷が不可能とわかるの。まだ会ってもいないでしょう」


「それは、そうですが……。常識と言うものがあります。国の将来がかかってますから、私は冷に言うべきだと思います」


 ビジャ姫は冷をコロナほど否定していないとわかると国王は、


「わかった、わかった、軍師コロナの意見も考慮しておこう。ビジャの気持ちもわかるが、ここは国の安全を優先しておく。冷には伝えよう。それで良いな、ビジャ?」


「はい」


 ビジャ姫は納得はいなかったが、これ以上の意見を言うのは無理だと思い返事をした。

 


 冷の居るピルトの町は、小さな町ではあるが現在のところ、国内で最も注目される町になる日が近いのは冷も特に自覚していなくて、それよりもサイクロプスを倒して貰える金で再び奴隷商館に行きたいと思ってる始末。

 ネイルを高額なマリで購入しても余りある活躍、もちろん冷にしてみれば夜の戦いにおいてだが、大絶賛してもしつくせない程の価値があるとわかったから、奴隷商館の事を考えることしか頭にない冷となったのは説明はいらないだろう。

 冷はサイクロプスとの戦いで精神的にも肉体的にも疲れた為にネイルにスキル、癒しの手でマッサージしてもらうと、疲れは次第になくなっていくのがわかるし、いつまでもこうしてマッサージしてもらいたいなと、日本なら確実に高額な料金を取られるので冷にはネイルの有り難さは言葉に出来ないくらいの価値となろう。


(これは気持ちいい)


 アリエルは、その光景をみていたが、サイクロプスを倒したという戦績は馬鹿には出来ないのであり、甘えるのは今日くらいは許してやろうと冷を責めるのはしなくて大目に見てやろうと、褒めてあげたいくらいであった。

 褒めると直ぐに調子にのる冷の性格から言葉では褒めるのはしなく、あえて厳しくしてやらないといけないと感じるリリスは、この後に控えるであろう、多分いつか出会うという意味で、上級魔人や魔王との違いに冷がわかっているかが気がかりな思いで、それをどう伝えるかが難しいとなる。

 つまりは今の冷の能力ではとうてい勝てる見込みはゼロで、むしろ瞬殺されるのがリリスにはわかっていたから、それも確実に絶対にであるとして、冷が楽しんでるのは今だけかも知れないと教えたいのに、教えられないリリスであった。

 それはもう絶望的な差、圧倒的とかそんな言葉では表せないくらいの歴然とした差を。

 魔族ならばその程度の知識は持っていて当然となる。

 

「ありがとうネイル。気持ちよかったよ。また今度癒しの手をしてくれな。お前の癒しの手はホントに最高の癒やしなんだから。お前のおかげといってもいいくらいだサイクロプスを倒せたのは」


(マジでいいなぁネイルのコレは。いつされても気持ちいいし、特に今日はいい。それともし次にギルドに行ったらサイクロプスの件でまたマリを貰えそうだ。そしたらまた奴隷商館に行きたい。ネイルはどう思うかな。もう一人増えたら嫌がるのか。ライバル視することもあるかもしれない。俺にはわからないが、そこは訊いておいた方が良さそうだな。アリエルとリリスは間違いなく反対だろうが俺がどうしても欲しいと言うしかない。ギルドから連絡が来るのが楽しみだ)


「嫌だ主人様たっら、それは褒め過ぎですわ。少しでも主人様の力になれたらと思ってるだけです。だからそう言ってもらえると嬉しいですわ。もっとサービスしちゃう!」


「嬉しい!」


「何が嬉しいですか! ネイルに甘えてばかりいて! ネイルもネイルよ! 冷に甘え過ぎなのよ!」


 アリエルが横で見ていて思わず言ってしまう。


「マッサージを受けているだけだよ。それにネイルは俺の体を気づかってしてくれているんだ」


「ふん! そう言ってヤケに楽しそうなのはなぜかしら」


「や、ヤケに楽しそうになんてしてないよ、アリエルの勘違いさ」


「そうかしら。私には冷が楽しそうにしてるようにみえた」


「楽しそうというより、気持ちいいのは事実だよ。とにかくネイルの腕はいい。癒やされていく感じだ。とても感謝してるのさ」


「嬉しいですご主人様。アリエルさんに疑われと困るから」


「疑われてって、別にネイルは悪いことしてないぜ」


「いいえ、ご主人様。私にはわかります。アリエルさんはご主人様が好きなのです。だから私がこうしてイチャつくと、気に入らないのだと思いますよ」


「アリエルが俺を好き?」


「な、な、何を根拠にネイルは言ってるのよ!!! 私は女神なのよ。冷のことを好きでネイルに文句を言うなんてあり得ないから!」


「う〜ん、俺にはわからないけどな」


「私にはわかります。同じ女の子として、感覚でわかるのです。アリエルさんが私とご主人様の仲を邪魔してくるのが」


「い、いい加減にしてよネイル! あと、同じ女の子って、私は女神、あなたは単に獣人の娘。全く違いますからね!」


「女の子は女の子ですよアリエル」


 見ていたミーコはネイルの味方であった。


「うううう、ミーコまでも!」


「あはは、アリエル、顔が赤いぜ!!!」


 リリスがすかさずアリエルの変化を読み取る。

 

「赤くなんて……ないわよ〜〜」


 実際は赤くなっている。


「まぁいいだろ。みんな仲良くしてくれ。俺の気持ちは君たち全員が俺を好きになってくれることさ。俺は好きだよ!」


「はあ〜〜!」


 アリエルはもっと赤くなる。

 ミーコは驚いて目が点になる。

 リリスはアホかと。

 ネイルは嬉しくなる。


「おかしいかい?」


「ドサクサに紛れて変なこと言ってんじゃねぇよ!」


「あれ、リリスは俺のことが好きではないのかな」


「知らなねえし!!!」  


「面と向かって言われると……ビックリしちゃう!」


「ミーコも顔が赤くなってる」


「イヤだわ……」


「ご主人様っ、嬉しいです。私に言ってくれて!」


「もちろんネイルも好きさ。つまりそういうことだから!」


「変にまとめられた気分ですが」 

 アリエルはそう言ったが、実は嬉しい気持ちはある。

 ネイルはいつになくサービスたっぷりでマッサージを追加したら、もちろん無料だが、なんとも冷は気持ち良くて寝てしまった。


 冷がうたた寝している頃に、本人は可愛い女の子と楽しい夢を見ていて一生夢の中で生きていたいと思ってる。

 ピルトの町では王都からの使者が数名やって来ていて、姿は鎧に見をまとい馬は力強い足腰をした馬で、その見かけからしてひと目で町の人間ではないと判断出来、町の人達は珍しい物を見たという感じで迎えた。


「おお、あれは王都の使者ではないか。鎧にある紋章は間違いないだろ」


「どうしたのだろう。あるとしたらサイクロプスだろうな。きっと送還するためにわざわざこの町に来たんだ。これは大変な時代になるぜ。魔人が2人も倒されたとなりゃ魔人側も黙ってないぜ」


「混乱する時代になるのかもな。だけどこの町には冷が居るさ。彼ならなんとかしてくれるはずだ!」


 町の人間は王都からの使者を目にして足を止めて見入ってしまうのは仕方ない。

 滅多にない王都の鎧に紋章をしてるからで、ピルトの町には珍しい光景であり、それはピルトが片田舎というのもあるのだが、それだけに冒険者ギルド店内のユズハは大慌てになる。

 

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