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宿屋に到着。
もちろん到着するのも熱い視線が注がれまくった。
痛い程の視線を受けつつ。
店員のエクセリアが出迎えてくれる。
しかしエクセリアの耳にはまだこの知らせは届いていいなかった。
「冷さん、おかえりなさい。サイクロプスとは会えたのですか。でもご無事なところを見ると会えなかったようですね。その方がいいかと思います」
冷が無事で帰ってきてくれて嬉しかった。
何の実績も無くていいから、生きていて欲しいと思うエクセリア。
「いいえ、会いましたよサイクロプスなら。冒険者ギルドに置いてきましたから」
(あれ、エクセリアさんまでもユズハさんと同じ感想だな。よほどサイクロプスを恐れていたようだ)
あっさりとエクセリアを否定した。
「は?????? どういう意味ですか? それはサイクロプスを連れて来てギルドに引き渡したということ?」
「そうです、ギルドに引き渡したので国王に差し出すと言ってた。だから謝礼金がたくさん貰える話もありましたから、もっとここに居られそうですよ」
「謝礼金の話まで! ど、どうやってあの凶暴で有名なサイクロプスを連れてこれたのですか。話し合いに応じたと。それは私にはもはや分かりかねないのでしょうが、やはり冷さんはケタ外れの冒険者です!」
エクセリアはサイクロプスの話を聞くとびっくりした。
しかし冷ならあり得ない話ではない。
魔人ですら引き連れて来るのも。
納得してしまう。
「ありがとう。それとこの宿屋にも温泉がやって来るはずです。温泉は俺が開放させましたから。じきにに来ると思う。まぁそれが目的であんな山奥まで行ったんでね」
(旅の疲れもあるので、出来たらすぐにでも入りたい)
「ご迷惑おかけしました」
アリエルが頭を下げる。
「いいえ、私もお風呂は好きですから、嬉しい!」
「ああっ、ダメですわ、そんな彼を褒めたら……」
「本当に嬉しいから嬉しいです!」
「そうですよね、やはり俺のしたたことは正しかったんだ」
「正しかったとか言い出してるし。今のところ反省会状態だったのに」
「えっ……、何か私が悪いこと言いましたか……」
「エクセリアさんは悪いこと言ってません。ただ今言って欲しくなかった」
「ああ、それはすみませんでした。よく事情がわからずに」
「エクセリアさん、謝ることないっす。俺に感謝してくれありがとう。なんだか勇気が湧いてきましたよ!」
「勇気ですか、これからも頑張ってください!」
「はいよ〜!」
「何の勇気ですか?」
ミーコがそこできいてしまった。
「魔人を倒す勇気さ。魔人て残っているのがいるんだろ。残りも俺が戦う」
「ああ、冷は魔人とは縁が切れないよう。魔人が近寄って来たら……」
アリエルが言うとすかさずリリスが、
「おいおい、冷はアリエルが魔人倒す専用で呼んだのだろ。呼んどいてそれはない。呼んだのだから最後まで冷を応援してやれ!」
「そうだぞ、たまにはリリスも良いこと言うな!」
「たまにはかよ」
「こんなに早く魔人と出会い続けるなんて思ってもみなかったよ。ペース早すぎだよ!」
受付けで会話を終えて自分の部屋に向かう。
扉を聞くとネイルがベッドに座っていて、冷の怪我のない姿を見ると飛びかかってくる。
「主人様〜〜。元気でなりよりです〜」
「おお、ネイルか、留守番させて心配かけたな」
(もの凄い弾力の胸が当たる)
「心配でした〜〜」
ネイルは飛びついたら冷の胸に顔を埋めた。
喜びをいっぱいに表現する。
冷も嬉しかったから、頭を撫でてやる。
「ネイルは甘えん坊ですね。冷にベタベタして。もうちょっと厳しくネイルに接してもいいのでは」
アリエルがベタベタと冷に、なつくようにするのが目に触るので言う。
「いいでしょ〜アリエルさん。こうして主人様と抱き合っていたいの」
ネイルは更に体を冷にすり寄せる。
「う〜ん、いいのかしら?」
「俺は構わないさ。ネイルがくっついて来るのは。それともアリエルはこれが嫌いなのか」
「いや、そ、そんなことはないけど」
「アリエルはさ、冷がそうしてネイルとイチャついてると嫉妬してるんだよ。そうだろアリエル?」
「嫉妬!! 嫉妬なんてしてません。なんで私がネイルに嫉妬するのよ、バカじゃないのリリス」
「そんなにムキになるのが怪しいな」
「もうリリス!」
アリエルはネイルが馴れ馴れしい態度で冷と接しれるのがうらやましい。
しかし女神であるアリエルが自らそんな態度は取れない。
だから焼きもちを焼いたのだった。
リリスはそれを知った上でからかったのである。
「アリエル、それなら俺と一緒に風呂に入ろう。もしかしたら温泉が届いてるかもな」
「ええっ、一緒に? 嫌よ……一緒なんて」
「嫌なのか」
「そうじゃなくて……」
「だったら入ろう」
「はい……」
急に顔が赤くなるアリエル。
と言いつつも風呂場に行ってしまう。
温泉が出るかを確認しに。
「アリエルをからかってるリリスも一緒に入るのだぞ」
(油断してるなリリスよ)
「なぜ、なぜ一緒だ。私は一緒になど入らん」
「リリスも一緒でいいだろう。ネイルもミーコ入るのだし。どうせならみんなで入ろう」
「どうせならとか、おかしい! 後で入らせてもらう」
「恥ずかしいとか?」
「恥ずかしいって! それならミーコはどうなんだよ?」
「私は一緒に入りたい……かな」
「なんだミーコは積極派か。私はいいから」
「そう言わずに入りましょう!」
「やめろっミーコ!」
「入るのよ!」
冷は生まれで初めて女の子とお風呂に入るチャンスに恵まれた。
このチャンスを逃す手はない。
日本では女の子と風呂に入ろうなどチャンスは、あり得ない。
風呂どころか部屋に居ることさえあり得ない。
なぜか、異世界に来て女の子に積極的に接するようになれた。
女の子にも風呂に誘えるようになれたのだ。
その結果リリスも承諾させる。
(おお、初めての女の子達とお風呂タイム。夢にまで見た混浴だ。ありがたいです。スキルで俺は人生が変わりそうっす)
スキルに深く感謝する冷。
そこにアリエルから明るいニュースが聞こえた。
「冷〜。蛇口から熱い温泉が出るわ!」
「もう出るか。みんな風呂場に集まれ」
冷の掛け声でアリエル、リリス、ミーコ、ネイルが集まる。
風呂場は脱衣所があった。
中に風呂がある仕組みだ。
そこで冷は準備をしなければならない。
先ずは風呂に温泉を溜める。
これは問題ない。
だれでも出来るだろう。
次が問題であり、風呂に入るには服を脱ぐ作業がいる。
直ぐには脱がないとしも、とても緊張のする間となった。
「温泉の湯を溜めるのはアリエル頼む」
「わかったわ」
風呂に温泉の湯を溜めるのはアリエルに任せた。
しばらくはまた脱衣所から出て待つことにした。
「温泉の湯が溜まったわ」
「よし、それなら脱衣所にいく。だからみんなは服を脱いでおくこと」
(この時がきたか)
脱衣所では真っ先に冷が裸になる。
マナーとしてタオルを腰に巻いたが。
「脱げばいいのよね!」
次にネイルがスルッと脱いだ。
ネイルは冷に忠誠心が高い為に何の抵抗なく脱いだ。
(ネイルはやはり良い子だ。それに体も素晴らしいです。反抗もしないし最高の子を手に入れたな)
「私も脱ぐの?」
アリエルが少しためらう。
「もちろんさ。たとえ女神だろうと風呂は脱ぐものだろう。それに服を着たままでは無礼なんだ。だからアリエルとリリスもちゃんと脱ぐんだ、わかったな」
「そう言われると無礼な気もする。女神としてルールは守るのは大事」
「そうだよ、別に変な考えは捨てればいい」
「なんか騙されてる気もするが……」
リリスは素直には受け入れないで怪しんだ。
裸になるのが冷のペースのような気がしてならない。
「リリスは考えがダメだ。警戒心を解けないと風呂に失礼なんだな」
「失礼て、お前の考えが変なんじゃないか」
「ほらアリエルも脱ぐようだ、リリスも脱ぐんだよ!」
「脱ぎます」
「アリエルが自分から脱ぐとは、仕方ない脱ぐか」
「それでいい」
「無礼な行いは女神としては避けたいから、でも後ろを向いてて」
恥ずかしそうに冷にお願いした。
お願いされた冷は嬉しかった。
(アリエルは脱ぐそうだな。女神だから礼儀を重んじると思い言ってみて正解だったようだ。本当は嬉しいのだが、あえて厳しい態度を取ろう。俺が裸を見たいと思わせないためだ)
「わかった、後ろを向いてるからその間にアリエルは脱いで風呂に入るんだぞ」
冷が後ろを向く。
アリエルとリリスはこうなったら恥ずかしがることはないと脱いだ。
「私も脱ぐのですよね?」
「ミーコだって一緒にはいるのだから当然だ。ほらアリエルだって脱いでるだろ。恥ずかしがることはない。むしろミーコひとりだけ服を着てる方が変に感じるぞ」
(そう言えば、脱ぐのでは……)
「確かに私だけ裸じゃないのは変ですか……。わかりました、勇者の子孫として潔く脱ぎましょう」
ミーコも始めは戸惑っていたが、結局は脱ぐのだった。
そして風呂の方へ行った。
(どうやら、4人とも風呂にいるのか。これは俺にとって人生初の混浴となりそうだ。こうはしてられない、さっそく俺も入浴させてもらおう)
冷は嬉しさを我慢して顔に出さない努力をした。
風呂の大きさはかなり大きく、すでに4人が湯に浸かっていても余裕。
(いがいに大きな風呂だな。日本の家にあるような風呂よりも大きい、どちらかというと銭湯に近いかな。小さいよりは大きい方が良いに決まってる。イメージと違うが得した気分である。俺も入れそうだから入らせてもらおう)
「俺も入るぞ」
「どうぞ主人様。凄く熱いです」
「どれどれ、おお熱いな確かに、でもこれが温泉てもんだ」
「温まります」
「神も風呂に入るのですね」
「そうよ、綺麗にしてないと不潔ですしイメージが悪くなるから」
「イメージつて、そこまで考えてるなんて素晴らしい女神ですアリエルさんは」
「いいえいいえ、そんな素晴らしいとか照れますわ!」
アリエルは顔を赤らめる。
「これは中々いい気分だ。だけど、私を見るなよな」
リリスは気分良くなるも、冷への警戒感は解かないでいた。
「見たっていいだろ」
「そうだよリリス、もう何度も裸を見られてるのだし、恥ずかしがるのは変な感じします」
「そう言われると反論しずらいけど、風呂にはいるとなるとなぜか恥ずかしいのだよ」
「きっとリリスも女の子なのよ」
「きっとってなんだ! 見てわかるだろ、女の子だよ私は」
「あはは!」
「ネイルって獣人族でしょ。尻尾ってあるよね?」
興味深そうにきくアリエル。
「ありますよ、ほら」
「触ってもいい?」
「どうぞ!」
「本当に獣ですわ。私には無いから不思議です」
「アリエルさん、尻尾ってこんなことも使えるのです!」
「きゃあっ!」
ネイルは自分の尻尾を使い、アリエルの体を触ると、アリエルはビックリして声をあげる。
くすぐったいからである。
そして驚いた後に冷の方に抱きついて……。
「あ、アリエル、俺がそんなに好きなんだな、嬉しいぞ!」
「ち、ち、ち、ち、違いますから!!!!!」
抱きついてしまった後に慌てて冷から離れる。
「違いますとか言って、本当は抱きつきたかったとか?」
「違います! ネイルが尻尾で触るからビックリしたのよ!」
「私はちょっと触っただけなのに」
「う〜ん、なんかうらましい」
「ミーコもまさか抱きつきたいとか?」
「いいや、そんなことありませんです!!」
ちょっとだけうらましく見るミーコ。
冷は湯に入り温泉を堪能。
堪能したのは湯だけではない。
(裸の女の子と一緒に入る風呂は格別だ。しかも今日だけじゃなく、明日もずっとこれが楽しめる。やはりサイクロプスを倒して正解。苦労の甲斐があるってもんだ。ちょっと傷口に染みるけど)
最後は温泉に感謝して1日の疲れを取るのであった。




