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 ガッパオ山はピルトの町から遠く離れた山々の1番奥深くにそびえていて、火山でも有名で地下からは豊富な温泉の源泉が大量に湧き上がる地域として有名な山である。

 冷が転生してくる遥か以前から温泉を無料で供給してきた。

 それが今ではサイクロプスが自分の私物化して以来、時間としては数十年前になるが、それからは周辺地域は温泉に対して馬鹿高い代金を払わざるを得ない状況になるも、誰もサイクロプスには逆らえず、逆らえば抹殺された為に、今の状況を耐えているのだった。

 そう言うとサイクロプスは残虐な手のつけようのない魔人と思われるが、本人はと言うとむしろ逆で戦いは好まない性格を持ち、戦いは面倒くさいという考えの魔人、魔人としては珍しい性格であろう、であることは意外と知られていない事実であった。

 よってサイクロプスは要求通りに従い金品を差し出せば、抹殺などすることはないと思っており、勝手に武力で対抗してくるから抹殺して大量虐殺者となってしまった。

 サイクロプスはガッパオ山の源泉近くに居を構え、毎日湧き上がったばかりの温泉に浸かるのが最大の至福で、これ以上ない快楽となっており、自分の配下にも専用の温泉を作り使用させる程温泉好きであった。

 魔人とし温泉好きなのはどうなのかと言われれば、魔人は風呂に入る必要もないし、入る魔人の方が少ないといえる

 そんなの俺には関係ない、入りたいから入ると配下の魔族たちには常々言ってきた。

 同じ中級魔人達と合ったときのこと、中級魔人達が集まり会議をする機会があり、サイクロプスも参加を求められたのだが、もちろん実力は認められていた。

 参加するのを拒否したので、仲間からは無理矢理に参加させられていた。

 人族らを減らす為の具体的な作戦であって協力を求められたのだが、面倒くさいという簡単な理由で断ってしまうから、仲間も困った存在だという認識にされていた。

 しかしその実力たるや破壊力は一度戦えば相手は甚大な被害は免れない程に強烈な能力を持ち、下級魔人からは心底恐れられる立場となっていて、サイクロプスを馬鹿にする者は皆無であった。

 人族側の王都ではサイクロプスは危険魔族の範ちゅうに置かれ、いつでも監視状態にされ続け、ガッパオ山から一歩でも動けば即座に王都に報告される仕組みで、国の民衆にはガッパオ山には立入禁止の指令を国王自ら発信した。

 テーブルにつきコーヒーをカップにいれて飲み、甘いお菓子を食べていたサイクロプスはピルトの町で出会った少年のことを考えている。

 なぜか気にしないようにしてても頭に少年が浮かんでくる。

 その少年とは冷のとこだが、理由はわからないとしても何か少年の持つ不思議なオーラと言えばいいか、忘れられないのがサイクロプスを悩ませていた。

 同じくテーブルにつくのは側近でもある下級魔人へスティで、彼は冷を目撃したが特に何も感じる物はなく記憶にも残っていない。

 冷が魔力を最大限まで引き下げていたのもあるが、その程度の認識でしかなかった。


「ひとつきいていいか、ピルトの少年を覚えているか?」


「し、少年ですか……どの少年でしょうか、サイクロプス様の指してる者が全く思い当たりませんでして、少年など町には何百万人といましたから」


「まぁそうだよな。俺も考え過ぎか」


「少年とは言え、もしや王都のさしがねと?」


 へスティは側近でありサイクロプスからは唯一近くに居ることを許された魔族であり、信頼の置けるもあるがへスティは言葉には細心の注意を払い会話をするのを心がけていて、もし間違って言葉を返せば命はない事と肝に命じていた。

 サイクロプスの目はどこか遠くを見てるような透き通った目であり、へスティはあった時から忠誠を誓った。

 崇拝してる存在としてあり絶対的な立場、サイクロプスになら全てを捧げる覚悟もある。


「違うな。単なるスパイじゃないあの少年の目は。見たこともなかった何かを俺には感じさせた。底しれぬ魔力と途方もない鍛錬をした肉体を秘めた風に。この俺をも超える何かを感じる」


「さ、さ、さ、サイクロプス様の考え過ぎにも思えます。そんな少年がサイクロプス様を超えるだなんてご冗談でしょう。そ、そ、それならこのへスティにも感じたはずですが、あいにく私は何も感じることはなかったのです。それともオーク様の件が関わってるとお思いになられると?」


「ピルトの町でオークは死んだのだろ。情報では少年が殺したと伝わっておる。もっと詳しい情報が必要だ。もし俺が見た少年がオークの件と関わってるとしたら、侮れない相手になるのだから。俺としては別にオークのかたきを討とうなど毛頭ないがな」


「はい、オーク様は不幸でした。ギルドが情報を持っておりますが、当然魔族には詳細な情報は教えませんから、もう少し詳しく調べさせます」


「頼む、やや気がかりなんで」


「きっとオーク様の件で神経質になられてると思います」


「自分でもわからないが、そうかもな」


 下級魔人であるへスティには冷を見かけてはいたのに、本当は目撃したことも覚えていない、オークを倒した少年だったとはよそうだにしていなかったのは、へスティにはそこまで見抜けなかったといっていい。

 逆にサイクロプスはその点に関してだがオークを倒した少年という情報と見かけた冷を結びつけていて、同一人物かどうかを考えてもいて、もう二度と会うことはないだろうと気にしないことにした。


 冷、アリエルとリリス、ミーコは馬車に乗り込みガッパオ山に向かっていて、道中は途中魔物にも出会ったが無視することにして、それよりも早くサイクロプスの居る所に着きたかった。


「冷はサイクロプスに会って何ていうつもりなの。源泉を開放してくれといったとして、向こうは開放してあげますとは絶滅言わないでしょう。その時はどうする気?」


 アリエルが不安な目で言うと、


「サイクロプス次第だろうな。言っても駄目なら力づくで開放させるしかなくなる。俺としてはなるべくは戦いは避けたいがまぁ無理だろう」


(出来れば話せる相手であって欲しいがな)


「結局は戦うことになりそう」


「魔人とは戦うしかないのだろう。だって俺はその為に来たのだしさ、上級だろうが下級だろうが全員と戦って勝てばいいんだよな」


 相手に限らずどんな敵だろうが自分は自分だと冷は考えなのだが、周りの者には何も考えていないのではと思われてしまうのは致し方ない。


(やはり魔人と俺は戦うしかないのだろう)


「簡単に言いますが、サイクロプスは恐ろしく強いでしょう。勝てる見込みはあるのかな、例えばこうすれば魔人に勝てる的な、一度はオークに勝てたのでコツを掴んだとか?」


 ミーコが確かめるように冷にきいてみる。


「コツはない。はっきり言ってない。どんな奴なのかもわからないし。けど俺は戦えば勝てる。今までも勝てたからさ」


(多分だけど)


「そ、そ、そんな、理由になってませんが」


「えっ……そうかな。勝ちゃいいってのはダメ?」


「ダメでしょ」


「難しいもんだ。魔人なんて何で生まれてくるんだろうな」


「さぁ知りません。魔人からしてみれば、人族だって必要ないと思ってるのかもしれません」


 ミーコはもう少し説得力のある答えを期待していたのに、とても安心できる説明ではなく、むしろ不安感が増したような気がして、馬車を引き返してくれないかなと内心思うのであった。

 馬車の中で冷は勝てると力説して話を終えたが、本人は納得していて魔人との距離が近くなるのを怖がる様子はない、逆にアリエルらは怖くて仕方ない様子がみてとれ、全く違った形でサイクロプスに迫っていた。


「あ、あの、冷さん。今日はもうこの辺で宿泊したいのですが」


 馬車の使いから冷に言ってきた。


「宿泊ですか。そうですね、宿泊にしましょう。それであとどれくらいかかります?」


(遠いから宿泊は必要なのだな)


「明日には到着できます」


「到着の見込みがあるのなら、宿泊しましょう」


 ピルトの町を離れてから時間が経ちその日は宿泊することになり、冷は馬車の使いから宿泊を提案されたので、もう暗いのもあり承諾の返事をした。

 宿泊は森の中で暗くて薄気味悪いのが難であったが、冷はこんな暗い生活は修行中に慣れていて、もっとも魔物は存在していなかったが、怖くはないとして、問題は他のメンバーであり女の子なのもあって不安であった。

 

「おい、まさかこんな森のど真ん中で宿泊か?」


 リリスはがんらいは魔族だけに暗闇は怖くはないが、野宿とは知らずにここまで来たのでかなりびっくりして言ったのだ。


「そのようだな」


(なんだリリスは怖がりか)


「雑草の上でかよ。全く最悪だぞ、生まれてこのかた雑草で寝たことなどない!」


「あ、それでしたらテントがありますのでご使用ください」


「テントがあるのか。これなら雑草で寝なくて済みそうだリリス!」


(テントってなんかアウトドアっぽい)


「この私が、野宿かよ。まぁテントならまだ増しか……」


「その言い方だと野宿の経験がないのだろう!」


「ないな、あるわけない。興味もない。したくもない!」


 不満をぶちまけながらもリリスは雑草でなくて良かったと思っていて、淫魔としてそんなのは下僕のすることはであるとして、最上位に位置する自分がすることではないのであった。

 テントは十分に広く冷は大変満足のいく物と、野宿が本当は1番好きなのだ。

 判断したのに他のメンバーはそんなに嬉しそうな顔はなかったのが不思議であったのは、サバイバル経験のあるないの差であろう。

 冷たちはテントを作り上げて中に入ることにしたら、また別の問題が発生したのだ。


「暗すぎて何も見えませんよ!!」


「本当だな」


(電気がないから当然だけど)


「何とかしてください!」


 ミーコが手探りでテントの中を触り確認するが、どこに何があって誰なのかすら区別できない、いくら盗賊とはいえ真っ暗では何も盗めない、その為手を伸ばして辺りを探ると思いもしない物に触れたのだった。


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