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 起きて朝食は昨晩同様に女の子達に任せて作ってもらうと、美味しく食べて腹ごしらえは完了し、出発の準備は整える。


「美味しいですか?」


「ああ美味しいよ、ネイル、キミは料理もマッサージと同様にプロ並さ。助かるよ」


(ネイルは料理も安心して任せられそうだ。その点ミーコとリリスは微妙なラインだ。そしてアリエルはと言うとなるべくは控えさせてもいいだろう、もちろん本人には絶対に言えないが)


 するとなぜか察したのかアリエルが、


「私達も忘れないでよね。ネイルと一緒に作ったんだからさ。女神もやればできるのよ!」


「ああ、もちろん君たちも上手だ。また頼むよ」


「やっぱり! また作ってあげるわ!」


「アリエル……君は食べるほうでもいいけど……」


「それどう言うこと? まるで私のだけ食べたくないって聞こえる!」


「いや、違うから、決してそんな意味じゃない」


「アリエルが言ってるのが正しいかは、食べればわかるぜ」


 リリスはアリエルの作ったのを口にして、


「う……まぁ、アリエルのは冷にあげるわ」


「俺によこしたかよ!」


「全部食べていいのよ冷!」


「あ、ありがとう」


 新しい仲間を褒めすぎるとアリエルらが気にするのが冷は理解した。


(先に仲間になったというプライドがあるのかもな。女の意地もありそうだ。そこらへんは俺の苦手分野だけに深く考えるのはやめよう。それよりもギルドに行ってサイクロプスの件について訊いてみたい。その前に訓練も必要だし忙しいな俺)


 出発準備を終えて宿屋店員エクセリアが待っていた。


「冷さん、今日もクエストですか?」


「いいえ。予定ではクエストはしないかな。でも冒険者ギルドには行くつもりです。朝食は調理場が出来たから作ってもらいました」


「それはそれは、嬉しいでしょう。ギルド頑張ってください!」


 エクセリアは手を振って冷を送り出した。


(可愛い店員さんだよな)


 宿屋を出て予定通りに冒険者ギルドに向かうことに。

 

「みんな、いいよな俺のワガママかもだけど」


(サイクロプスの件を確認してみる)


「どう考えてもワガママだ、冷の。とにかくユズハさんに相談が大事よ」


「断られそうだなぁ」


(魔人だけに言いづらいな。でもおもいきって言うしかない)


 冷はなんとなくだが今までのユズハの対応からして反対される気がしたまま、ギルド店内に入る。


「おはようございます冷さん」


「おはようございます。今日はいつもと違い相談に来たんだ」


(いつも通りに挨拶してくれて嬉しいが、怒られるのを覚悟だな)


「相談でしたらどうぞお気軽に話してください。悩みを聞くのは私達の仕事でもありますから」


 気軽にどうぞと言ってチャーミングな笑顔を作るユズハ店員は、クエストランクの事だろうと考えていて、もう少しランクを上げるかの検討はギルドでも討論されていて、上げる方向に話が向かっていたのだった。


「実は相談は温泉の件なんです」


「温泉?」


 その瞬間にユズハの顔から笑顔がパッと消えてしまい、とても厳しい表情へと変化したのを冷は見逃さないでいた。


「はい、温泉に入るからにはお湯が要りますよね。そのお湯の源泉を魔人が塞いでいて、ピルトの町にお湯が来ない、だから温泉には入れないとなっていると聞いたもので、その魔人にお湯をここにも流すように言いに行きたいのが相談内容です」


(相談と言っておけばいいかな)


「……ど、どこで魔人の話を聞いたのですか」


「えっと……とある飲食店での会話で聞いた。本当なのですねその反応をみると」


(ユズハさんのこの対応をみると、本当のようだ)


「ええ、そこまで知ってるなら隠しても無駄のようです。魔人の話は、冷さんには内緒にしておきたかったのが本音。なぜなら話せば魔人と関わる可能性が高いとギルドでも結論が出ていて、なるべく隠しておくことと、クエストでも魔人方面には紹介しないとしていたのです。でもわかってください、そうしたのは冷さんの為でもあるのでして、なぜかと言えばその魔人は中級魔人サイクロプス。今の冷さんにはとうてい足元にも及ばない実力の持ち主。冷さんが動くとサイクロプスが動ごく。そうなると面倒なのです」


 厳しい表情で冷を見つめる。


「サイクロプスに多額の金品を支払ってはいない。今のところは安全なのでは?」


(いづれはサイクロプスの奴隷のように扱われるだろう)


「厳密には支払ってはいますが、多くはなかったのです。何しろピルトは小さな町に過ぎませんから、そもそも町の予算も少ないの。だからでしょうけどサイクロプスは近くの大きな町と比べてら、楽に過ごせた。大きな町は重税を課すのを逃れられなくなり予算もひっ迫し崩壊しかかってると聞いてます。それが状況がかわりました、まずオークが突然にガフの町を破壊してもう復興は絶望し、町は死んだ状態になった為ガフからは金品を集めるのはなくなり、代わりにガフの分の金品を支払える町を検討中。さらにあのオークを倒し殺したのがピルトの町。この二点から考えてもサイクロプスがウチの町に目をつけたのは確実視されていて、だからこそ冷さんには、おとなしくひっそりと暮らしていて欲しかったの。騒ぎを起こして欲しくない」


 ユズハは涙目で冷にサイクロプスと関わらないでと懇願するも、当の冷は違っていて、オークを殺したろうが、ガフの町が消えても考えは変わることなどなくて、むしろ話を聞いてより一層サイクロプスと会いたくなっていた。


「ユズハさんの気持ちはわかります。俺もここピルトの町が好きですから、失いたくないし。逆らうと町の冒険者は全員殺したとも聞いた。尚さら俺が行く必要がある。俺は温泉が好きなんです。それを独り占めしてる奴など許せないんで。ユズハさんが止めようと冒険者全員で止めようとも必ずサイクロプスに会いにいきますから」


 冷が断って行くと言うと、厳しい表情に笑みが漏れた。


(そう言われるのはわかっていた。けど俺は行きますよ)


「ふふふ。やはりこうなりますか。冷さんなら必ず行くと言うと思いました。いや私も含めてみんな冷さんには隠れていて欲しい反面、どこかでサイクロプスの恐怖を無くして欲しいと思ってるのかもしれません。サイクロプスは恐怖政治です。反抗すれば必ず殺します。すでに周辺の町で殺された犠牲者は3万人を超えてます。王都軍勢10万人も殺してます。それ以前にも大量破壊をしていて中級魔人のレッテルを貼られたとんでもない魔族」


「王都は黙ってるのかな、こんな悪い魔人がいても。10万人殺されてビビって怖くて動けないのか」


(サイクロプスが怖いのだろうか)


「怖いのは怖いでしょう。ただ他にも中級、下級魔人は存在しており、さらには上級魔人も存在してます。上級がいる分、中級のサイクロプスにまで手が回らないのが実情なのだそう」


「今日にも行きます。詳しい場所を教えてください」


(行くなら早い方がいい)


「今日にもですか?」


「早い方がいいです。お願いします」


「お待ちください。ギルド長と相談してきます」


 ユズハはギルド長に判断を委ねたのは、さすがに事が事なだけにひとりで判断できないからで、待つこと数分してユズハから場所を教えてもらった。


「お待たせしました。温泉の源泉があるのはガッパオ山となりまして、かなり遠い距離になりますからギルド側で馬車を用意します。そこまでギルドも協力しますが、あくまで山の近くまででそれ以上はサイクロプスの配下の魔族が多数いるものと思われますので、そこから先は冷さんが歩いて行ってもらいたいとのことですが」


 サイクロプスのいる場所は、ここからはかなり離れた地区であり、歩いても何日もかかるとわかると、ギルド側で馬車を用意するとのことであった。

 冷としては、そこまでしてもらえれば大変ありがたいし、嬉しいわけでお願いすることにした。


「その条件でやりますから、馬車をお願いします」


(馬車でもいい。どうせ俺ひとりなのだから。アリエルらは当然にここに置いていく予定)


「配下の魔族も相当な強者がいる可能性が高い。敵はサイクロプスだけではないと思っていいでしょう。それとこちらは道具である回復薬をいくつか渡しておきますから、体力が消耗したら使用してください。ギルドとしても冷さんに協力できることはこれが精一杯でして、後は冷さんに任せる形になります。どうか無事で帰ってきてください」


「俺なら帰ってきますよ。いつも帰ってきてるでしょう」


(ユズハさんに会えるなら、絶対に帰ってきますよ)


 ユズハは励ますつもりで言ったのだが、逆に冷の言葉で励まされた気がして恥ずかしくなっていて、悲しみからニコリと笑みが溢れていた。


「おい、冷、頑張れよ!!」


 その話を聞いていた多くの冒険者達は冷が命を賭けてサイクロプスのいるガッパオ山に行くとわかり、応援し始めてギルド内は冷頑張れコールで満たされると、冷は全く予期していなかった為に、嬉しくてウルウルとし、また同時に俺がやるしかないという強い決意ももたらせた。


「冷、私も行く」


 そこへアリエルも同行すると。


「大丈夫かアリエル?」


(無理だろ君には。危ないし)


「ええ、それにリリスとミーコも行くわ。冷だけ行かせないわ」


「……わかった。オークの時よりも危険になるぜ?」


(オークの時だって危なかったが。今回はそれ以上だろう)


「了解!!」


 大声援を受けてギルドを後にして、いざ出発するのはガッパオ山でそこはユズハが言うように魔族がうごめいていて、冒険者もほとんど近づけない程の危険地帯と化していて、まだ冷達はそれを知らなかった。

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