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明日は冷が重要な日になるとのことで、早めに寝る準備をする女の子達は、ベッドに横になり目を閉じる。
冷はまだ寝る準備に入っていなくて、ある考えを待っていつつ、実行に移すかどうかの瀬戸際にいた。
(どうしようかな。試してみたいのがあるのだけどなぁ)
試してみたいのと試すのでは大きく違いがあり、試すというのは実際にするのだから、極めて危ない橋を渡る覚悟が必要だとの冷の中で迷いがあった。
その迷いを誘発してくるものとは簡単に言うと手に入れたスキルの1つであった。
以前に職業養成所で教師のイリサから習得したスキルで、これは冷が授業中に寝ていた為に廊下に出されてしまい縄で巻かれた時に習得した。
[縄縛り]
魔力を縄に流すことで脱出するのが困難になる。
冷が体を動かしてもがいても決して抜けることが出来なくて不思議であったから、ぜひとも試したいと思っていた。
ただし職業が教師の限定ならば使えないが限定とは書かれていないのだと判断し挑戦することで前向きであった。
(みんな寝たようだな。そっと試したいなぁ)
アリエルとリリスとミーコとネイルはその頃、冷の思惑通りに全員眠りについていて、何の身構えもなく熟睡していた。
冷は一度は置いた縄を再び取り出してみて、これはスキルの練習なのだと言い聞かせるようにして4本の縄を各自に巻いてみて、スキル[縄縛り]を実行してみる、それには魔力が必要なので最初は魔力量を少なめに縄に流してみることにした。
その結果は冷が喜ぶ結果となったのは、縄はまるで生きたように動いてクルリと体に巻きつき蛇が巻き付いた形になって、このスキルは職業には依存しないスキルであると確信し、興奮してきた。
(いい感じだ、成功したようだな)
「う、う、なにこれ〜」
1番最初にその異変に気が付き起きたのがネイルであり、自分の体にまとわりつく縄に驚いて声を出したので、その声で周りのアリエルらも目を覚ますのだった。
「縄が巻かれてる! 冷、大変よ、強盗よ!」
アリエルの強盗呼ばわりでリリスも気が付き慌てた様子で体を左右に揺するのだけど、決して縄は解けることはなかった。
「縄が解けないぞ、お前も見てないで早く手伝え!」
「解くのはまだ早い」
(なにせ俺が巻いたのだからな)
「冷氏、これは大変なことになってます。敵ならば全滅の危機!!」
「慌てるなミーコ。全滅はない」
リリスが解くだろうと期待して言ったのにも関わらず冷から返ってきた返事は信じられないひと言であり、耳を疑う内容でミーコも、あ然としてしまう。
「どうしてだ。強盗なのだろ……待てよ、まさかこの縄をしたのはお前かおい!」
「……だとしたら」
(意外と早く気づいたな)
「さっさと解くんだな。私達が怒る前に」
「そうですよ、こんな真似しても意味ないし」
「意味はある。今にわかる」
「どういう意味かな。理解しかねます」
ミーコもさっぱりと冷のする行動が理解できないで首を傾げるしかなく、ネイルもまた同じである。
「どうするおつもりですかご主人様。これでは体が動きません。とても不安な気分です!」
「どうするかだって? それはこれからスキルの練習をするのさ」
「スキル?」
「そうだよ。俺の言ってる意味がまだわからないようだな。まぁ無理もない。理解しろと言う方が無理かもしれない。俺が意地悪なのだろう」
全員が頭に?マークが出たのは言うまでもないが、次の瞬間に冷の意図が読み取れたアリエルが叫ぶのだった。
「ま、ま、まさか。やめなさい。この縄をどうするおつもり? 私達の体を縄で巻いて楽しもうなんて考えがあるなら捨てなさい!」
「ようやく理解したようだねアリエルくん。先ずはアリエルから試してみよう」
(なかなかいい推理してるが、もう遅いぜ)
「私から試すですって!! ちょっと待ちなさい。問題発言ですから!」
「問題などない、楽しみな行為だよ!」
「バカなこと言わない! あなはた絶対に間違ってますから!」
「女神なのに正しくない発言だぜ。俺の方が正しいんだよ!」
行った通りに冷はアリエルの縄に魔力をもう少し多めに流してみると、どうなるかは苦しくなるのか、それとも違う結果になるかを知りたいのである。
「うう……うあ……なに、これ……」
「どうだいアリエル。苦しいのか」
「苦し……でも何か違うような」
「どう違う!」
「体に何かが流れてくるみたい……」
アリエルは冷が魔力を流していくにつれ、顔が赤く変わりなぜか体の力が抜けていくようであり、アリエル自身も言葉にしたくないが気持ちいいとさえ感じていて困ったのであった。
「リリスとミーコにも試すぞ」
「ふざけるな! 仮にも私は淫魔だ。従えることはあっても従らされるなんて大恥だ。ありえない!」
「はたしてそうかなリリスくん。君の頭はそう思っていても体はどうかな?」
「ははっ、笑わせんじゃない。淫魔の……あれれ、なんだこれは……」
「ふふ、俺のスキルは淫魔も従えられるようだ」
「くそっ!」
「リリスの次はミーコだ」
「体に縄……私の逃げ足スキルなら逃げれるわ……」
「逃げれるものならな」
「えっ……。ダメだわ。逃げれない!!」
「無駄だよミーコ、俺のスキルが勝ったようだ」
「うう……」
両者ともアリエルと同じく声を上ずるようにして出して、抵抗していたのをやめて無抵抗になり、なすがままといった状態へと変わる。
次にネイルにも試したら同じ反応が返ってきて、むしろネイルが1番変わったといっていい行動を取り出した。
「主人様、もっとしてください。私の体は主人様のものですから!!!」
「ネイルは抵抗なしか」
「はい!! 当然にご主人様なら大歓迎ですし!!!」
「なんとも可愛いなネイル!」
これにはやっている本人の冷が照れてしまって、スキルの習得の練習には大いに勉強になり、また違う日にでも試そうと楽しんで練習なはげんだ。
そこまではスキルの練習として良かったのだが、後はいつもの通りに……。
翌朝になり縄はとってあり、リリスが注文をつける。
「よくも昨晩はあの様な淫らな行為をしてくれたな」
「意外と喜んでたのはリリスだったが」
「なにを! もう二度とするでないぞ」
冷に言われて猛烈に真っ赤に顔が変わる。
「リリスはする方だったけど、本当はされたい派?」
「されたい派かどうか……おいアリエル、されたい派のわけないだろ。仮にも私は淫魔なのだぞ。私がされたい派だったらおかしいだろう」
「だったら抵抗すればいいだろ」
「むむ……抵抗できなかった、悔しいが……」
必死に否定するも、なぜか周りの反応は違っているからリリスは困ってしまい、下を向いて黙り込んだ。
密かにそのリリスの反応を見て楽しんだのは、他ならぬ冷だろう。
(いつも強気のリリスが、まさかあんな反応するとはな)
「主人様、私ならいつでも縄で縛っていいのですよ。誰もいないときにでも〜」
「ネイル、そんなことを言ったら冷の思うツボだ。協力して抵抗しないと」
「だって主人様のしたいようになりたいと思ってるのです。だから縄だろうが鎖だろうが構わないし、嬉しいのです!!!!」
「鎖はヤバイだろ。まぁお前ならやりかねないが」
「やるか!」
わかってはいたがやはり怒られるのは覚悟であってしたことなのであるが、ネイルだけは違う反応が返ってくるので冷ととしても思わぬ嬉しい誤算と言えよう。




