2-2
魔剣を持つリリス。
インフレーションステータス化した冷。
お互いに真っ向からぶつかる。
魔剣はナギナタと激しく重なり合うと火花を散った。
「ううう! 何だこの力は〜。お、お、押される〜〜〜!」
いい勝負だったのは、一瞬であった。
ナギナタの力に圧倒的に押されて吹き飛んでしまうリリス。
そのまま森の中に。
「あれ、ちょっと本気出し過ぎたかな俺?」
冷はかなり手加減したはずであったが、リリスの持つ能力では堪えきれず圧倒した形。
ここまで差が有るとは冷も思ってもいない。
嬉しい誤算と言える。
(どうやら俺ってヤバイくらい強くなってるぞ)
「やったわね冷! 魔族のリリスも殺したなんて、あんた凄い強いわ!」
「まあな、そう言われると照れちまうが」
貧乳ではあるが顔はアイドル波に可愛いアリエル。
マジマジと褒められ冷は照れる。
だが照れていられるのもそこまでであった。
「く〜〜〜。お前、とても強いな〜。ただの冒険者じゃないな。強過ぎる?」
森に吹き飛んたはずのリリスであった。
体が土と葉っぱで汚れてはいるが。
これでは魔族の威厳もない。
冷が大幅に手加減したのもあり生きていたのだ。
だがリリスは冷の実力を知り、戦意は無くしていた。
これ以上戦っても勝ち目はないと。
死ぬだけだとわかった。
そのあまりの強さに心が折られていた。
「おお、生きてたかよ。まだ戦う気か? これ以上戦っても無駄だけどな。どうするよ?」
「負けだ。私の完敗だ。殺すなり好きにしろ。お前に会ったのが不運だった。まさか弱い冒険者しかいないとされるこの森でこんなヤバイ冒険者にであうとはな。それとも私を殺すために冒険者ギルドが上級冒険者達を仕向けたのか? それなら納得だ」
リリスは特に駆け出しの弱いレベルの冒険者ばかりを狙って襲い、金を盗んでいた。
その噂は冒険者ギルドにも届いていて、十分注意するように冒険者には知らされていた。
だがリリスが言う上級冒険者が派遣されてはいなかった。
単に冷を上級冒険者で派遣されたのだと思い込んだのだ。
「いいや。俺は冒険者なんとかってのは知らないぜ。派遣されてもいないし。歩いて近くに町があるかなって。そしたらあんたが襲いかかってきたわけだ。弱い冒険者だけといったな。つまりリリス、あんたは弱い奴らばかり狙い打ちしてたのか。魔族のクセに情けないな。でも別に殺すつもりはない。俺は町に行きたいんだ」
(俺と会ったのが不運てわけだな。それにしてもリリスの態度がおかしいな)
冷が思った通りにリリスの態度は最初は強気であったが、現在は弱気であった。
冷に負けたのが原因であるが。
「えっ、私を殺さないと言うのか?」
「う〜ん殺さないかな。その代わり俺の仲間になれよ。仲間が欲しいと思っていたんでね」
殺さない代わりに仲間へと誘う冷。
一見すると優しい男にも見えるが、実はある理由があった。
(アリエルとは違う可愛いらしさもある。それに胸が大きいな。あの胸を触りたい)
単純に仲間にして、いやらしいことをしたいと言うこんたんであった。
「私を仲間にか。魔族を仲間に誘うとは狂った冒険者だな、名前を知りたい」
「俺は冷だ。よろしくな。これで仲間が増えた。町に連れていってくれないか。あと俺の横にいるのがアリエルだ」
「アリエルです。よくわからないけど仲間になったのね。神族としては複雑だけど、よろしく」
まさか魔族のリリスが同じ仲間になるとは思いもしなかったアリエル。
けど冷が決めたことなので反論はしなかった。
「魔族だけど、私でいいなら、よろしくな。??? お前今何て言った。聞き間違いだと思うのだけど神族とか聞こえたから」
「ええそうよ、神族です」
「はっ? 神族ですか? まさかあの神族のアリエルですか?」
リリスは驚いた様子で声を裏返した。
「知ってるようですね私を」
「知ってるもなにも、アリエルと言ったら伝説の神族だぞ。神話でしか聞いたことがないし、生きてるかさえわからない存在だ」
「生きてますが、勝手に殺さないでくださいよね。理由は聞かないで仲間になってくれれば」
そこは聞いて欲しくないところであった。
まして新たに仲間となるリリスには。
「それなら俺が神族のいた場所から連れて来たからさ。それで神族のところに戻れなくなってしまい、しょうがなく俺と冒険すると決まったんだ」
「ちょ、ちょ、ちょっと冷!! 余計なこと言わなくていいのよ!」
「だって本当のこと言っただけだろうが」
「そうだけど!」
冷は本当のことを言っただけだが、アリエルには余計なひと言であった。
「へえ〜そう言う理由があったんだ。神族って言うけど、要は帰れないんじゃただの人族だなこれじゃ」
「あんたね!」
冷と女神アリエルは新たに魔族リリスを仲間に加えた。
神族のアリエルにとっては魔族は、お世辞にも仲の良い相手とは言えないが、ケンカすることもないと思うことにした。
そこからピルトの町を目指していくことに。
無事に到着出来るとは思えない展開であった。