表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
350/351

348

348

 冷が気になったのはチルフのウェザーポイントの雨量である。

 視力が他の者の視力と比べて何倍も良い冷だから気づいたのだった。

 明らかに多量の雨がギガースの頭上に降り注ぐのがわかった。


(これだとギガースの風には多過ぎやしないか?)


 冷の疑問は少なからず当たっていてギガースは気づかずに雨を待っていたところに頭上にどしゃ降りしたのだった。

 当然にギガースは声を出してしまう。


「ぎぁあ〜〜〜冷たい〜〜〜〜、何してんのチルフ!!!!!!!」

「えええええっと…………いつもの通りにウェザーポイントしましたが、何か間違えたのかな? でも同じなんだけどな」


 チルフは何がどうなったかわからないまま、ぼう然とギガースがびしょ濡れになっていく様をながめているしかなかった。

 

「どうなってるかわからないのはわかった。とにかくウェザーポイントを中止しないと大変よ!」

「わ、わ、わ、わかったわ、中止します。中止!」


 隣にいたサンマルが慌ててチルフにウェザーポイントの中止を言い渡したが、すでにギガースは雨に打たれて防具から何から全て濡れてしまった後であった。

 サンマルに言われたチルフは大慌てで、まるでギガースが死んでしまうくらいに大急ぎで中止するも、なぜ失敗したのかと悩む。

 過去にしてきたのと全く同じやり方なのに失敗した理由が見つからないし、ギガースに怒られそうなので逃げる気持ちもあったりした。


「チルフ!!!!!!!!!」

「す、す、すみません〜〜〜〜ギガース様。わざと失敗したわけではないのです。どうしてかいつもと違うので私も困ってしまいます!」

「ずぶ濡れになってしまったぞ。これでは農園に雨をもたらすどころか私だけがずぶ濡れじゃないか。ウェザーポイントは使えないぞ!」


 ギガースは失敗したのはチルフのせいにして怒り出した。

 チルフもギガースが怒るとなると話は農園どころの話ではなくなる。

 本気で怒れば一度の攻撃で、広大な農園など吹き飛ばせる実力を持ち合わせている。

 

「…………これではギガースさんも濡れるし、農地も局所的にグチャグチャに水溜りが生まれてしまいダメですよ。チルフさんに悪いがはっきり言ってウェザーポイントは避けてください。水は手作業でまけばいいのです。時間は膨大にかかりますが失敗はなくせます。たとえ時間はかかってと農作業とは時間のかかるもの。あまりにも時間を短縮し過ぎることに頭がいってしまってるのです。農作業の基礎に立ち返ってここは手作業で水をまきましょう」


 アレスは基本に帰って時間をかける方法をすすめた。

 どんなに速い方法があっても失敗しては意味がないし、無駄な労力となるならば、地道に農作業をしてはと説得に近い言い方をした。

 チルフにはキツい言い方をしたように聞こえたが、アレスなりのチルフにこれ以上の失態、恥をかかせないようにしたかったのだった。

 短い時間ではあるがチルフ達に情が入ったアレスにはチルフの苦い表情を見たくなかった。

 失敗したチルフに怒るギガースに冷は困ってしまった。

 何が原因で失敗したのか冷は考えていた。

 

(どうして失敗したのかな? ギガースのトルネードスネークの前に雨量が多過ぎたように感じた)


 確かに冷の感じたのは正解に近かった。

 雨量が多過ぎたのはギガースも感じていた。

 しかしなぜ雨量が多過ぎる結果になったのかが問題である。

 その点で冷はトルネードスネークをいつもと違う魔力量や魔力の強弱でしたためではないかと思いあたった。

 

(今回は暴風ではなく柔らかな風にした。それが原因かな)


 冷のアドバイスによって柔らかな風でのトルネードスネークは普段よりも回転は遅いし、風量も少なくしてある。

 しかしウェザーポイントは調節をしなかったのでは。

 調節していない雨量が降ればどうなるか。

 一か所に大量の雨が降り注ぎ風など通り過ぎてそのまま地面に行ってしまうだろう。

 たまたまギガースの頭があったから、頭にどしゃ降りしたのであった。

 

(柔らかな風を多量の雨だと通り過ぎてしまいギガースの頭に命中する。これが失敗した原因だろう)


「ギガースは怒ってはいけない。チルフのウェザーポイントが失敗したのはキミにも原因があるのだから」

「なんだと! 私のどこに落ち度があると言うんだい! トルネードスネークは成功したのは冷も見ていただろ。何を今さら言ってるのだ」

「それが失敗の原因なんだよ」

「言ってることが矛盾している。成功したから失敗したとか意味がわからない。わかるように説明しなさい」


 ギガースは冷の会話前に怒っていたのだが、会話をして意味がわからないから余計に怒り出したのである。

 しかしびしょ濡れな防具姿をしているギガースは冷には迫力不足であって、むしろ笑ってしまうくらいだ。

 体がグラマーなだけに冷には恐怖心を抱くよりもエロいことが浮かびそうになる。


「トルネードスネークさ。俺がアドバイスした通り魔力量を弱めたり、風量をよわしたのはわかる。そこで竜巻レベルの破壊的な勢いはなくなった。俺が受けたあの思い出すだけでも恐ろしい竜巻のね。そうなるとチルフのウェザーポイントとのコンビに支障がある。ウェザーポイントは以前のまま放たれたとしたら、今のトルネードスネークとの間に差が出てしまう。それが原因だろうな」


(チルフもギガースも気づいていない盲点だったようだな )


「そうか…………私のトルネードスネークとの間にか。つまりはチルフのウェザーポイントを私のトルネードスネークに合わせていけばいいのだな。ウェザーポイントも調節をしてピッタリと合わせる。回転が弱すぎて雨が直接頭に落下したのだな。いつもの勢いなら雨は竜巻に飲み込んでいき、頭に来ることはないが弱い分、竜巻に巻き込み量は減り頭に落下となるか。チルフ、私のトルネードに合わせるんだ!」


 頭に落下した理由がわかり納得したギガースは、相棒のチルフに雨量調節してくれと頼む。

 頼まれたチルフも失敗した理由なのだろうと決めて、次は雨量を計算して調節することに魔力を変化させてみる。

 しかし雨量の計算などしたことがないので不安はあったが、これでも失敗したらギガースが本気で怒り出すのは明白。

 怒りの矛先はチルフに来るだろう。

 もう失敗は許されないプレッシャーがチルフを襲う。

 失敗の許されない一度のチャンス。

 

「トルネードスネーク!!!!」


 再びトルネードスネークを開始。

 チルフが言ったことを理解してくれるだろうと信じて。


「ウェザーポイント!!!!」


 対するチルフもスキルを放った。

 これ程までに緊張してウェザーポイントをしたことは経験がない。

 雨量をトルネードスネークの風に合わせる感覚で降らせてみたところ、雨量は一点に降り注ぐも、前回よりは少なくなっていて風と一体化していた。

 よってギガースの頭上には達しなくなり、風で農園の種をまいた農地に舞うようにして雨は散りばめられていく。

 

「雨だ!!! 雨は農地全体に降り注いている。成功だ!」


 サンマルが心配して見ていた時に、成功したので歓喜して叫んだ。


「やりませたよギガース様!」

「チルフ、やれば出来ると思っていたよ!」


 ギガースは農地に霧雨のようにして雨は降るのを確認し喜んだ。

 逆にチルフはギガースに怒られずに済むのでホッとしていた。

 とにかく成功させたい思いで雨量をコントロールしたのが成功の秘訣だった。

 

「凄いぞ二人とも! 俺のアドバイスが良かったんだろうな! 俺って農業にも才能があるみたいだな!」

「自分で天才とか言うなっ!」


 サンマルに軽くツッコミをされる冷。

 しかし冷のアドバイスが言い結果に導いたのは確か。

 ギガースは冷をバカにはできないなと感心していた。

 これで水の課題はクリアしたわけで、農園の開発が進むのは嬉しい。

 冷は喜んでギガースに抱きついた。


(よし、これで農園は一気に開発できそうだな!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ