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 冷が農園にいる頃、アリエル、ミーコ、リリスの三人は冒険者ギルドに居た。

 受け付けでユズハと談笑する風景は他の冒険者を圧巻させる。

 ユズハがミーコに確認するのは、


「ミーコさん、クエストお疲れ様でした。まさか最高ランクをクリアされるとはお見事です」

「ありがとう。これで私達を見習い冒険者とは呼ばせません」

「呼びません! 最高ランクを受ける冒険者がそもそもいませんから。いったい何があったのでしょう。わずかの期間でここまで強くなれる秘訣は?」

「さぁね、私も知りません。ただし冷の道場は毎日行われてますので、道場の影響が大きいようです」

「道場ですか……。クエストはまだまだありますからまた来てください!」

「また来ますね!」


 ミーコはユズハに挨拶をしギルド店を後にした。

 その後に残った冒険者はいちおうに震えていた。

 あの三人は特別だと。

 最高ランクをクリアできるとなれば、もはや冒険者の憧れの存在となるが、同時に溢れるほどの魔力をリリスが放っていた為か、冒険者は魔力に恐怖心を抱いてしまう。

 それほどまでにリリスの魔力は増大していた。

 アリエル達は宿屋に向かう頃になって、冷も帰ることにした。

 


 巨人魔族ギガース達の農園での半日はとても彼女にとって長い一日となった。

 農園の帰り道では行きよりも魔物が多く現れるが、チルフとサンマルが追い払いアレスを守った。

 アレスはあらためて魔族の強さを知ったが、彼女達に恐怖感は感じなくなっていたのが不思議であった。

 ピルトの町に帰ると宿屋に直行した。

 冷の帰りを待っていたのでミーコは心配していた。


「遅いです、農作業が失敗したとか?」

「農園での作業はしっかり進んでいるから心配ない。ギガース達は初歩から学んでいるところ。最初は出来なくて当然だよ」

「お疲れ様ですギガース、ご飯を食べましょう!」

「美味しそうな料理!」

「チルフとサンマルもどうぞ!」

「ありがたいです!」


 農園での作業を終えて帰ると料理が待っていて、労働後の空腹を感じていたギガースは笑みがこぼれた。

 チルフとサンマルもテーブルにつき食事に食いついたら、よほど空腹だったのか大量に食べ尽くす勢いに。


「美味しい、全部食べちゃいたい!!」

「俺の分もあるよね?」


 冷の分も食べてしまう程であったため冷は慌てて食べ始める。


(早く俺も食べよう、なくなっちゃうぞ!)


「どう、初めての農作業は。野菜とか作る気?」


 アリエルから農作業について訊かれる。

 全員が知りたいことで、いったい魔人が作る農作物とはどうなのかと興味がわくのだった。


「種まきをした。種は色々な野菜や穀物もあるらしい。まだ少ないが種はまいたが、芽が出るのはかなり先らしい。先と言っても数ヶ月先と」

「そんな先なのね。時間がかかること農作物って。食べると美味しいけど、それまでとてつもなく苦労があるのね。農家が私たちに見えない苦労をしてやっと作られるのね。この料理の野菜とかもそう考えるとより美味しく感じる。ずっと先までお楽しみってことね」

「農家のアレスさんって人族が来て教えてくれてるの。アレスさんは現役の農家で、一から教えてくれてるとても親切な農家。アレスさんが芽が出るまで指導してくれるそうですから、不安はない」


 ギガースはアレスに信頼をおいていた。

 教えられた通りにすれば成果は出ると。

 逆にリリスは時間がかかるのを嫌う。


「何ヶ月も待つのか。ちょっと待ってられないぜ。魔人なんだからもっと収穫を早くできるだろ」

「難しい質問だ。リリスが収穫を期待してくれてるのはわかる。だが種が芽になるのは何ヶ月も先なんだ」

「おい! リリス、ギガース様に失礼な言い方は許さねぞ!」


 リリスの質問にギガースは冷静であったがチルフは声を荒げてリリスに言い返した。

 ギガースをバカにしたと聞こえたからだ。


「失礼じゃない。人族で何ヶ月なら魔人ならもっと早くと言ってる。人族と魔人は同じレベルなのかい。背が高いだけで後は人族と同じか!」

「リリス!!!!! 巨人魔族を完全にバカにしましたね。単に背が高いだけと! もう許せぬ!」


 リリスの発言にチルフは怒りだし、リリスに迫ったから部屋は混乱してしまう。

 慌ててガーゴイルがチルフを静止させるとリリスはゴーレムに静止させられる。


「リリス、少しばかり言い過ぎです」

「……すまん、チルフ」


 リリスは反省したのか謝罪したがチルフはふてくされてしまう。

 巨人魔族は背が高いのは自慢であり、バカにされるのを極端に嫌った。

 リリスはそこまで考えずに発言したのは不用意であったと思ったが、時すでに遅しであった。

 冷はリリスが悪いことは悪いが、期待しているからこその発言だろうと思う。

 

(リリスも一回農作物をやらせてみようかな)


「収穫したらみんなで野菜などを料理して食べたらいい」

「賛成!」

「卵に続いてピルト名物の野菜ね!」


 祝福の言葉を与える。

 まだまだ話は先の長い、半年以上だと知っていてもギガース達に熱いエールを送る。

 声援は魔族だろうが人族だろうが関係なく、ルクエも送った。


「土地はたっぷりあるから、食べ切れない程に収穫できますでございます!」

「ルクエの協力が大きい。土地の件は感謝してる」

「ギガースが仕事してくれるならシャーロイ家は協力します。それに土地は使っていない土地。無駄にしておくよりも使うことに意味があるでございます」


 ルクエは自分達の資産である土地を有効利用したいと思っていたから、好都合であった。

 シャーロイ家は一度はエルフの国との間で失敗し低落を避けられなかったが、三姉妹が資産の全責任を持ち管理することになり、ピルトの町の発展に貢献しつつあった。

 シャーロイ家の資産を活用なしにはピルトの町の発展はないと考えていて、長女ルテリはルクエに自由に使えと伝えてあった。

 ちなみに早朝道場を終えてアリエル、ミーコ、リリスはクエストに受けることになっていて冷は気になっていた。


(クエストは受けたのかな?)


「ギガース達の初の農作物は失敗もあったが、初めてなのだから良いとする。半年以上先には収穫をして欲しい。それとクエストだが、アリエルどうなったかな、教えて欲しいな?」

「最高ランクを受けました。結果は見事にクリアしてきました。まぁ女神からしたら大したことはなかったですことよ!」

「最高ランクをかい?」

「冷氏、驚いてますね。アリエルは活躍してました。冒険者ギルドに帰ったらユズハさんが驚いてました」


 ギルド側も最高ランクを受けさせて大丈夫かと悩んだが、問題なく帰還したので彼女らの成長速度に驚いていたのは事実であった。

 最高ランクのクエストを受けられる者は多くない。

 国家の精鋭である騎士団の中でも同じ。

 もちろんピルトの町では冷のメンバーしかいない。

 国中を探しても他には何人居るかどうかの世界であって、メンバーのレベルの高さを物語っている。

 異常なレベルにある冷のメンバーにギルドは混乱するしかない。

 ランクの高いクエストを受けてくれるのは嬉しい限りだが、他の冒険者から見たら異常な集まりである。

 最初はバカにしていた冒険者も今ではアリエルを見たら逃げ出す程で、リリスが声を出したら気絶した者もいた。

 リリスは悪気はなかったが、他のランクの低い冒険者には少なからず恐怖心を与えていたのだった。

 早朝道場を行いステータスの体力や魔力は消耗していて、さらにクエストで魔物との激戦をする。

 ミーコは道場と実践でのバトルで剣に磨きをかける。

 リリスは戦いにムラがあるが、経験値を積むことでムラが少なくなっていた。

 冷は彼女らの活躍の報告を聞き、より嬉しくなった。


(ほお〜最高ランクのクエストをクリアしたか。いい感じだぞ!)


「最高ランクをクリアしたとしても気を緩めてはイカン。早朝道場と平行して続けてくれたまえ!」

「わかったわ」

「わかりました」

「やるよ」


 リリスも最後に返事をして、その日は無事に終える。

 ガーゴイルの卵、ゴーレムの建築物に続けてギガースは農園を行うことになり、魔族が人族に貢献する世界が始まりつつあった。

 


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