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 アレスが農作業の協力をしてくれると決まり、ルクエに目的の土地へ向かうことになった。

 土地は近くにあるとのことで徒歩で出向くと、ピルトの町から平野を歩いた。

 町の近くとはいえ平野には魔物も居る。

 そこでサンマルとチルフがアレスの周囲を守る形をとった。

 チルフがアレスを安心させたく、


「アレスさん、大丈夫です。魔物から守ります!」

「怖いです。ひとりで普段はこんなに外を歩くことはないです。あっ!!!!」


 言ってるそばから魔物が現れてアレスに接近してきて、武器も防具もないアレスは叫んだ。

 叫ぶよりも前にチルフは魔物の魔力を察知しており、アレスに触れる前に吹き飛ばし、安全を確保した。


「魔物は絶対に触れさせませんのアレスさん!」

「ありがとうございますチルフさん」


 チルフにお礼を言うもチルフにしてみれば最弱級の魔物なので退治するのは何てことなかったが、アレスを安心させられたのは素早い行動であった。

 魔物は何匹か近寄り退治するのをしていくと広大な土地でルクエが静止をしてくる。


「冷、ここら辺の土地を農園にするのはいかがでしょうか。全てシャーロイ家の土地ですでございます」

「ずいぶん広い土地だな!」


 冷が驚いたのは当然で恐ろしく広大な土地が身渡す限り続く。

 それも何もない、平坦な土地で、雑草が生い茂ってはいるが、農園にすれば大農園になるだろう。


(こりゃ広いな!)


 シャーロイ家の資産からしたらホンの一部でしかなかったが、ルクエは長女ルテリとの相談し使ってない土地なら活用したほうが良いと話は決まった。

 放置された土地は何も生まないからで、わずかでも農園になると利益を生み出すので、積極的にギガースには働いて欲しかった。


「アレスさん、どうですこれだけ広ければ農園できますよね?」

「で、で、で、できるなんてものではありません。広すぎて向こうが見えません。こんな広い農園は見たことないです!!」


 アレスはあまりの広さに驚いていて、とんでもない依頼を受けてしまったと思ったのだった。

 アレスが知っている農園の規模は遥かに狭く、それでも十分に野菜や穀物の収穫は出来ていて、その何十倍もの広さの農園なのであった。


「ギガースもどう感想は?」

「確かに広い。一度に全部を農園化は厳しいだろう。最初は少しずつ栽培していくようにしたい。慣れてきたら広げればいいだろう」

「わかりましたギガースさん、最初は土を耕していき、種を植えていくやり方を教えます。種を植えたら肥料を与えておきます。そして水は必要がありますから、水を与えたら、三ヶ月後には芽が出てくるようにしましょう」

「ずいぶん長い期間かかるものだな。もっと早く芽は出せないの?」


 サンマルがアレスに質問する。

 いくら何でも時間がかかり過ぎだろうと感じたから。

 これは農作業を知らないチルフには長区感じるが農家からしたら普通である。


「チルフさん、農作業は気の長い作業なんです。誰がやっても同じ。もの凄く長い期間を得て芽が出ます。そしたら実がなって収穫しますが、実がなるまでも更に時間が掛かりますね。成長するのは期間が必要なんです。それはじっと我慢して我慢して、丁寧に見守って上げてください。収穫するまで私がきちんと指導しますから」


 アレスの説明では今日から耕して収穫まで半年はかかる計算に冷は頷いた。


(収穫って時間がかかるんだよな。知らない人には長く感じるだろうな)


「それだけ時間をかけて作ったとして失敗したら大損害になるだろう?」

「はい、大損害ですね。間伐や水害、または鳥や魔物に食い荒らされたら損害となるのは避けられないです。農家はその戦いです」

「魔物にも野菜などを食い荒らすのがいるの?」

「いますね、ほとんどは小魔物でしょう。ネズミのような小さな魔物です。ですが小さなゆえに退治したり、追い払うのが困難。冒険者に金を払って追い払う仕事をギルドに依頼もします。特に収穫時期には必ずギルドに依頼しますね。せっかく実がなったのに全滅したら苦労が水の泡ですから」


 冒険者ギルドではそういった類の追い払う依頼もある。

 だいたいは低レベルの冒険者がやるか、引退下冒険者が引き受けるのが多かった。

 小遣い稼ぎ的な依頼である。

 

「その程度ならチルフやサンマルもいるし退治するのは問題ないよね?」


(魔族なんだから、問題ないよね!)


「もちろん追い払うのは可能。しかし一日中、寝てる時も農園に居なければならないのかな。そうなると面倒もある。夜中に来ることもあるだろうから、交代で見張り役をしないと」

「チルフ、忙しくなりそうだぞ」

「そのようです」


 サンマル、チルフは、もし収穫時期になり実を守る際に昼夜の交代で見張りをするのを約束した。

 見張りが好きかと言われたら好きな魔族はいないだろう。

 特にエリート魔族であるサンマル、チルフにとって見張りはある意味格下の魔族などのすることで、二人がすることは絶対になかった。

 それもせっかくの頑張りが無駄になるのを避けるためである。

 

「三人とも農作業は始めてとのことで、先ずは土を農園に使える風にしないといけません。このままだと荒れててせっかくまいた種が無駄になります」

「使える風とは?」


 チルフがまるでイメージがなく、説明なしでは無理だった。


「それは説明するよりも実際に私がした方がいいでしょう。ではやってみますから見学しててください」


 アレスは道具を持ってきていて、土を耕やすのに必要な道具を出してギガースに見せた。

 道具は木の棒に先に鉄製で土を掘り起こせる形であった。

 土はかなりデコボコの状態だけに平らにして、種を植えていく上で大事な作業である。

 現在のままだと種を植えていくのに支障があり、アレスは真っ先に取り掛かった。


「それは何ですか?」

「農作業で使う道具です。荒れてる土地なので先ずは種を植えられる状態にします」


 アレスは周辺の土地を道具で平らにし、そこから種を植えていける溝を掘っていくと、畑らしく変わった。

 プロの農家が手を加えると畑のように見違える程に変わり冷は驚いた。


(道具は日本で言うクワのような物だな。さすが農家だ、もう畑らしくなってる)


 アレスが手を動かすとまたたく間に土地は畑になるとギガースは唸った。


「おおっ……道具でいじっただけで農園っぽくなった」

「ギガースさん、貸してあげるから実際に手でやってみてください。同じようにすれば大丈夫ですから」

「わかった、やってみよう」

「ギガース様、頑張って!」


 チルフから応援をもらいギガースは道具を手に持つと、アレスと同じ動きを真似してみる。

 魔人が生まれて初めての農作業をした瞬間であった。

 ギガースは真似してみて思ったのは意外に難しいものだと。

 土は柔らかくデコボコした土を平らにしたりするのは手間がかかる作業だとわかった。

 

「難しいものだな……」

「ギガース様、とてもお上手です!」


 チルフは声援を送るがアレスのした物とは差があったのは間違いなかった。

 

「最初は慣れないものです。誰だって時間はかかります。私のような農家は、若い時から始めて何十年も経ってますから経験がある。ギガースさんは初めてなのだから気にすることない」


 アレスはギガースを落ち込まないようにホローした。

 冷もアレスとの差には気づいていた。


(素人と経験者の差だよね。ギガース達には慣れてもらおう。相当な時間がかかっても別に問題ないから)


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