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 ガーゴイルのキスの連発によって顔はキスの跡だらけになった冷は、この後の予定を確認する。

 ギガース達を連れて農園の出来る土地を見に行くのが今日の予定のメインでもある。

 シャワー室の彼女の素晴らしい光景が目に焼き付いている中、頭を切り替えることにした。

 ギガース達を何とかしてこの町の人達に受け入れてあげたい、その思いがつのっていた。

 

(午後は町の外にある土地を見たいな)


「今日の午後の予定を決めよう。予定としてはギガース達とルクエと一緒に外にあるという土地を見学したいんだ」

「農園の土地ですね。どうぞごゆっくり」

「アリエルはクエストだぞ」


(自由に遊ばせたりしないよ!)


「クエスト! わかってます」


 アリエルは一瞬、冷がいなくなって自由になれると考えていたが、クエストと決まり頷いた。


「アリエルだけでなくリリスとミーコもクエストだ。ガーゴイルは卵の生産業に。ゴーレム達は午後からは町の建設の続きを頼む」

「卵の生産、オッケーよ!」

「建設は任せてくれ」


 ガーゴイルとゴーレムは文句はなく、自分のやるべき事を行動する。

 しかしリリスは違った。


「クエストかよ。面倒だな」

「リリスは遊びたいのね」

「クエストが嫌いなだけだ!」

「クエストで経験値をつもうリリス!」

「仕方ねえな、クエストするよ!」


 リリスは嫌々ながらもクエストに前向きになった。

 早朝道場とその後にクエストすることで彼女の経験値は格段に上がっているのだから、冷は多少強引でもクエストをさせたかった。


(リリスはクエストで成長させよう。遊びなどしてる暇はない)


 さらなる強敵、いつ現れるかわからない上級魔人を前に少しでもレベルアップしておきたいのが冷の狙いであった。

 クエストを受け付ける冒険者ギルドでは

アリエル、ミーコ、リリス三人の成長にたまげていて、どうやったらここまで成長出来るのか不思議であった。

 登録した当初はギルドからも失笑されていたのは最近の話であり、それが信じられない勢いで爆発的に成長し、クエストのランクも最高ランクを受けていた。

 昔を知るギルドのユズハは、リリスをバカにしていた頃はもうなくなり、今では尊敬さえしていた。

 登録した冒険者でさえ逃げるように避けられるクエストでさえリリスはクリア出来るのだから、ユズハからしたら頼りになる存在だろう。

 

「決まりだな。それじゃあ、それぞれ頼むぞ!」


 冷はみんなに予定を伝えるとギガース、サンマル、チルフ、それにルクエを集め出かけることにした。

 他のメンバーはそこで別れていき、残された冷はルクエに土地までの引率をお願いする。

 

(場所はルクエしかわからないからお願いしよう)


 土地の詳しい場所や大きさは知らないのでルクエを先頭にしたかった。


「ルクエ、こらから土地を見学しよう。場所までお願いするよ」

「わかりましたでございます。それと私から一つ提案があるでございます」

「なんだい?」


 ルクエの提案は考えていなかったから、どんなものかと聞きなおした。


(まだ何か足りないものがあるかな?)


「土地はシャーロイ家の土地です。ここら辺は全部シャーロイ家の土地なんですが、ギガースは農作業の経験がないと聞きました。そこで私が探してきた現役の農家がいます。その農家から農作業を教えてもらえればよろしいかと思ったのでございます」

「本当にかい! それは名案だな。実際に現役の農家の人なら失敗しなくて教えてくれる。ぜひとも呼んで欲しいな!」


 冷はルクエの知る農家から農作業を教えてもらう案に大賛成した。

 冷も経験はあるがプロではない。

 やはりその道のプロから学ぶのが一番良いし、失敗はない。

 冷には農家の知り合いはいなかったが、ルクエはシャーロイ家の顔を使い、農家を探してきたのだった。

 

「わかりました。農家のアレスさん、来てくださいでございます!」


 ルクエが呼ぶとアレスは現れて、冷達に丁寧に挨拶する。

 アレスは男性の人族で、老人であった。


「はじめましてアレスです。ルクエ様にお願いされたからには引き受けました。よろしくです」

「俺は冷。よろしくお願いします」


(おじいさんって感じだな)


「あなたが冷さん! 噂は聞いております! 最強の冒険者だと聞いてまして、お会い出来て光栄です」

「いや〜最強って言われるとイイね。それからこちらが中級魔人のギガースと魔族のサンマル、チルフだ。よろしく」

「ギガース!!!!」


 アレスはギガースの名を聞いた途端に腰を抜かしてしまう。

 ルクエはギガースの名は伏せていたので、まさか中級魔人に教えるとは思いもしなかったのだった。


「えっと……中級魔人ではダメか?」


 ギガースは困る。

 名前を出したらアレスが怖がってしまった。

 ギガース自身はアレスから教わるのは問題なかったし、一から教わろうとした時だった。

 

「ルクエ……もしかしてギガースのことは知らせてなかったのかい?」


(まさか中級魔人と知らずにきたのか?)


「ええ……知らせてません。知らせてしまうとたいていの農家は断るので……それでアレスさんには知らずに来てもらいましたでございます」

「それは無理だろう! アレスさん、中級魔人だけどギガースを怖がることはない。決して危害を加えないから安心して欲しい」

「そう言われても、あの、世界を震撼させる中級魔人に教えて怒ったりしないですか?」


 心配するアレスにギガースが、


「暴れたりしない。アレスさん農作業を教えて」

「ギガースさん本人がそう言われても……」


 アレスは不安を隠せないようで冷も困ってしまう。

 ギガースはヤル気を出してもアレスが嫌がれば教えるのは無理だろう。


(まいったな、やはり魔人は怖いんだな……)


「ルクエからも言ってくれないかな……」


 冷がルクエにお願いをすると頷いてアレスに、


「アレスさん、お願いします。冷が安心していいと言ってますでございます」

「わかりました。ルクエさんのお願いだったら、はい、教えます」


 アレスはあっさりと了解してしまったので、冷とギガースはひょうし抜けしてしまう。

 農家からしたらルクエと冷の違いだった。

 シャーロイ家のルクエからのお願いは受けるが、冷のお願いは断るのは当然で、それだけシャーロイ家の存在が大きかった。

 貴族であるシャーロイ家の力は偉大で、現在もその影響力は大きいのを冷は思い知らされた。


(う〜ん、やっぱり貴族って偉いな)


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