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 ピルトの町を作る話は盛り上がったところで、次に話題となったのはギガースであった。

 まだ冷のパーティーに加わったばかりである。

 中級魔人だったのだから、右も左もわからないことばかりで困っているとなった。

 冷はギガース本人に直接訊いてはいないが、ルテリが今後について会話していた。


「ギガースは常に日々道場で訓練に励んでいる。まだ中級魔人として恐れられていた頃からすると変わったのは嬉しい。そこで思ったのがそれだけの体格の良さ、巨人魔族なのだ。何か体格を活かす方法があるのか。無駄な体だとなりたくないだろう」

「巨人魔族は無駄に体が大きいとは思われたくないのが私の本音だ」


 ギガースはルテリの発言にムッときていた。

 ルテリと目を合わせてにらむように言った。

 体的には冷よりもはるかに身長はあった。

 ギガース、サンマル、チルフだけ飛び抜けて高い身長。

 ギガースの気分を察してかサンマルが反論する。


「巨人魔族は魔族の中でも身長が高いので有名。それでバカにされることもあった。ギガース様に失礼なのですルテリ!」

「私は思ったことを言ったまでだ。謝罪するつもりはない」


 ルテリはギガース達、巨人魔族を侮辱する言い方をしてしまい怒りをかうも、強気であった。

 

「巨人魔族は大きいだけの役に立たないと?」

「そうではない。何か役に立てるかを考えるべきだと言っているのであって、しかしそれがわからない」

「ギガース様だって考えます。急に言われても難しいです。過去に人族の為に働いた経験がないのですから」


 今度はチルフがホローした。

 経験がない以上、難しいのは当然であった。

 魔族には時間が欲しい。

 急いでもなにも良いことはない。

 あせっても人族に喜ばれることなければ、働いた意味がないのである。

 魔族が人族に喜ばれるのはそれだけ至難と言えた。

 冷もそのあたりは考慮していて急ぐ必要はないと考える。


(ギガース達にはゆっくりとやりたいことを考えてくれればいいさ)


 反対に時間的に急ごうとしてしまうルテリにヤリッチが提案したいと言う。


「ルテリ……、ある案がある」

「巨人魔族は卵を産まないのは言っておく」

「違う、卵の話ではない。これだけの良い体をているのだから、やはり体を動かすのが似合ってると思う。そこでギガース達を活かす方法として、私はずっとある考えがあったのです。それはエルフの国にギガースといたのは知っていますね。エルフの国にいた頃からギガース達の能力、スキルも知ってました。ギガースはトルネード竜巻のスキル。サンマルはパワーアップのスキル。チルフは雨を降らすスキルです。バトル中はギガースの補佐役として、使われてました。特にチルフのウェザーポイントは雨を降らし、ギガースのトルネードスネークと合わせて、そこにサンマルのハイパーアップスキルで巨大な竜巻を作り出し冷を大変に苦しめました。そうですよね?」

「あの竜巻は、もうこりごりだよ」


 冷はヤリッチの説明で再び竜巻を思い出してしまい、身震いした。

 あのトルネードに巻き込まれて生きるか死ぬかの瀬戸際まで追い込まれたのはまだはっきりと覚えている。

 しかしヤリッチはなぜそんな戦いの記憶を話したのだろうかと不思議に感じる。


(ギガースのトルネードと働いてもらうのが、なんの繋がりがあるのだろうかな……)


「そうでしょう、そこで皆さんはなぜこんな関係のない戦いの話をしだしたのかと疑問に感じたのでは?」

「疑問ですね」


 チルフが答える。

 周りも同じく頷く。

 ヤリッチの考えてることがわからないので、次のひと言に注目が集まるとヤリッチは語る。


「以前から思っていたことでして、ギガース、サンマル、チルフの巨人魔族に合うのは農園である」

「農園?」


 ギガース本人も思わずききかえしてしまう。

 全くの思いもしない答えだったから。

 ヤリッチは話を続けていく。


「農園で野菜や稲を作る。どうしてかというとちゃんと理由があって、まず農園では体力がいる。そこは問題ないだろうその体格なのだから。次に種をまく作業だが通常ならかなりの時間た手間がかかるのが種まきだ。ギガースのトルネードスネークを使えばどうだろうか。竜巻で種まきをしてしまえば、かなりの時間短縮になる。それにチルフのウェザーポイントで農園だけに多量の雨を降らす。そうすれば効率的に農業が出来る。サンマルのハイパーアップで種に成長促進をするとより早く成長が可能だろう」


 ヤリッチは三人の巨人魔族にはかけ離れた作業を提案した。

 それは農園での農作業であった。

 あまりにも意外な仕事内容に聞いていた全員が沈黙してしまった。

 冷も思わず沈黙してしまう。


(……残念ながらギガースに農作業はイメージないな……)


「農作業! 無理じゃない! だって今まで農作業とかしたことあるのギガース?」

「ないな」


 アリエルが無いのを知ってて質問した。

 あるわけないだろうとギガースは首を左右に振るのは無理もなかった。

 魔人、それも中級魔人で有名なギガースが農作業をするわけなかった。

 

「あり得ません」

「したいと思ったこともない。魔族の者がそもそも農作業をする必要がない。人族を支配して作業させればよかったし」


 サンマル、チルフも農作業を毛嫌いする。

 

「そう答えると思っていた。しかし考えてみてくれ、農作業ほど適した働きはないと思う。無理だとかあり得ませんとかは、まだ経験してないからだ。思いきって農作業をしてみたらどうかな。意外と合っているとかなるかもだ」

「勝手なことを言うなヤリッチ。お前は元々はギガース様に雇われたに等しい者。ギガース様に感謝こそしても、農作業などやれとは、巨人魔族を敵にすると同じだぞ!」

「待て待て! 怒るでない! 今の話はなかったことにしようチルフ。私は単に提案しただけだから。絶対にやれとは言ってないのだ」


 ヤリッチがペラペラと話す内容があまりにもギガースを侮辱したものであったから、魔力を引き出すチルフ。

 それを感じてヤリッチの方は両手でチルフを止める。

 さすがにチルフが怒るとヤリッチも降参することになる

 ヤリッチは直ぐに否定していて、チルフをなだめるようにした。

 ヤリッチの提案はヤリッチが面白ろ半分で言ったのだと皆が感じた。

 チルフも別に怒ることはなく、ヤリッチへの敵意は無くす。

 ひとりだけ賛成していた者がいて、それは冷であった。

 冷はなかなか面白いアイデアだなと関心する。


(農作業か……巨人なら効率的かもな)


 案外、似合ってると感じた冷はヤリッチに言ってみる。


「ヤリッチよ、今の話は面白そうだな。俺はとても面白いと思うぞ!」

「冷はわかってくれると思っていた!」


 ヤリッチはチルフに否定されてしぼんでいたところに冷の応援で、再び盛り返してきていた。


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