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卵の件は誰も反対する意見はなく決着した。
卵で静まるのなら安いし、もしもオーガが暴れたらそれこそ高くつくと判断したから。
王都の破壊された町並みをみればミノタウロスでこりた。
上級魔人と争えば、少なくとも被害は町がひとつなくなるくらいに考えておくことを経験したのもあった。
冷がその事を一番わかっていて。
(ミノタウロス級なら、また被害は出るよな。そこも考えておこう)
食事会の話が終わり、その間にそれぞれがしていたのかを知りたくなる。
「卵の生産、販売はルビカも加わっているのだったな」
「その通り! 私の活躍を見逃してもらっては困りますもん〜〜〜」
「忘れたわけではない。で、どうなんだガーゴイル?」
「とても助かってるルビカには。色々と働いてくれてますわ!」
「なるほど、ルビカの働きはガーゴイルの役に立っているようだな」
ガーゴイルとヤリッチは卵の生産、販売に追われていたのは教えてもらった。
そこにルビカも手伝っていたのも。
ルビカの働きにはガーゴイルも喜んでいるとも。
冷も安心する。
なせなら、貴族出身のルビカは今まで魔人と関わったことはない。
その点で、魔人との間にトラブルが発生しないかと思っていた。
しかし結果は冷の心配はいらなかった。
(ルビカは貴族だが、魔人とも上手く仕事をしていけてるようで安心だ)
次にゴーレム。
ゴーレムを中心に町の再開発に着手してくれていた。
ある意味、ゴーレムに町の復興がかかっているとも言えて、冷は特に信頼を置いていた。
(ゴーレムが町をどう建て直すか、俺も期待はしてるよ!)
そこでゴーレムに相談すると、
「なぁゴーレム!」
「なんだい?」
「ゴーレムが現在作業している建設の話が聞きたいんだ、どうなっているか状況を」
「残念ながらガーゴイルの卵の話みたいに進んではいないのだ。なにせ町を開発していくわけだ。それもあったのを元の形に直すのなら簡単だ。しかし私はそう考えていない。ルテリとも共同作業していて、土地を全て一から作り直す計画だ」
ゴーレム案は元に戻すのではなく完全に作り直す考えであり、そのため時間がかかると言いたかった。
その案にアリエルは不安になる。
「そんなことしていたら時間がかかるのでは……。それよりも早く元に戻す方が大事に思えるが?」
アリエルだけでなく他にも同じ印象であって、ゴーレムに厳しい視線が来る。
しかしゴーレムは動じることはなかった。
「アリエル、あなたの思うのはわかります。困ってる人々は家もない人もいる。食べるのも困ってる人も。だから早く家を作れと。それは否定しません。だけど私は人々が驚く程に洗練された新しい町を作りたいのです!! ワガママかもしれないが作りたい! それには時間は多めにかかります。どうですか私の案は受け入れてもらえるのかな?」
ゴーレムは自分の考えている構想を話した。
むろん、直ぐに納得してもらえるかと言えば無理だろうとも。
ゴーレムは魔人として人々に受け入れてもらうには、普通の家を作ってもダメだと考えており、壮大な町にして、人々を驚かせたいと考えていた。
それも腰を抜かすほどに。
しかしアリエル達は不安な顔になる。
本当に出来るのかと。
もし出来なければ時間の無駄となるし、人々からは信頼を失うことに繋がる。
そうなったらゴーレムを人々はどう思うだろうかと心配したアリエル。
「ゴーレムの考えているのは凄いけど、もし人々がガッカリするような家だったら……。納得しなかったら……。最初にあった家並みに戻せと言ったら? その時はゴーレムどうしますか? ゴーレムなど要らないとなります……、それでもヤル気ですか?」
アリエルはかなり厳しい内容の言い方であった。
しかしそれもゴーレムを気にしていたから。
失敗したらゴーレムの立場が危なくなるから心配して言ったのだった。
厳しい質問に心配したのはゴーレムの信頼しているギャン、シールド、ボーガの三人。
彼女達も一緒に作業している。
そして三人ともゴーレムの考えに反対しておらず、新たな町の構想にむけて全力を出していた。
ギャンがゴーレムを応援する。
「ゴーレム様、心配なら無用ですぞ、なぜならこのスピアがある限り、必要な木材は全部切り取ってきます!!!!」
ギャンは部屋で突然に長大なスピアを振り回す。
それもゴーレムを応援するために、スピアを振り回したのだが、周りの者からすると応援というよりも、暴力でしかない。
当たったら大ダメージもの。
町を作るどころの話ではない。
「シールド!!! 早くギャンを止めてください!!!! 当たったら死にます!」
ミーコがシールドに止めるように促すと、
「ギャンはヤル気をみせているのです。逆に褒めてあげてください!」
「アホか!! こんな狭い部屋でスピア振り回す奴がいるか!!!」
シールドはニコリとしていて、まるでギャンを止める様子はなかった。
そのためリリスが怒り出してしまったのだった。
最終的にはシールドとボーガで取り押さえたギャン。
途方もない構想を考えているゴーレムに冷はニコリとした。
ゴーレムがヤル気があるなら応援したいのが冷の気持ちだったから。
冷のやり方は叱るよりも、長所を伸ばすやり方であった。
ゴーレムがやりたいと言うなら、止めるよりも積極的にさせてあげる。
そこからゴーレムの個性を引き伸ばす作戦だ。
(魔人として人族に溶け込むのは大変だろう。ゴーレムも必死なんだよな)
そこで冷はゴーレムに言う。
「このピルトの町を作る。それも今りよも大きな町に、大都市のような町を、そう思うならぜひとも作りなさいゴーレム。俺はかげながら応援するぞ!」
「ありがとう冷。その言葉を忘れやしない」
ゴーレムは冷の承諾を得てヤル気はさらにアップした。
「よし! 皆さん、新たな町の完成をご期待くださいませ!!!!」
「あなたは黙ってなさい!」
ゴーレム以上にヤル気を感じさせるのはギャンでスピアを振りかざすところで、周囲に抑えられる。
冷はゴーレムには大いに期待してしまうがギャンがいると大丈夫かよと少し心配するも、ゴーレムには良いパートナーらしく、シールドやボーガにはない楽天的な性格が人族に合うかもと冷は思った。
(ギャンは人族にも人気出そうな感じするな)




