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アリエル達が森に落下した時にオーガはどうするかを考える。
冷は上空を飛行していったから、手が届かないとなりあきらめるかと。
しかしまだあの卵の味が舌に残っており、あきらめきれない。
その時にオーガは遠くの森に何かしらの落下物を見た。
それはアリエル達であったが、オーガはそこまではっきりとは認識していなかった。
そこで森に魔族軍を送ることにした。
何だかわからないわけで、冷かもしれない。
可能性は低いが卵かもしれない。
そう考えてオーガは魔族軍を100匹用意した。
魔族軍のリーダーに指名したのは会話能力のある魔族、ビスカリであった。
ビスカリはオーガに呼ばれるとそばによる。
「ビスカリよ、話がある」
「オーガ様、なんでしょうか?」
「頼みがある。あそこの森の奥に魔族を連れて探索して欲しい。100匹預ける。冷だろうが敵なら戦え。もし食料品なら持ち帰ること!」
「わかりましたオーガ様。魔族を引き連れて行きます!」
ビスカリはオーガの使命を理解した。
敵なら倒すこと。
久しぶりに戦えるとあって、体がうずいた。
魔族の軍隊をさずかり、森に直行する。
魔族の構成は大鬼魔族の軍勢であった。
巨体の者から、小さいのまでいて、オーガの使命を嬉しく思っている。
オーガに認められたいのは誰もが一緒。
冷ならば必ず殺してオーガに渡すと戦うのを楽しみに森を走る。
森を走る大鬼魔族の軍勢。
その足音はアリエル達にも伝わる。
最初に気づいたのはミーコであった。
「足音が聞こえるわ!」
「私も感じる。地面が揺れてる……」
アリエルも感じるが、まだ音の原因は不明。
「さぁ何も感じないぞ……」
逆にリリスだけはあまり気にしていなかった。
「リリスは鈍感なのよ」
「そうかな……オーガならヤバいから隠れよう」
リリスは至って平穏であったが、平穏は長くは続くことはなかった。
足音はより大きくなり、地響きとなったから。
「…………もう遅いかも……」
「リリスでもわかるでしょう?」
「……に、逃げようか!」
リリスは足に伝わる振動に危険を感じる。
大軍の予感がしたから逃げるつもりだ。
「無駄よ逃げても……そこまで来てるから。かなり速い速度だわ……きっとオーガか、その魔族だろうよ」
「……戦うしかないわよリリス!」
「ちくしょー冷の奴、落としやがって! 許さんぞ!!!」
リリスが魔剣グラムを握るとすでに大鬼魔族の大軍は目の前まで来ていた。
森は大鬼魔族の大軍で埋め尽くされていた。
大軍を任されたリーダーにはビスカリ。
オーガからの命令に忠実に実行する魔族。
大鬼魔族の中でも強さは認められたいた。
ビスカリの命令には他の大鬼魔族達も従う程に。
ビスカリは落下物のある地点に来て、視界に三人の人影を発見。
男の人族ではないのは確認できたので、冷ではないと判断する。
冷でなければその仲間だろうとも。
そして重要なのはオーガの欲しかった卵があるのかどうかで、三人の者を殺せばわかると考えた。
相手がいかに冷の仲間だろうと、我らの大鬼魔族の相手ではない。
大鬼魔族は魔族でも有名な強さを誇る軍。
高レベルの冒険者でも近寄りたくない程に強力であった。
それが100匹の軍勢。
相手は三人。
どう考えても結果はみえている。
世界でも最高レベルにある魔族軍団。
アリエル達はたった三人でこれらの大軍と戦うしかなくなった。
ビスカリは魔族軍団に対して命令をする。
オーガ様に良い報告をすると、魔族の言葉で伝えると魔族らは魔力を最大限まで高めて、アリエル達に敵意を出した。
たったの三人にこれだけの数がいるわけでビスカリは直ぐに決着をつけようとした。
オーガへの報告は早い方が良いからで、三人を確実に殺すとした。
気になったのはなぜ逃げないのかで、圧倒的な数に対して逃げると思ったが逃げないのは、三人を気持ちのある者と評価した。
ビスカリが先手をうったと考える。
三人は見動きすら取れないのだろうと。
最強の上級魔人オーガの戦力の前には何者も敵ではないと。
しかし次の瞬間にビスカリは目を疑った。
大鬼魔族軍団と三人にはまだ距離がかなりあったのに、大鬼魔族の中に倒れる者が現れたからだった。
しかも音もなく次々と倒れていく。
なんだ! 何が起きてる! とビスカリは三人に注目したら、ひとり足りない。
二人しかいないではないか。
いつの間にか居なくなっていた。
どこに行ったのかと探していると、もう一人が前進してきた。
まさかこの大軍に恐れずに前進する者などいるのか?
しかし確実に前進してきて大鬼魔族軍団と正面衝突した。
バカか……。
ビスカリはあまりのバカさに笑ってしまう。
その後にビスカリは恐怖することになる。
ビスカリが見た前進した者は女性であったから。
それも不気味な光を発した剣を振り回すと、大鬼魔族はたちどころに流血していく。
最強種の魔族が簡単に切り刻まれていった。
さらに最初に居なくなっていたのを発見した。
大鬼魔族の大軍の奥にまで侵入していたのだった。
大軍の中央付近にいて、目にも止まらぬ速さで剣を振っていた。
あまりの速さにビスカリは何が起きているのかわからない。
ビスカリはいきなりの形勢逆転に声も出ない。
誰なのか、あの三人は何者なのか。
オーガから聞いた話と違う。
ビスカリが相手をしたのはアリエル、ミーコ、リリス。
最初に仕掛けたのはアリエルであった。
ビーナスホーリーを唱えていた。
効果は体力最大値30%アップ、防御力20倍アップ、状態異常回復。
リリスとミーコはこの時点で、防御力はとてつもなく上がっていたのをビスカリは知らない。
次にリリスが放つ。
サタンクロス。
相手の攻撃力50%減少、素早さを50%減少、防御力を50%減少、暗闇異常、魔力50%減少。
これだけのステータスの半減を一度に大鬼魔族らに与える。
これもビスカリはわからない。
次にミーコ。
ソウルブレードで切り裂く。
8回連続攻撃で防御属性無効もつく。
強烈な速さで相手には切られたことすらわからない程に。
おまけに聖剣ヴェルファイアでの攻撃となれば大鬼魔族とはいえ、果物のように体を切られていった。
リリスの魔剣の姿はビスカリは恐怖した。
まるで魔族の魔力を感じるから。
それも感じたことすらない、オーガからですら感じたことのない魔力を。
暗黒の中にいるような感覚。
さらにミーコには真逆の魔力を感じる。
魔族が嫌う聖なる力とも言うべき力を。
普通の人族を超えた何か、崇高な力を感じる。
人族らしき姿なのに人族を超えた力とは何か?
ビスカリはミーコに特別な力をみた。
100匹いた大鬼魔族はビスカリが形勢を整えるまもなく、地に倒れていった。
わずかの時間であった。
ビスカリたったひとりを残して。
ビスカリはその時に初めてとても強い相手であったのだとわかるが、すでに遅かった。
ミーコとリリスが近くに寄ってくる。
ビスカリは棍棒を持っていたが手から落ちてしまう。
手から力がなくなり、放してしまったのであった。
この時にビスカリは戦う力は無くなっていた。
この二人には勝ち目はないと。
ビスカリが察した通りに、次の瞬間に一撃でミーコとリリスから剣をもらい、そのまま絶命した。
まさか、上級魔人の魔族軍団がこうも簡単に全滅させられるとはと考えながら。




