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 オーガは最初にみせた満面の笑みから逆に鋭い目でハンマド国王と冷達ににらみを利かした。

 眼光の鋭さは伝わるとハンマド国王は、い縮してしまった。

 無理もなかった、上級魔人と対面しただけでも恐怖で凍る思いなのに、にらまれたら見動きできないのは当たり前となる。

 

「い、い、い、いや無視してるわけではなくて、終わりの予定の時間通りだと言ってるのだよ」


「予定など知るかよ、関係ねぇ時間を伸ばせばいい。私は食いたいと言ってんだよ。どうする?」


「…………」


 ハンマド国王は沈黙するしかなかった。

 軍師コロナも助けようがなく、沈黙した。

 上級魔人の言うことを批判出来る者はいないからだった。

 そこで冷だけは沈黙を破る。


「オーガよ、終わりだって言ってる。わかってくれ、食事会は終わりだ。さもないと友好のために開催したのに友好が無駄になる」


 オーガにけん制するように言い聞かせる。


(これでわからないようなら、戦いになるかもな)


「あははははは、笑わせるな冷。ミノタウロスを倒して調子にのるなよ。上級魔人に意見を言うとどうなるが知らないようだな。知らないなら教えてやるよ!!!!!!!!!」


 冷の言った言葉に感じを悪くしたオーガは魔力を増大させ、そこが別邸の一室だろうが関係なく、冷達全員を攻撃対象とした。

 最も恐れていたことが起きたのであり、ハンマド国王達は死を感じた。

 ビジャ姫も目を閉じる。

 恐怖には勝てない。

 アリエルはさすがの上級魔人の魔力に一歩引いてしまう。

 ミーコとリリスも自分を防御することしか出来ない。

 冷は自分の持つ素早さのマックス値でハンマド国王、ビジャ姫、軍師コロナ、アリエル、ミーコ、リリスを室内から別邸の外に連れ出すと決めた。

 しかしオーガの魔力の増え方は速く冷を自由になどさせる気はない。

 冷の行動などお見通しであり、その前に全員を即死させてやろうとした。

 

(不味いな、オーガの攻撃よりも先に連れ出さないといけない!)


 冷は今、居る部屋の壁をスキル、ミノタウロスから習得した猛獣の追撃で破壊するとした。

 そのタイミングでオーガも迫った。


「猛獣の追撃!!!!」


 壁は自分の体で破壊したと同時に、全員を別邸の外に連れ出すのに成功した。

 一瞬であったがオーガの魔の手よりと先に冷は脱出に成功したのだった。

 オーガの攻撃速度よりほんの僅かに冷の速度が上回った結果、脱出劇は見事に成功した。


(危なかったな。みんなは無傷のようで良かった)


 無傷で脱出したのをまるで理解できないのは軍師コロナであった。

 冷のあまりの速さに何が起きたかわからないのだった。


「こ、こ、こ、ここは………冷が助けてくれたのか?」


「そうだよ、俺が部屋からみんなを連れ出したのさ。危なかったけどね」


(オーガの奴、マジで殺す気だったな)


「たった卵一つで、国王を殺そうとするとは危険過ぎますよ!」


 ビジャ姫はオーガが危険だと今ので理解した。

 姫の言葉通りに、全員が同じ意見であった。

 脱出には成功したが、まだ安全ではないのは確かで、オーガが追ってくるのを考えて、ハンマド国王は冷に、


「オーガが追って来ないように逃げないと……」


「わかってます、俺がみんなを安全な場所に移動させますから!」


(逃げるなら俺が上だろう)


「どうやって?」


「飛行します!!」


(オーガは飛行は無理だろうから)


「はぁ?」


 冷はハンマド国王が頭にハテナマークが出てるのを気にせずにガーゴイルの翼を使用する。


(もう時間はない。とりあえずガーゴイルの翼で!)


 ガーゴイルの翼に変形すると全員を持ち運ぶように掴んだ。

 ハンマド国王やビジャ姫を優先的に掴んで飛行する。

 初めて飛行する姫は心配そうに下を眺めて冷に確認する。


「だ、大丈夫かしら……私は高いの怖いけど……」


「姫は高所恐怖症でしたか、安心して大丈夫、俺は絶対に姫は放さないから」


(何があっても姫は放さないようにしよう)


 上空に舞っていく様をオーガは見ていた。

 オーガはそんなスキルもあるのかと冷の実力を面白がる。

 先ほどの一件を見ても冷の能力の高さは並大抵の高さではないとオーガはわかった。

 ミノタウロスを撃破したのも納得する。

 素早さに関しては追いつける速さではなかった。

 オーガをアカク国王は自由にすることにした。

 食事会は成功したかに思えたがオーガのワガママで失敗となった。

 完全にスタンダード国の友好は破綻したと思っていい。

 今後は一切両国の信用はなくなり、いつ戦闘になってもおかしくなくなった。

 それは友好食事会を開催する前からわかっていたのであって、こうなるだろうという予感はあった。

 その予感が当たったのだった。

 ここまで来たらスタンダード国をオーガが攻めて制圧するのを待つとした。

 オーガに勝てるわけがないと判断し、オーガが必ず勝つともくろむ。

 アカク国王はそれでもオーガに任せてみることにした。


「オーガよ、スタンダード国との友好は終わった。今ので友好関係は消えた」


「だろうね……」


 オーガは特に自分のせいだと感じる素振りもない言い方をした。

 初めから友好など興味がないのだから、友好が終わろうが作られようがどちらでも良かった。


「追って行けばいい、あつらを。好きにしていいぞ!」


「言われなくても、そうする。卵は絶対に私の物にする!」


 オーガは冷が飛行して行ったほうに足を向けて進んだ。

 ゆっくりではあるが心配はなくて、スタンダード国の方角に向かえばいいのだから。

 獲物を狙うように大鬼魔族オーガは冷を追った。


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