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 ゴーレムがその場で紙に描いた図面は大ざっぱな絵ではあったが、ボーガ、シールドを驚かすには十分であった。

 図面上に描かれたものは、元の住宅地というよりも、屋根の高さも高くなっていて、王都にあるような都会的な建築物となっていた。

 田舎の小さな町の風景とはまるで違った都会的な建築物で、ゴーレムは自信を持って作りたいと思った。


「ほとんど壊れた町なのだから、どうせ作るなら全く新しい、洗練された都会的な建築物にしてやろう。これくらいの家なら町の人も満足してくれるはずだ」


「しかし、勝手に作ったらマズいのでは。出来上がったら、冷やギルドの人が驚くと思いますよ」


「それでいいだろう。この計画通り作っても普通、普通でしかない。さすがにゴーレムだと、言われるくらいの物を作ってやり、みんなを驚かしてやるのだ」


「ゴーレム様がやる気なら、私もやります!」


「ボーガに同じく、やります!」


「二人とも共感してくれるのだな、嬉しい。冷はこう言っていた……小さな町のピルトを、世界有数の町に発展させたいと……王都よりも大きな、豪勢で豊かなピルトの町に育てる考えなのだ。それなら問題はない、さぁ王都より凄い町に作ってやろう!」


「はい!!!」


 当初の計画ではまずは人々が住める町に戻す、そして商業地も作り以前の町の活気にする、これが計画であって、ギルド側が作った計画ではあったが、ゴーレムは無視するわけではないが、計画以上の、それもとてつもない発展した町にしたい想いを実行することにした。

 冷はかねてよりピルトを発展させたい、世界有数の町にしたいと言ったのがゴーレムの職人魂を刺激した結果、ゴーレムはシールドとボーガに指示して木材を地中に埋め込む作業から始めることにした。

 作り始めるとその速さは一般的な建築職人の速さをしのぎ、何倍、何十倍もの速さで骨格が作られていった。

 特にゴーレムは自身のスキルであるクレイブロックを使い、土からブロックを生み出すと、骨格にブロックをつけていって、外壁を猛烈な速度で作り出した。

 元の家の高さよりも高い外壁は、高さも四回、五回建ての建築になっていて、風格のある建築がみるみる間に完成していった。

 外壁はゴーレムが担当したが、中の間取りや床もクレイブロックをふんだんに使い、頑丈な床が作られた。

 通常の建築は、一軒を少しずつ建てるのが常識であるなら、ゴーレムの作り方は全く逆というか、常識通りではない。

 いくつもの家を同時に並列的に作り出せるからで、効率は恐ろしく高く、何もなかった平地に突然に5階建ての、何十にも及ぶ建築が建ってしまった。

 何ヶ月かかるかだろう物を、わずか1日で作り出したのだから、建築の天才と言っていいレベルであって、ゴーレムは完成した区画の建物を見て感想をもらす。


「うむ、自分でも言うのもなんだが、良い出来栄えだろう」


「素晴らしいですゴーレム様。元のピルトの町の面影はないです。まるで王都にでも来たかのような豪華さを持ってます」


「それに驚く程に速かった。信じられない速さは、さすがクレイブロックです。ゴーレム様のクレイブロックは世界一でしょう、建築に関してゴーレム様の上にいる者はいませんよ」


「ありがとうシールド、ボーガ。2人の協力があっての完成だよ。私のひとりの力ではない。完成とはいえ、ほんの一部でしかない。さら地になっている土地はまだ沢山ある。明日も引き続き作業をしよう」


「町の人も喜んでくれるでしょう」


 作業を終えて休憩して作った建築を眺めていた最中に、ゴーレム達の様子を見に来たのは長女ルテリであった。

 ルテリはどの程度作られたかを見学に来たわけだが、おそらくは一軒は完成しているだろうと思っていたら、何とも一区画の土地がすでにものの見事に建っているので驚いた。


「な、な、な、な、な、なんですかこの建てられた物件は、計画とはまるで違う気がする!!!」


「あ、ルテリ、見学に来たのですね、計画とは少し違いますが、なかなかの建物でしよう」


「少しっていうか、最初に見たピルトの町の面影がないです!!! どうやって建てたの?」


「私とシールド、ボーガの3人で建てましたけど……お気に召さなかったでしようか……………………」


 ルテリはピルトの町の土地の所有権を有しているシャーロイ家の長女、そのため土地の開発にはルテリが全て携わっていて、ルテリが指揮してギルドに開発を指示していたので、ゴーレムは怒られるかなと思った。


「………………す、す、凄いじゃないですか!!!! まるで大都市に来たかと錯覚してしまったわ。しかもこれだけの量を1日で作ったのでしょう、凄いです。どうやって作ったかわわからないけど、感動した」


 ルテリは怒るどころか感動して震えていた。


「感動してくれたの、私の考えで作ったから、てっきり怒ったかと思った。中も作ってますので、明日からでも住民に住んでもらえます」


「もう住めるの!! この大きさの建物なら多くの住民が住めます。すぐにギルドに言って住民に移動して住んでもらいます!」


「そうしてもらえると嬉しい。それとまだ平地の土地が沢山あるだろ、ここにも建てる予定だけどいいですかね?」


「ええ、もちろん作ってくれるなら助かるだろう。こんな技術があるならギルドもびっくりするのは間違いない」


「ゴーレム様の技術は凄いのです。ルテリも経験した冷の道場があるでしょ、あの道場もゴーレム様が1日で作ったのよ」


「そうだったわね、しかしあの道場以上にこちらの建物の方がびっくりした。どう考えても数十人の建築職人が何ヶ月もかけて作ったかのようにしか思えない。もはや芸術品のようです!」


「褒めていただきありがとございます。ゴーレム様の建築技術は魔族一ですから!」


「それでは計画とは違うけど、続きもゴーレムの考えた形でお願いする」


 ルテリは魔族にこれだけの建築技術があるとは思いも知らず、計画はかなり違った方に進むことになるが、計画しているよりも素晴らしい出来なのだから、ゴーレムに任せることに決めた。

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