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オーガの怒りがテーブルに伝わり並んでいた皿はテーブルから宙に跳ね上がり転がり落ちる皿も、オーガの気持ちがいかに驚きと怒りに満ちていたかを物語っていた。
「その話が真実なら、アカク国王が来たのはこのオーガが必要になったというわけだな、そうだろ?」
「話が早いなオーガ、現在のスタンダード国の戦力は急激に上がっている。原因は冷だ。今までは互角の戦力だったのに、このままだと圧倒的に差がつく。増して、ミノタウロスまで奴隷として、戦力アップした冷のパーティーは強力過ぎて太刀打ちできない」
「そう言うことか……冷とは何者なのだ。ミノタウロスを倒す者は神レベルの者かそれ以上のランクでしか倒し得ない。問題は目的だ。何を望んでいるのか知りたい。魔族を全員倒すのが目的か、世界の国を征服することか、他種族を奴隷化することか、そこが見えない」
「謎、謎、全てが謎の男だ。異世界から来たという話もある。スタンダード国とは友好的な関係をしているのは間違いない。つまり我がユフィール国とは敵と決まる」
「異世界……からか、興味深い話だ。スタンダード国との間での争いに参加してやろう。冷は魔人、魔族の敵としてな」
「その言葉を聞けて良かった。さっそく軍事会議をするから、力を借りる」
アカク国王は目的であったオーガに力を借りる約束をできて満足し、オーガの城を後にした。
オーガがユフィール国に居るのは、特別に認められていて、一定の地域をオーガ領土として、授けて、何かあったら協力を得る為で、ようやくその時が来たのであった。
オーガの方はユフィール国中から選りすぐりの食材を集め、ユフィール国の国家料理人に料理を作らせるのを強いており、ユフィール国もオーガには逆らえないため、あらゆる食材と優秀な料理人を差し出して、ご機嫌をとっていた。
オーガは上級魔人として能力は大変に恐れられており、周辺国もオーガが居るとなると手が出せないのを見越してのこと。
オーガの弱点といえば弱点なのは、食欲が特におおせいで、1日中でも食べてる習慣が毎日の日課、食べてる時がとても幸せで、食べてないと機嫌が悪くなる性格があり、ユフィール国はその点を知っていたから、上手く利用していた。
オーガもユフィール国の料理が気に入っており、毎日この料理が食べれるなら、ユフィール国に留まりたいと思っていて、もともとはユフィール国を支配してやろうとして来たのだが、料理が美味そうなので支配するのを止めて、料理をひたすら作られせるようにしたのだった。
それで満足なのがオーガの特徴であった。
アカク国王達は、オーガが機嫌が悪くなくて良かったと胸を撫で下ろして、もし機嫌を損ねたなら、食事を途中で中断させる賭けになったから、怖かったのが正直なところで、無事に帰れただけで良かった者も少なくなかった。
オーガはアカク国王が去った後に考えたのは、冷のことで、ミノタウロスを倒したという話はいまだに納得がいかないし、実際にミノタウロスに会うまで信じろと言われても信じられないのが同じ上級魔人で、冷に実際に会って確かめてやろうと、その強さの秘密。、その野望の目的を、知りその上で冷をくたばらせてやると考えたのだが、それよりも先に腹が減っていて、食事会の途中中断していたから、直ぐに家来に言い渡す。
「冷か……気になる存在だな、しかしそれよりも、早く、早く、次の料理を持ってこい!!!!」
*
噂をされていた冷はオーガを知らないし、名前すら知らないのだが、本人は王都での話を国王と終えて次の目的を考えていて、それはエルフの国の王女タリヌに会いたくなったのが理由であった。
(エルフ国にも行ってあげないとな、タリヌ王女が待っているからな)
スタンダード国の王都から飛行することにし、エルフ国にひとっ飛び、以前はスタンダード国とエルフ国の間には結界魔法が張られて、往来は不可能であったが、現在は結界魔法は解かれて、飛行して行くのが可能となっていてる城だから兵士も警戒心が強い。
「誰だキサマは!!!!」
「あっ、すみません突然に驚かして、俺は冷と言いますが、わかります?」
知ってるかわからないが名のつてみた。
(わかるかな)
「……冷、冷! 冷さんですか。我らのエルフ国を救っていただいた方。もちろん知ってますとも!」
「ああ、知ってますか。そしたら多利王女に会いたいのです」
「お伝えします」
兵士は冷だとわかると城に伝えに行き、問題なく城に案内されるとして、まだエルフ国内は巨人魔族のギガースと魔商人ヤリッチらの支配が続いたのが開放されてはいるが、平和が訪れたというよりも、恐怖から開放されてホッとしてる感じであった。
城に案内されてタリヌ王女と対面すると、
「冷……来てくれてありがとう。エルフ国は少しずつですが、活気を取り戻しつつあります。まだギガースがいなくなったばかりですが、今後は元のエルフ国になれるようにします」
「王女だから大変な作業だね、苦労もあるだろうけど」
「エルフ族の国民はみんな冷を尊敬しています。ギガースとヤリッチを追い出した英雄であると。長い間、苦しい生活を強いられてきた私達にとって、冷は特別な存在です。そしてひとりあなたにどうしてもお会いしたいエルフがいまして、その者を呼んであります、メドメール!」
「はい、王女様」
現れたのは以前にピルトの町で偽回復薬を販売していて、冷達と知り合ったエルフ族のメドメールであった。
冷と遇うのを楽しみにしていた。
「ああっ、キミはメドメールじゃないか、エルフ国に戻ってきたんだね」
「はい、ヤリッチ政権時代に押しつけられた偽回復薬の販売を、もうしなくて良いとなり、直ぐにエルフ国に帰って来ました。そしていつか、冷さんがエルフ国に来た時に、お礼を言いたいと思っていて、城で働かせてもらっていたの。そうすれば会える気がしたの」
「俺もメドメールに会いたかったよ。あの時に出会ってなかったら、俺はエルフ国に来ることもなかったし、エルフ国の実情を知ることもなかった。運命的な出会いだったと思うよ」
メドメールは笑顔をみせて冷にお礼をして、冷はとてもいい気分になった。
(いや〜エルフ国民から尊敬されてるなんて嬉しいな、エルフ国に住もうかな)




